内匠 透 氏(理化学研究所脳科学総合研究センター シニア・チームリーダー)
以前から概日リズムの分子機構について研究を続けていた内匠氏。「時計遺伝子と生物の行動がリンクしていることは知られています。そこで高次の脳機能についても遺伝学的なアプローチができるのではないかと考えたのです。現在の神経科学は、神経のネットワークと行動との関係に焦点が当てられており、脳機能における分子機構の完全な解明には至っていません。概日リズムと同じく、認知機能や社会性なども分子生物学的に捉えたいのです」と話します。遺伝との関連が指摘されている精神疾患、特に自閉症を題材に、遺伝学的・分子生物学的な手法で脳機能を解明することに取り組みます。
精神疾患が染色体異常と関連していることは1990年代にわかっていました。しかし、ヒトで実験として遺伝学的にアプローチすることは困難です。そこで内匠氏は、自閉症のモデルマウスの作製を行うことにしました。「自閉症患者に15番染色体の15q11-13の重複が見られます。そこでヒトの15番染色体に該当するマウスの7番染色体に、6.3Mbpというかなり大きな重複領域を導入しました」(内匠氏)。このマウスは野生型と比較して、マウスに近づく頻度が下がるという社会性低下や、モリス水迷路という試験でゴールを変えても同じ場所に行きたがる固執的行動といった自閉症様行動を示すことがわかり、自閉症のヒト型モデルマウスとしてさらなる解析を進めています。また、2017年には、ある自閉症患者においてシナプス膜に存在するタンパク質Neuroligin1をコードする遺伝子に変異があったこと、その変異を導入したモデルマウスでは社会性や空間記憶能力に異常が見られたことを報告しました。「精神疾患は、シナプスの異常を発端として、神経のネットワークが異常になった結果であるというのが現在のコンセンサスです。シナプス関連分子を標的にすることは、精神疾患や脳機能の解明への第一歩と考えています」(内匠氏)。
さらに内匠氏は、精神疾患と関連があると報告されている数多くのヒトゲノム上の変異をマウスのES細胞に導入し、精神疾患の細胞モデルの作製にも取り組んでいます。組換え用のベクターや組換え後のES細胞の塩基配列の確認などに、日常的にDNAシーケンサを使っています。「我々にとってシーケンサはツールに過ぎないので、そこに労力をかけたくありません。その点、SeqStudio Genetic Analyzerは簡便に使えて便利。また外部委託よりも早く、当日中に結果が得られるスピード感も気に入っています。臨床系の研究室など、他の業務と調整しながら研究するスタッフにとっても、簡便さやスピードは重宝されるのでは」と、内匠氏は研究室にシーケンサを配備するメリットを指摘します。モデルマウス作製に加え、精神疾患の病態を反映するES細胞の作製へと解析をさらに加速させていく予定です。
オールインカートリッジ方式なので初心者にも使いやすいシーケンサです。次世代シーケンスデータとの高い相関性も確認済みです。
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