近年、細胞生物学分野のさまざまな研究は、数々の病態に対する新しい治療法の検索に重要な技術としてさらなる注目を集めています。弊社の細胞イメージアナライザーは、細胞撮影画像から各種情報を数値化することにより、定量的で客観的な細胞解析(HCA/HCS)を可能とする測定機器です。今回と次回の2回にわたり、この細胞イメージアナライザーに焦点を当てて解説していきます。
細胞イメージアナライザーの概要については前回説明いたしましたが、今回はこの細胞イメージアナライザーを用いてどのような解析ができるか、事例を2つご紹介いたします。
事例1 分子局在の検出
まず、細胞イメージアナライザーを用いた分子の核内移行(トランスロケーション)を測定した例を紹介します。ヒト内皮細胞において、シグナル伝達に関わるNF-kBは、通常は不活化因子であるIκ-Bと結合して存在していますが、種々の刺激を受けるとIκ-Bがリン酸化を受けて離れたのち分解され、遊離したNF-kBは核内へ移行します(1)。HCAでは、細胞一つ一つの核領域、細胞質領域をそれぞれセグメント(形状認識)することで、この核内移行量を画像から定量化することが可能となります。
細胞イメージアナライザーによるイメージ解析では、画像から細胞一つ一つをセグメント(形状認識)し、研究者に必要な形態情報や蛍光情報を読み取り数値化していきます。上記分子局在の測定の場合、数値化情報は核を基準とし、核染色による細胞数カウント、核内-核周囲(細胞質内)の蛍光強度やスポットの位置、数、総面積、蛍光強度等を数値化する方法をとることが可能です。(図2 上段)
事例2 形態変化の検出:神経突起解析
細胞イメージアナライザーによるイメージ解析では、細胞質染色による細胞質全体の蛍光強度、細胞サイズや形態の変化を数値化することも可能です。この方法では、神経突起写真を解析することで、細胞一つ一つからの神経突起本数、合計神経突起長、神経突起分岐点数などの解析や、コロニー内の細胞数変化や細胞膜領域の蛍光強度を取得することが可能となります(図2下段)。
次に、神経突起を数値定量化した例を紹介します。ラット初代海馬神経細胞に、各種薬剤(SU6656=Srcファミリーキナーゼ阻害剤、Bis-1=プロテインキナーゼC阻害剤、Dopamine=カテコールアミン神経伝達物質およびL-Thyroxine=ヨウ化甲状腺ホルモン)を処理した際の薬剤干渉を見たデータです。すべての薬剤において最も高い濃度と次の濃度で細胞質領域(Average Cellbody Area)の減少が見られます。また最高濃度のSU6656とBis-1では神経突起合計数(Neurite Total Count Per Neuron)、神経突起全長(Neurite Total Length Per Field)と神経突起分岐点数(Branch Point Total Count Per Field)がコントロール値以下となり、これら薬剤が非常に有毒であることを示しています(図3右内赤丸部分)。
このような複雑な解析においては、従来はプログラミングやスクリプト作成などのコンピュータプログラムの知識を必要とされていましたが、弊社細胞イメージアナライザーArrayScanおよびCellInsightでは、各解析専用のソフトウェアを搭載し、簡単に解析操作を行えるように工夫されています。細胞の形態情報や蛍光情報を細胞イメージアナライザーで定量的に解析するHCAは様々なアプリケーションに対応し、多くの有用な情報を研究者に提供します。細胞研究が日々進む中、細胞イメージアナライザーを用いた細胞解析は今日の細胞研究に必須なシステムとなっています。
参考文献
Rothwarf, D.M. and Karin, M. (1999). The NF-kB activation pathway: a paradigm in information transfer from membrane to nucleus. Sci. STKE 5:1-6
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