近年、細胞生物学分野のさまざまな研究は、数々の病態に対する新しい治療法の検索に重要な技術としてさらなる注目を集めています。弊社の細胞イメージアナライザーは、細胞撮影画像から各種情報を数値化することにより、定量的で客観的な細胞解析(HCA/HCS)を可能とする測定機器です。今回は、HCAによる血管新生の定量評価例をご紹介いたします。
はじめに
血管新生は、新たな血管が作られ、血管網が形成される現象であり、基本的な生理的過程における現象です。通常、血管新生は抑制されていますが、炎症、癌、関節リウマチ、糖尿病などの病態により誘引されます。異常血管の新生を抑制することは、これらの疾患の予防・治療において重要であることが示されています。
生体内での血管新生は、血管の基底膜が分解された後、内皮細胞の増殖、遊走、チューブ形成が促されることで進行します。この血管新生とその阻害物質を評価するにあたり、in vitroでの試験が行われますが、定量的解析が難しいことがあげられます。弊社細胞イメージアナライザーは、このin vitroでの血管新生試験を自動的に行うBioApplication(解析アルゴリズム)を搭載しています。今回、弊社細胞イメージアナライザーとBioApplicationを用いた、HCAによる血管新生の定量評価をご紹介します。
BioApplicationを用いた新生血管の画像認識
図1に、細胞イメージアナライザーで撮影された新生血管の蛍光画像、およびBioApplicationを用いた新生血管の認識画像を示します。細胞は撮影と同時に解析され、視野内で結合された新生血管(Connected Tubes)、他の血管と結合されていない血管(Unconnected Tubes)、血管分岐点(node)、および解析から除外された細胞が認識されます。また、血管長や面積、分岐点数、Angiogenic Indexなどが算出されます。
Suramin投与細胞の用量反応曲線
図2はトリパノソーマ症治療・抗腫瘍薬のSuraminを投与したHUVEC細胞の容量反応曲線を示しています。各評価項目(Connected tubes の面積、幅、占有度のMean値、Connected tubes の全体の割合およびAngiogenic Index)がデータとして集計表示されています。Suraminの高濃度投与(40μM)によって、各測定数値およびAngiogenic Indexが低下することが分かります。
血管新生阻害物質の評価
次に、血管新生を阻害する薬剤の評価を同様の系で行いました。評価対象の薬剤は前述のSuraminに加え、SU-5614(VEGFR チロシンキナーゼ阻害剤)およびPaclitaxel(抗腫瘍剤)を用いました。各薬剤をさまざまな濃度で細胞に投与した際のAngiogenic Indexの変化を評価しています。図3はその結果を示していますが、Suraminと比較してSU-5614やPaclitaxelは低濃度からAngiogenic Indexの低下がみられ、血管新生が阻害されていることが分かります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
細胞イメージアナライザーを用いた解析は、新生血管を撮影した画像から、新生血管の面積、幅、占有度、Angiogenic Indexといった、画像観察だけでは定量化することが難しい数値情報を取得することを可能とします。また、Connected Tubes だけを選択するような形態識別も同時に行うことが可能です。
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