マルチプレックスリアルタイムPCRとは何ぞや?|今こそ本気で徹底理解! リアルタイムPCR講座 第20回

今回のテーマは、マルチプレックスリアルタイムPCRについてです。
ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子を同一のウェルで反応させることができるのが、マルチプレックスリアルタイムPCRです。

マルチプレックスリアルタイムPCRの良いところ

メリットの1つは、定量の精度の高さです。ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子を別々のウェルで定量する場合、ピペッティングによる差が生じる可能性があります。しかしマルチプレックス反応は、ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子を同一ウェルで定量するので、このような人為的な実験操作による差は生じません。

2つ目のメリットは、ウェル数が半減することです。時間を短縮できるだけではなく、ランニングコストも減らせます。

マルチプレックスリアルタイムPCRのコツ

実際にマルチプレックスリアルタイムPCRを行うためには、ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子を同一のPCR条件で増幅する必要があります。

単一チューブ内で2種類の遺伝子発現解析を行うことになるのですが、注意すべきことがあります。場合によっては、発現量の大きい遺伝子のPCRプライマー濃度を下げておく必要がある、という点です。特に、内在性コントロール遺伝子はターゲット遺伝子と比べて発現量が大きい場合が多いので、留意して下さい。単一チューブ内のPCRでは存在量が多いものから先にPCR増幅が起こるため、発現量が多い内在性コントロール遺伝子がチューブ内に存在しているdNTPsを消費しきってしまい、発現量が小さいターゲット遺伝子が遅れて増幅するときにはdNTPsが必要量存在せず、十分な増幅曲線の検出ができないというリスクがあります。

弊社では、こういったリスクを排除できるように、マルチプレックス解析用にターゲット遺伝子のPCRプライマー濃度を薄く設定し、必要以上の増幅が生じないように調製している製品も提供しています。


最近では各試薬メーカーからもマルチプレックス用に最適化された試薬が登場し、論文につかわれる頻度も増え、リアルタイムPCRの主流となっていきそうな勢いです。よく勉強しておきたいですね。次回は、ユニバーサルなPCR条件の利点をフルに生かした「TaqMan® Array Card」を紹介します。

参考文献

様々な論文でマルチプレックスリアルタイムPCRによる実験結果が報告されていますので、ご参考までに例を紹介します。
Monney, L., et al. 2002. Th1-specific cell surface protein TIM-3 regulates macrophage activation and severity of an autoimmune disease. Nature. 415: 536-541.
Panda, S., et al. 2002. Coordinated transcription of key pathways in the mouse by the circadian clock. Cell. 3;109(3):307-20.

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