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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】細胞がチューブの中で沈む速度を測ってみた

【やってみた】細胞がチューブの中で沈む速度を測ってみた

Written by LatB Staff | Published: 12.25.2023

細胞培養をされている方は、細胞の懸濁液をうっかり放置してチューブの底に細胞が沈んでしまうことを経験されていると思います。短時間であっても多少は沈殿していると考えられ、放置してしまった場合はしっかりと混合して細胞濃度を均一にすることが重要です。
では、細胞はどれくらい放置したらどれくらい沈殿するのでしょうか?どのくらいの放置時間までであれば、あらためて混合する必要はなくなるでしょうか?気になったのでやってみました!

▼もくじ

  • 実験1:材料と方法
  • 実験1:結果
  • 実験2:材料と方法
  • 実験2:結果
  • まとめ

実験1:材料と方法

  • 細胞は2種類:HeLa(ヒト子宮頸がん細胞株)、Jurkat(ヒトT細胞リンパ腫細胞株)
  • 15 mLチューブに細胞懸濁液3 mLを準備
  • 水面から約1 cm(チューブの2 mL目盛り)地点から10 μLをマイクロピペットで採取(図1)
  • 大気圧条件下で時間経過ごとに採取したサンプルをInvitrogen™ Countess™ 3自動セルカウンターで細胞カウント。n=3で実施
  • 0分、1分、3分、5分、10分、15分、30分、60分の8点で実施
    ※8点目には液量が240 μL少なくなり水面からの距離が変わってくるが誤差と判断
サンプル採取の様子

図1. サンプル採取の様子
細胞懸濁液3 mLの水面から約1 cmの地点から10 µLを取り、細胞カウントを実施(n=3)。

HeLaとJurkatの顕微鏡像

図2. HeLaとJurkatの顕微鏡像
HeLaは接着細胞だが懸濁状態(浮遊状態)でも撮影。

Countess 3自動セルカウンター

Countess 3自動セルカウンター

実験1:結果

細胞が2種類、n=3で8点のサンプルをカウントした結果です。合計で48サンプルのカウントを行いましたが、血球計算盤での手動計数でなくて本当に良かったと感じました。カウントには当社のCountess 3自動セルカウンターを使用しましたが、その簡便さをあらためて実感しました。血球計算盤しか使えない環境だったら48サンプルもカウントできず、途中で心が折れていたと思います。
さて、結果です。HeLaでは10分くらいまであまり変化がなく、15分以降は細胞数が減っていきました(図3)。Jurkatでは15分までは変化がなく、30分以降で細胞数が減りました(図3)

HeLaとJurkatの細胞カウント結果

図3. HeLaとJurkatの細胞カウント結果
HeLaは15分、Jurkatは30分以降で顕著な細胞濃度の低下がみられた。

HeLaはJurkatに比べると大型のため、沈降速度も速かったものと思われます。HeLaは10~15分で1 cm地点で影響が出たため、10~15 min/cm、Jurkatは15~30 min/cmと想定されることから、それぞれの沈降速度は以下のように推測されます。
HeLa:1分あたり 0.7~1 mm
Jurkat:1分あたり 0.3~0.7 mm
仮に10分放置したら、数mmから1 cmくらい沈むということが分かりました。逆にいえば、放置10分程度であれば、水面下1 cm以下から採取すれば細胞濃度には極端な影響はないようでした。

この実験では上部から約1 cmの地点で測定していますが、細胞は重力により下方向にしか移動しないため、沈降による影響は上部(水面)および底部から出始めると考えられます。そこで、次の実験をしてみました。

実験2:材料と方法

  • 細胞はJurkatを使用(実験1の残り)
  • サンプル採取の位置は①水面、②水面から約1 cm(実験1のデータを流用)、③チューブの底の3カ所
  • その他の条件は実験1と同じ

実験2:結果

追加で48サンプル(①水面24サンプル、③チューブの底24サンプル)を測定しました。本当にCountess 3自動セルカウンターがあって良かったです。

①水面、②水面から約1 cm、③チューブの底の細胞カウント結果

図4. ①水面、②水面から約1 cm、③チューブの底の細胞カウント結果
水面は開始1分から細胞濃度が低下し、大きな影響があった。③のみ縦軸のスケールが異なる点に注意。②は実験1(図3)より流用。

さて、結果です。①水面は開始1分から顕著な影響が見られ、10分たつころには水面にはほとんど細胞がいないという結果になりました(図4①)。一方でチューブの底は15分くらいまであまり差がなかったのですが、30分、60分と経過するごとに細胞濃度が大きく上昇しました(図4③)。

細胞懸濁液を均一な濃度にすることは、再現性のある実験結果を得るためにとても重要です。今回の結果から、チューブの水面は特に放置した際の細胞濃度への影響が大きいことが分かりました。当然ながら、沈殿した後に再度ピペットで混合した場合には水面でもチューブの底でも同等の細胞濃度となります(Data not shown)。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の実験系では、サンプル採取時に液が少しかき混ざってしまった可能性や、採取により液量が減っていったこともあり正確なデータではないかもしれませんが、おおまかな傾向は間違っていないのではと思います。
皆さまも細胞懸濁液を取り扱う際は、しっかり混合する、水面からは取らない、ということにご注意ください。
今回合計で96サンプルもの細胞カウントを行いましたが、Countess 3自動セルカウンターのおかげであまり苦労せずに測定することができました。Countess 3自動セルカウンターの詳細情報やデモをご希望の方は、どうぞお気軽に下記のボタンからお問い合わせください。

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