前回第1回では、細胞製造の“自動化”、“閉鎖系”が求められる理由、自動装置の導入があまり普及していない背景や課題、当社Gibco™ CTS™ Rotea™ Counterflow Centrifugation System(以下CTS Roteaシステム)の概要をご紹介しました。
今回の第2回では、当社CTS Rotea システムでできること、アプリケーション例についてお話します。
▼こんな方におすすめです!
- 閉鎖系自動細胞処理装置を探している方
- 手作業による細胞製造に閉鎖系、自動化の導入を検討されている方
- 多品種少量の製造に対応できる設備を探している方
- 細胞医療、遺伝子治療の研究者、プロセス開発担当者
- 自動装置による細胞処理の具体例を知りたい方
▼もくじ
1.細胞製造の自動化を可能にするCTS Roteaシステムでできることとは?
今回は、細胞を閉鎖系で自動処理する「CTS Roteaシステム」についてより具体的にご紹介します。「細胞医療」や「再生医療」の分野では、細胞そのものが製剤のため、その治療薬の製造過程では細胞を無菌的に適切な操作で取り扱う必要があります。CTS Roteaシステムは、細胞製造工程に必要な細胞の洗浄、濃縮、分離の操作を最適化します。それでは詳細を下記にご説明します。
CTS Roteaシステムでできること
- 細胞の洗浄
- 溶液の置換
- サイズが異なる細胞の分離(抗体は不使用)
- 細胞の濃縮
細胞の洗浄
まず、細胞の洗浄についてです。CTS Roteaシステムは、細胞への負担を最小限に抑えつつ、高い生存率と回収率を実現しています。例えば、T細胞の洗浄では高い生存率が確認されており、人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells、iPS細胞)のスフェロイド、間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell 、MSC)やCHO細胞の洗浄実績もあります。
溶液の置換
溶液の置換も得意です。特に血液検体の場合、溶血液と組み合わせることで赤血球の除去が可能です。溶血後での赤血球除去後、連続してBufferや培地へ溶液置換することも可能です。
サイズが異なる細胞の分離
エルトリエーションの条件を調整することで、サイズが異なる細胞の分離も可能になります。具体的には、血液検体におけるリンパ球と単球の分離や、細胞とマイクロキャリアの分離に成功しています。
細胞の濃縮
CTS Roteaシステムは、細胞濃縮に優れています。細胞懸濁液を最小で5 mLまで濃縮することができ、特にエレクトロポレーションや凍結保存液との混合など、小スケールでの前処理が必要な場合に大きなメリットがあります。
連続的なプロセスの構築
これらの機能は単独で使用するだけでなく、連続的に組み合わせて一連の処理工程をプロトコルとして構築できます。これにより、効率的でスケール拡張性のある製造プロセスを実現し、細胞製造の自動化に大きく貢献します。

2.CTS Roteaシステムが採用するカウンターフロー・遠心分離技術とは?
CTS Roteaシステムが多用途な理由の背景には、カウンターフロー・遠心分離技術の採用があります。
通常の細胞処理では、遠心機を使用して細胞をペレット化し、上清を取り除くという操作を繰り返します。このような操作は、細胞にストレスを与え、コンタミネーションリスクを高めます。一方で、カウンターフロー・遠心分離技術では、円すい状のチャンバー内で細胞を遠心力と流体力で釣り合わせながら動的に維持し、その間、液体が連続的に流れ続けます。そのため、遠心機を使用した従来法に比べると以下のような利点があります。
- 細胞への負担が小さい:細胞にかかるストレスが大幅に軽減されます。
- 効率的な溶液置換:連続的な液体の流れにより、溶液置換が効率よく行われます。
- 細胞の分離:細胞のサイズに応じた分離濃縮ができます。

3.CTS Roteaシステムのアプリケーション例
CTS Roteaシステムは、その多用途な機能を連続的に組み合わせることにより、さまざまな細胞製造に組み込むことができます。以下にそのアプリケーション例をご紹介します。
アプリケーション例
- アフェレーシス検体からの赤血球の除去と末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells; PBMC)の回収
- PBMCをさらにリンパ球と単球に分離し、濃縮回収
- 全血から溶血液を用いた赤血球の除去と白血球の回収
- iPS細胞のスフェロイドの回収とシングルセルの洗浄除去
- 培養細胞(MSC、線維芽細胞、CHO細胞ほか)の洗浄・濃縮・回収
上記のアプリケーション例のうち、2例について以下に紹介します。
アフェレーシス検体からの赤血球の除去とPBMCの回収
まず白血球アフェレーシスの血液検体からPBMCを回収し、T細胞を分離する例をご紹介します。通常、フィコールを使用した密度勾配遠心で2時間かかるところ、CTS Roteaシステムでは閉鎖系で処理することで、PBMCを30分程度で分離することが可能です。

そのPBMCの回収率は90%前後であり、複数回実施した結果からも高い再現性が確認されています。またT細胞のサブポピュレーションに大きな影響を及ばさないことも確認されています。

iPS細胞のスフェロイドの回収とシングルセルの洗浄除去
CTS Roteaシステムを使用することで、最適な流速と遠心力でiPS細胞のスフェロイドを回収し、シングルセルを洗浄除去することができます。洗浄除去されたシングルセルは、新しいスフェロイドを再形成することができます。
その他のさまざまな細胞種においても細胞洗浄や溶液置換、液性成分の回収などの実績があります。

その他のアプリケーションについても、ご興味があればお問い合わせください。
まとめ
CTS Roteaシステムは、細胞医療や再生医療の分野で新しい可能性を切り開く革新的なツールです。効率的で生存率の高い細胞処理が求められる細胞医療において、このシステムは有用です。現在の細胞処理に課題をお持ちの場合は、ぜひ、当社へお問い合わせください。
次回の第3回では、CTS Roteaシステムも該当するモジュール型装置と完全一体型、オールインワン型の装置の特長や違い、運用例についてご紹介します。今後も、細胞医療製品の製造プロセスに関する最新情報や実例をこちらのブログでご紹介していきますので、ぜひご期待ください。
CTS Roteaシステム製品ページ
CTS Roteaシステムのアプリケーションデータ
CTS Roteaシステム アプリケーションノート
研究用または細胞、遺伝子あるいは組織を使用した製品の製造に使用できます。診断用には使用いただけません。



