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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分析・測定関連 / フーリエ変換型質量分析Orbitrapの基礎 ~HRAM定量の魅力とは~

フーリエ変換型質量分析Orbitrapの基礎 ~HRAM定量の魅力とは~

Written by adminlearningbench | Published: 02.26.2020

▼もくじ [非表示]

  • 化合物検出の基礎
  • イオン化の手法
  • 質量分析計による定量分析の現状
  • 質量分析の手法
  • 最後に

化合物検出の基礎

あなたの研究に最適な化合物検出の方法はなんでしょうか?

化合物検出には、網羅性・識別能力・定性能力・定量性という四つの要素があり、そのすべてを完全に網羅した「理想の検出器」というものはいまだに存在しません。

ただ、高い網羅性を持ち、その他三つの要素にも高いレベルで答えることができる、理想に近い検出器は存在します。

それが質量分析計です。

 

質量分析計は、化合物をイオン化することができれば質量電荷比により非常に高感度な化合物検出が可能になります。

たとえばUV検出器だとUV吸収の可能な化合物のみに検出幅が絞られてしまいますが、質量分析計は特異的な検出にとどまらず、幅広い化合物の検出を実現することができるのです。

イオン化の手法

前述の通り、イオン化さえできれば高い性能を発揮する質量分析ですが、具体的にはどのようなイオン化の手法が存在するのでしょうか?

イオン化の方法としては、サンプルの形状が液体の場合はESI法(エレクトロスプレーイオン化法)、APCI法(大気圧化学イオン化法)、APPI法(大気圧光イオン化法)、気体の場合はEI法とCI法、固体(結晶)の場合はMALDI法などがあります。

↓代表的な化合物のイオン化法

代表的な化合物のイオン化法

上の図から分かる通り、数あるイオン化法の中でもESI法は幅広い性質の化合物をイオン化する能力を有しており、もっとも汎用性の高いイオン化法と言えるでしょう。

質量分析計による定量分析の現状

定量分析の身近な例としては次のような用途が挙げられます。

代表的な定量分析の用途

たとえば健康診断では、健康状態を示す指標として、糖やコレステロール、タンパク質などを定量・考察します。基礎・応用研究においても、サンプルの状態を示す指標となるバイオマーカーの定量に活用されていますし、食品業界からは栄養学的にビタミンなどの機能性成分を、安全性の面から残留農薬などを定量します。

このように、さまざまな場面で定量分析は活用されている一方で、対象となる物質は、低分子から高分子まで幅広く、その化学的特性も多様であり、対象に応じた定量手法が必要とされます。

前述の通り質量分析計は幅広い化合物を高感度に検出できることで、さまざまな定量分析に既に活用されており、今後さらに応用されていくことが期待されています。

質量分析の手法

質量分析計の中でも、質量分解能(どれだけ近接した質量電荷比の差を識別できるか)順に、四重極、イオントラップ、飛行時間型(TOF質量分析計)、フーリエ変換型があります。

質量分析計の質量分解能比較

この中で、質量分析計による定量分析でゴールデンスタンダードとされているのは、トリプル四重極質量分析計による選択反応モニタリング(SRM)です。

SRM定量では、定量対象成分を選択性高く、高感度に定量できるというメリットがあり、多くの研究機関で使われてきました。

しかし、SRM定量は高感度での測定を可能にする分析メソッドを作成するために、多くのパラメーターを設定して最適化しなければならないという決定的なデメリットがあります。

たとえば、あるターゲットイオンを検出する場合、SRM定量では、観測したいターゲットイオンと質量差が小さい夾雑イオンが混在しても、それらを分離することができません。なぜなら、SRM定量では四重極でターゲットイオンを一般的に±0.5 Daの幅で透過しており、それより小さな質量差のイオンを分離選択できないからです。

↓SRM定量による質量分析結果のイメージ

SRM定量による質量分析結果のイメージ

そのため近年では、フーリエ変換型分析計の高分解能精密質量データを利用したHRAM定量が注目されています。

一般的に、質量分解能が高いと言われる飛行時間型質量分析計(TOF質量分析計)は、高速スキャンが可能ですが、スペクトルの積算や頻繁な質量補正などが必要となり、高性能ながらそれに付随する作業も発生するため、労力がかかりますが、もっとも高い分解能を持つフーリエ変換型(Orbitrap)は、最適化の必要がありません。

 

これは、フーリエ変換型(Orbitrap)分析計のHRAM定量(高分解能精密質量定量)では、ごくわずかな質量差を分離できる質量分解能を持つことから、ターゲットイオンを選択的に定量できるからです。HRAM定量では高分解能に加えて、Full Scanのデータを得ることができます。

↓HRAM定量による質量分析結果のイメージ

HRAM定量による質量分析結果のイメージ

このように、Orbitrap質量分析計は、質量分析計特有の汎用性とHRAM定量(高分解能精密質量定量)に最適な高分解能と質量精度を兼ね備えた非常に優れた装置です。

最後に

フーリエ変換型の質量分析計による、HRAM定量の魅力についてお分かりいただけたでしょうか?

 

YouTubeでわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

質量分析計とは ~Orbitrapの基礎~

https://www.youtube.com/watch?v=C8h7XREwlqM

Orbitrap質量分析を生かしたHRAM(高分解能精密質量)定量

https://www.youtube.com/watch?v=TIzSO0LyB4E

PDF版ダウンロードはこちら

 

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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