近年、培地サプリメントの発展は目覚ましく、かつて主流だった血清から、植物由来のペプトンや完全化学合成(以下CD: chemically defined)製品といった動物由来成分不含(以下AOF: animal origin-free)製品へ移行する流れが起こっています。この要因として、血清が培養においてロット差が生じる素材であることや供給に限界があることが挙げられます。これらの問題を解決し、安定した生産性の高い培養を行えるペプトンやCD製品の中で、今回はAOFペプトンに焦点を当て、具体的な活用事例を中心にご紹介いたします。
このような方におすすめ
▼血清のロット差に左右されず安定した培養をしたい
▼バイオ医薬品製造で動物細胞または微生物培養を実施している
▼もくじ
AOFペプトンとは
AOFペプトンとは、大豆や小麦などに代表される植物や酵母などの微生物を原料としたペプトンです。ウシ胎児血清(FBS)などと比較して供給が安定している点が特徴です。基本的にはフィードやサプリメントとして使用される場合が多いですが、微生物培養では基本培地としても使用することが可能です。
AOFペプトンの代表的なものとして酵母ペプトンや大豆ペプトンがあります。他には、特定の培養でサプリメントとして有用な小麦ペプトンや木綿ペプトン、麦芽ペプトンなどもあります。
CHO細胞のフェド・バッチ培養におけるフィードとしてのペプトン
CHO細胞のフェド・バッチ培養ではフィードとしてペプトンを用います。
CHO細胞は大腸菌と異なり非常に多くの栄養を必要とし、特に炭水化物は重要な栄養源の一つです。AOFペプトンである酵母ペプトンや大豆ペプトンは他のペプトンと比較して高濃度の炭水化物を有しているため、CHO細胞のフェド・バッチ培養では栄養源として非常に大きな役割を果たしてくれます。
フェド・バッチ培養では培地に対して、最終濃度が5~10 g/L程度となるように添加されるのが一般的です。お使いのCHO細胞株が要求する栄養素をふまえた上で、ぜひ複数のフィード戦略をお試しください。
昆虫細胞を用いた遺伝子組換え蛋白質の生産におけるペプトンの役割
昆虫細胞は主に遺伝子組換え蛋白質の生産に用いられますが、最近ではワクチンや遺伝子治療用ベクターの生産にも使われています。昆虫細胞の培養はAOFペプトンである酵母ペプトンに依存しています。お使いの細胞株に対して複数の酵母ペプトンを試験して、もっとも適したペプトンを選択されることをお勧めします。
AOFペプトンを用いた大腸菌(E.coli)培養
AOFプトンは、大腸菌(E.coli)を用いて医薬品原薬または医薬品原材料を製造する際に有用な基本培地の一つとなります。大腸菌にとって主要な栄養源であると同時に、バッファーとしての役割も果たします。多くのペプトンでは培地中に最大30 g/L程度の割合で使用することが推奨されています。使用例として図1にお示ししました。こちらの図から、酵母ペプトンを用いた培養は大腸菌が最も適していることがうかがえます。
AOFペプトンを培養で使用するにあたり、お使いの大腸菌株がどのような栄養を必要としているか同定することが重要です。また、複数のペプトンをブレンドすることがより適切な場合もあるため、複数のペプトンを比較・検討することもお勧めします。
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今回紹介したAOPペプトンを始めとする当社が取り扱う前ペプトンに関するさらに詳しい情報を提供しています。各製品の特長やアプリケーション、さらには製品選択ガイダンス等、実用性の高い様々な情報が掲載されています。
細胞培養および微生物発酵を用いる研究開発からGMPレベルの医薬品製造におけるリファレンスツールとしてお手元で是非ご活用ください。
<内容の一部ご紹介:全94ページ>
・イントロダクション(ペプトンの歴史)
・タンパク質からペプトンまで
ペプトンとその製造方法/ペプトン使用の利点/適切なペプトン選択方法/合成(CD)ペプトン
・細胞培養アプリケーション
基礎培地の選択/サプリメントおよびフィードの選択/工程の最適化/培地デザインサービス
・微生物発酵アプリケーション
微生物発酵用培地デザイン/ペプトンの選択/動物由来物質を含まない培地成分への移行
・動物由来成分不含(AOF: animal origin free)ペプトンの紹介
・動物由来ペプトンの紹介
・Starter Paks(スターターパック:用途に合わせた3種のトライアルキット)
・化学合成(CD: chemically defined)サプリメントおよびフィード
・微生物培養およびワクチン産生用培地
・プロトコルおよび試験方法の定義
・規制文書(試験成績書/適合証明書)
・オーダーインフォメーション(全製品一覧表)
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。



