微量の液体サンプルを正確に分注することは、研究や試験の基本中の基本です。今回は、粘度の高い液体や揮発性の液体など、サンプルの形状に適したピペッティング方法をご紹介します!
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ピペットの分注方式
多くの研究室や試験室で使われるピペットには、空気置換方式と強制置換方式の2種類があります。空気置換方式のピペットは、水溶液の分注に広く使われています。強制置換方式は粘度の高い液体や揮発性の液体に使われます。いずれのタイプのピペットにも、シリンダまたはキャピラリの中で動作するピストンがあります。空気置換方式のピペッティングでは、一定量の空気がピストンと液体の間に存在します。強制置換方式では、ピストンが直接液体に接触します。
空気置換方式によるピペッティング
空気置換方式のピペッティングは、標準的な分注操作に使われており、非常に正確な方法です。しかし、大気圧や溶液の比重、粘度などの条件が、空気置換方式ピペットの性能に影響を及ぼすことがあります。
空気置換方式のFinnpipette
- マニュアルピペット:Finnpipette F1, F2
- 電動ピペット:Finnpipette Novus
強制置換方式によるピペッティング
Finnpipette ステッパーピペットは強制置換方式の連続分注ピペットです。専用チップのFinntipステッパーは、シリンジ内にピストンが入っているマイクロシリンジタイプのディスポーザブルチップです。サンプル間のクロスコンタミネーション(キャリーオーバー)やエアロゾルによる汚染を防ぐことができます。
- チップの中のピストンを引き上げると、液体がチップに吸引されます。
- 分注レバーを押し下げるとピストンの位置が下がり、設定された容量の液体が分注されます。分注レバーは、各分注ストローク(ステップ)ごとに1回ずつ押します。
サンプルに適したピペッティング方法まとめ
バッファ、薄い水溶液
- ピペット:空気置換方式
- チップ:スタンダードチップ
- 操作方法:フォワード法
全血、血清
- ピペット:空気置換方式
- チップ:スタンダードチップ、ワイドチップ
- 操作方法:リンス法 (不均質サンプルの分注法)
- 余分な液がチップの外側についていることがあります。分注前にチップを容器のふちに軽く触れてチップの外側の余分な血清を除去してください。
グリセロール
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:スタンダードチップ、ワイドチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:正確に分注するにはリバース法
- 気泡を生じやすく、分注が困難です。気泡発生を防ぐため、ゆっくりと吸引してください。分注前にチップを容器のふちに軽く触れてチップの外側の余分な液体を拭いおとしてください。
Tween 20/40/60/80
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:スタンダードチップ、ワイドチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:リバース法
- Tweenは粘性が非常に高いので、分注しやすくするため、10%に希釈するとよいでしょう。正確な分注は難しく、チップ内に若干の液体が残りがちです。吸引も分注もゆっくりと行ってください。強制置換方式のピペットおよびチップの使用もお勧めできます。
タンパク質、核酸溶液
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:フィルターチップ、ワイドチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:リバース法
放射性物質(14C, 3H-thymidine)
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:フィルターチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:フォワード法
- 予め2-3回溶液の吸排を行ってから、ピペッティングすると正確度が向上します。
酸、アルカリ(H2SO4, HCl, NaOH)
- ピペット:空気置換方式
- チップ:フィルターチップ
- 操作方法:フォワード法
- 酸やアルカリには、蒸発しやすいものもあります(トリフルオロ酢酸など)。蒸発を最小限にするため、操作をすばやく行ってください。
毒性物質
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:フィルターチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:フォワード法
ヌクレオチド(ゲノムDNA、PCR産物)
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:フィルターチップ、ワイドチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:フォワード法
- ゲノムDNAはワイドチップを使うと、機械的な切断を防止できます。
揮発性物質(メタノール、ヘキサンなど)
- ピペット:空気置換方式または強制置換方式
- チップ:フィルターチップまたは強制置換方式チップ
- 操作方法:リバース法
- 蒸発を防ぐため、迅速なピペット操作が必要です。カーボンフィルターチップはベーパーがピペット内部に入ることを効果的に防止します。
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