実験がうまく行っている時ほど気にしていないのが、ルーチンワークの目的遺伝子のクローニング実験。ハマってしまう前にポイントを再確認しておきましょう!
今回は、実験をする際に常に頭に入れておきたい、クローニングに関する7つのポイントをご紹介します!みなさんも実験の際に参考にしてみてください。
▼もくじ
通常、PCRにより増幅した断片をリニアベクターに挿入し、クローニングを行なうのが迅速で効率的な方法です。もちろん、すべてのPCR断片が同一のベクターに同じ効率でクローン化されるわけではありません。このような差異は、断片のサイズ、インサートの毒性、およびインサートの複雑性により生じます。いずれのベクター(pCR®2.1、pcDNA™3.1、pUC18)においても、逆向き反復、ATリッチ、またはGCリッチ反復配列は、クローン産物としての断片を不安定にする原因となります。
クローン化する断片のサイズは、クローニング効率の最も重要な因子です。大きなDNA断片(≥5 kb)を高コピーベクターでクローニングすることも可能ですが、その効率は非常に低くなります。
確実に効率の良いクローニングを行なうためにはインサートに対するベクターのモル濃度比を最適化することが重要です。クローニングを成功させるための比率は1:1 ~ 1:10の範囲であると考えられます。至適比を決定するために用いられる一般的な方法の一つは、1:1、1:3および1:5のように数種類のベクター:インサート比で調製を行なうことです。これらの比は、すべてのクローニングに適しているとは限りませんが、大部分のクーニングの必要条件に共通するものです。例えば、ベクターが3 kb、インサートが1 kbの場合、モル比を1:1にするためには3倍量のベクター(DNA量で)を添加する必要があります。
TA、TOPO®TA、およびDirectional TOPO® Cloningにおいては、新鮮なPCR産物を使用することをお勧めします。これは、時間が経つにつれてヌクレオチドのオーバーハングが分解し、クローニングの効率を低下させるエキソヌクレアーゼが存在している可能性があるためです。推奨はされませんが、4℃で1週間保存後にPCR産物のクローン化に成功した例もあります。
クローニング実験ではポジティブコントロールとネガティブコントロールの重要性を無視することはできません。クローニングとトランスフォーメーション反応に適切なポジティブ、ネガティブのコントロールがないと、クローニングの結果を評価することが非常に困難になります。これらのコントロールはコンピテントセルのDNA合成における酵素活性とトランスフォーメーション効率の指標なのです。コントロールが行なわれないと、トラブルシューティングは事実上不可能です。クローニング反応の効率を保証するため、弊社の各キットにはコントロールが含まれています。
TAクローニングテクノロジーは、Taqポリメラーゼによって生成されたPCR産物をクローニングするようにデザインされています。これはPCR産物の各末端に単一の3′-Aオーバーハングを付加するこのポリメラーゼのターミナルトランスフェラーゼ活性を利用しています。平滑末端クローニングベクターと方向性TOPO®クローニングテクノロジーは、Pfxなどのプルーフリーディングポリメラーゼによって生成されたPCR産物をクローニングするようにデザインされています。クローニングの成功はクローニングベクターに正しいポリメラーゼを使用するかどうかにかかっています。
プルーフリーディングポリメラーゼによって増幅されたDNAをTA Cloning®ベクターやTOPO TA Cloning® ベクターに直接クローニングするのは、クローニング効率がきわめて低いためしばしば困難です。これはプルーフリーディングポリメラーゼがTA Cloning®やTOPO TA Cloning®に必要な3′-Aオーバーハングを除去する3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有しているためです。平滑末端フラグメントに3’アデニンを付加する簡単な方法を以下に示しました。これ以外の方法も利用できます。
いかがでしたか?
つい忘れてしまうクローニングに関するポイントを、ぜひ頭の片隅に入れて実験してみてください!
Invitrogen 分子生物学教室では、分子生物学の教育のメインとして、初心者だけでなく経験のある分子生物学者のために、豊富で信頼できる技術的な内容をご提供しています。基礎知識を学ぶ時にはいつでも、Invitrogen 分子生物学教室の無料PDFを活用してください!
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。