予測ゲノミクスブログ(英語)では、臨床研究における遺伝的リスクのスクリーニングと薬理ゲノミクスの利用と効果に関する展望を紹介しています。予測ゲノミクスは、転帰改善とコスト管理に健康管理の重点を置いて、病気になるリスク研究と薬剤応答を理解するための強力なツールとなります。遺伝子をベースにした研究をお考えであれば、当社に連絡していただくか、当社の予測ゲノミクスソリューションをご参照ください。
長寿化時代の現在、薬理ゲノミクス研究は、病気を予防することで健康的な生活をより長く維持する方法を知るための絶好の機会を生み出しています。それでも、高齢者を対象とした遺伝子研究は、あまり高く評価されていません。薬理ゲノミクス、急性および慢性疾患、生活様式と環境整備、および詳細な祖先解析を網羅したジェノタイピング研究に高齢者集団を組み込めば、高精度医療に関しての貴重な情報を得ることができます。健康な高齢者を対象に、これまでに実施された最大の一次予防アスピリン研究であるASPREE試験(アスピリン服用による高齢者の疾病発症低減調査)は、まさにそのことを目的としています[1,2]。このプロジェクトから、高齢者についての非常に重要な情報が得られます。それは加齢とともに遺伝的要因が、より効果的な治療や予防対策に対して、どのような影響を与えていくかについての見識が得られるということです。

その結果、予防療法のリストから、「低用量のアスピリンを毎日服用する」ことを外すことができます。少なくとも、これはASPREE試験の初期の成果です。アスピリンは100年以上前から存在し、すべての予防薬の中で最も広く使用されています。多くの高齢者は、心臓発作や他の疾患リスクを軽減することを想定して、低用量のアスピリンを服用していますが、その効果は証明されていません。ASPREE試験の結果は、加齢に伴って見られる疾患の防⽌に対するアスピリンの服用ガイドラインの再検討につながるため、非常に重要です。
ASPREE試験の過程で、約15,000人の高齢者から血液と尿のサンプルが収集されました。これらは、オーストラリアのメルボルンにあるモナッシュ大学に設立されたASPREE Healthy Aging Biobankに保存されています。
パートナーシッププロジェクトを通じて、サンプルは現在、ニューサウスウェールズ大学ラマチョッティゲノミクスセンターでジェノタイピング解析が行われています。これらのサンプルは、幅広くバイオマーカーや遺伝⼦研究のために研究者達が利用できます。
しかし、プロジェクトはそれだけで終わりませんでした。低⽤量のアスピリン服用が健康的な寿命を伸ばさないのなら、何ができるでしょうか。ASPREE試験は、⾼齢者の健康や病気に寄与する遺伝的要因を理解するための先駆的な全ゲノム関連研究(GWAS)に拡⼤しています[3]。この研究のジェノタイピングデータは、アスピリンの薬理ゲノミクスに限らず、認知症、脳卒中、がん、うつ病のような⾼齢者によく⾒られるその他の疾患を調査している人でも利用できます。
ASPREE試験のために厳選されたコンテンツ
ジェノタイピングアレイを必要とするASPREE試験では、資金調達のために、実用的な薬理ゲノミクスコンテンツに加えて、オーストラリアとアメリカの両⽅の祖先からのサンプルに対応できるコンテンツを含めています。研究チームはまた、試験で想定される疾患の範囲を広げる必要もありました。そこで、サーモフィッシャーサイエンティフィックと連携して、ASPREE試験やその他の高精度医療、ポリジェニックリスクスコアリング、そしてDTCアプリケーションに合わせた850,000を超えるバリアントが搭載されている最新のApplied Biosystems™ Axiom™ Precision Medicine Diversity Array(PMDA)を選択しました。
特に、アスピリンのような広く使われている市販薬に対する個々の応答の直接的な関連性を特定することは、興味深いことです。何らかの理由でアスピリンを服用しているほとんどの健康な人々(ASPREEコホートなど)は、普段通り日常生活を続けます。特に指示がない限り、彼らは好きなものを食べ、いつものように運動し、好きな時にタバコを吸い、風邪にかかったり、怪我をしたり、旅行もします。Axiom PMDAは、研究者がアレルギー、依存症、肥満、皮膚の状態などのライフスタイルや環境状態をジェノタイピング研究に組み込むことを可能にするバリアントが含まれています。
