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Thermo Scientific™ Dionex™ IonPac™シリーズは有機溶媒耐性が高いカラムなので、メタノールやアセトニトリルなどの有機溶媒中のイオン分析をする場合、試料をそのまま注入できます(直接注入法)。しかし、有機溶媒の濃度によってはベースラインの隆起が起こり、目的成分が妨害され、定量が困難となることがあります。このベースライン隆起を軽減できる分析方法として濃縮カラムを用いたマトリックス除去法があります。そこで今回は、水酸化物系溶離液と炭酸系溶離液、それぞれの場合の直接注入法とマトリックス除去法をご紹介します。
アセトニトリル(AcCN)、メタノール(MeOH)、2-プロパノール(IPA)の3種類の有機溶媒を、注入ループを用いて直接注入しました。結果は、図1に示すように、Clについては、どの溶媒もベースラインの隆起が確認されたため、Clの定量ができませんでした。Cl以外の成分については、有機溶媒濃度25%程度までであれば添加回収率は90±10%であり、定量できることが確認できました。しかし、有機溶媒を注入したときの圧力変動は200 psiで、カラムへの負荷も懸念されます。
濃縮カラムを用いると、目的成分のみを保持し、マトリックスである有機溶媒を除去できます。図2に配管図を示しました。その結果、溶媒由来のベースライン変動が抑えられ、直接注入法より高濃度有機溶媒中のイオン分析ができます(図3)。特にメタノール(MeOH)は100 %でも分析ができました。また、注入時の圧力変動もほぼなくなりました。
キャリア純水で導入された試料は濃縮カラムに目的イオン種が保持されます。有機溶媒マトリクスは濃縮カラムに保持されることなく排出されます。これにより、マトリックスが取り除かれた目的イオン種が分離カラムへ導入され、分離検出されます。トラップカラムはキャリア純水の精製に用いられます。
アセトニトリル(AcCN)、メタノール(MeOH)、2-プロパノール(IPA)の三種類の有機溶媒を、注入ループを用いて直接注入しました。結果は、表3に示すように、フッ素(F)以外の成分については有機溶媒濃度50%程度までであれば添加回収率は100±10%であり、定量できることが確認できました。しかし、どの溶媒もFの位置にベースラインの変動が確認されたため(図4の赤破線部分)、Fの定量はほとんどできませんでした(図4)。
濃縮カラムを用いることで目的成分のみを保持し、マトリックスである有機溶媒を除去できます(図5配管図)。その結果、溶媒由来のベースライン変動が抑えられ、直接注入法より高濃度の機溶媒中のイオン分析ができます(図6)。
有機溶媒耐性が高いカラムを用いても、高濃度有機溶媒中のイオン分析をする場合、クロマトグラム上にベースラインの変動が確認され、変動の位置や溶媒の濃度によっては目的成分の定量ができません。濃縮カラムを用いたマトリックス除去法により、ベースライン変動の原因となる有機溶媒をオンラインで除去し、精密分析ができます。
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