薬理ゲノミクスのバリアントは、薬物の影響を包含したジェノタイピング研究には重要な要素です。Axiom PMDAは、Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium(CPIC)ガイドライン、Pharmacogenomics Knowledgebase(PharmGKB)、薬剤性ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子、およびADME関連遺伝子のマーカーを含み、広範囲にわたる検証済みの薬理ゲノミクスコンテンツを使用して、これらの研究に対応しています。
心臓疾患に対するアスピリンの影響に焦点を当てた研究に対応するために、サーモフィッシャーは、心臓発作だけでなく、脳卒中や貧血のリスクバリアントを含むようにAxiom PMDAの疾患マーカー数を拡大しました。 Axiom PMDAには、低⽤量アスピリンがよく処方される急性の⼼臓病に加えて、アルツハイマー病やパーキンソン病のような加齢に関連した疾患、胃がんや血液がんのような特定のがん、造血系疾患、母体と胎児の不適合、まれな血液型のような血液に関連した疾患のバリアントマーカーも含まれています。
オーストラリアとアメリカの祖先解析に対するASPREE試験の要件を満たしながら、サーモフィッシャーは、バランスの取れたカバレッジを提供し、複数の集団の詳細な祖先解析を可能にする常染⾊体マーカーをAxiom PMDAに取り入れました。多くの⼈々が個々のゲノミクスに関⼼を持ち、知識を習得するようになると、これらのコンテンツは、利用者にとって祖先解析だけでなく、医療関連情報を提供するためのジェノタイピング情報として重要になります。
健康的な長寿に対する遺伝学を理解する
ASPREEジェノタイピングプロジェクトについて、モナッシュ大学の公衆衛生ゲノミクスの責任者であり、ASPREE試験チームの主要メンバーであるPaul Lacaze博士に話を伺いました。プロジェクトの⽬標は、薬物療法での有益性、または有害性に関連する遺伝⼦マーカーを特定することです。Lacaze博⼠は次のように述べています。「⼈々に潜在する薬理遺伝⼦型を調べ、それを最⼤7年間にわたって毎年収集した処⽅薬情報と関連付けることは、⼤きな意味があります。なぜならば、新薬が処方された場合、副作用の可能性があるからです。そして、それらを相互に関連付けることで、実際の薬物処⽅データと⼀緒に、意味を持った実用的な薬理遺伝子の多様性頻度を調べることができます。」
ASPREE試験では、参加者からできるだけ多くの遺伝情報を収集することを⽬的としています。研究を通じて明らかにされた情報、ASPREE Healthy Aging Biobank検体、およびAxiom PMDAは、薬理ゲノミクス研究者にとって⾮常に貴重なリソースです。併せて、それらは⽼化に影響を与える遺伝的要因を調査するための素晴らしい機会を提供します。結果として得られた薬理ゲノミクスの見識は、ASPREE試験参加者、および多くの⾼齢者に、最大の恩恵を与え、危険性を小さくし、そして最終的に転帰の改善につながる治療法に導く可能性があります。
他の研究者が採用したジェノタイピング戦略に関する他の記事もあります。技術的なご質問がありましたら、当社にお問い合わせください。
参考文献
1. ASPREE試験のWebサイト
2. McNeil JJ et al. (2018) 健康な高齢者における無障害生存に対するアスピリンの効果 N Engl J Med379:1499–1508. doi: 10.1056/NEJMoa1800722.
3. UNSW Media / Monash University(2018)ニューサウスウェールズ大学の科学者が大規模アスピリン試験からの15,000人のDNAサンプルを分析する
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。



