タンパク質合成をとらえる!Click-iTシリーズの細胞解析アプリケーション(その4)

関連記事のその3では、クリックケミストリーの原理により、新生RNAをターゲットとした遺伝子発現解析のアプリケーションをご紹介しました。Invitrogen™ Click-iT™ シリーズで採用されている化学反応は、アジド化された化合物とアルキニル基をもつ化合物を、共有結合を介して結合させます(Figure 1)。本記事では、この強力な化学反応を利用してタンパク質の新生合成を解析するための製品群と使用事例をご紹介します。タンパク質の新生合成や翻訳後修飾については未知の部分が多く残っているとされています。当アプリケーションとお客さまの実験系を組み合わせていただくことにより、新たな生命現象の解明の糸口となる可能性が期待されます。関連記事のその1その2ではInvitrogen™ Click-iT™ 製品群によるイメージングアプリケーションを中心にご紹介しているので、こちらも併せてご参照ください。

▼こんな方におすすめです!
・タンパク質の新生合成を定量したい方
・新規のタンパク質を同定したい方
・タンパク質の翻訳後修飾を解析したい方

Click-iT製品で新生タンパク質産生を計測する

新生タンパク質の検出には35Sで標識されたメチオニンを取り込ませる手法が主に採用されています。当社はメチオニンアナログとしてHPG(アルキン)またはAHA(アジド)を取り込ませることにより、放射性物質を用いずにクリック反応で新生タンパク質を検出するアプリケーションを構築しています。蛍光顕微鏡による標準的なイメージングに加えて、ハイコンテントイメージングやフローサイトメトリーと組み合わせることによる定量化も容易です。HPGとAHAの両方を細胞に取り込ませて、それぞれを異なる蛍光色素で標識したアジドまたはアルキンで検出することにより、新生タンパク質合成を時空間的に解析することも可能です。また、ピューロマイシンアナログであるOPP(アルキン)は、タンパク質合成装置であるリボソームに取り込まれ、伸長ペプチドのC末端に結合します。このOPPを蛍光標識アジドで検出することにより、新生タンパク質合成をイメージングすることができます。HPGやAHAと比較したときにOPPのメリットは、OPP添加時にメチオニンフリーの培地を使用する必要がないことや、同様の理由でin vivoのイメージングが可能である点が挙げられます。これらの特長をFigure 2にまとめました。また、こちらに関連製品がまとめられているので、併せてご活用ください。

[製品情報]
■Invitrogen™ Click-IT™ L-Homopropargylglycine (HPG)(製品番号C10186
■Invitrogen™ Click-IT™ AHA (L-Azidohomoalanine)(製品番号C10102
■Invitrogen™ OPP (O-propargyl-puromycin)(製品番号C10459
■Invitrogen™ Click-iT™ HPG Alexa Fluor™ 488/594 Protein Synthesis Assay Kit(製品番号C10428C10429
■Invitrogen™ Click-iT™ Plus OPP Alexa Fluor™ 488/594/647 Protein Synthesis Assay Kit(製品番号C10456C10457C10458
■顕微鏡:Invitrogen™ EVOS™ Imaging System
■ハイコンテントスクリーニング用の細胞イメージアナライザー:Thermo Scientific™CellInsight™ シリーズ
※EVOS Imaging SystemやCellInsightシリーズのデモや資料請求は、こちらからご依頼ください。

Click-iT製品で新生タンパク質合成を捕捉する

最後に、新生タンパク質の捕捉アプリケーションをご紹介します。Invitrogen™ Click-iT™ Protein Enrichment Kit, for click chemistry capture of azide-modified proteins(製品番号C10416)は、AHAなどのアジドで標識した新生タンパク質をアルキンアガロースレジンで捕捉して精製するキットです。捉えたタンパク質をレジン上で断片化して液体クロマトグラフィ―質量分析装置(LC-MS/MS)で解析することにより、ターゲットのタンパク質を同定することができます。アジドで標識された新生タンパク質のみを標的とするため、アジド添加以前から存在しているタンパク質の持ち込みを極力排除することができます。また、クリック反応によってアジド化タンパク質が不可逆的にアルキンレジンに結合するため、ストリンジェンシーの強い洗浄操作が可能となり、バックグラウンドが極めて低い実験系を構築できます。
Lunardiらの研究チームは本キットを用いて、前立腺オルガノイドの培養上清から前立腺の前駆細胞の増殖や生存などに関与する分泌タンパク質を同定し、そのシグナル伝達機構を解析しています。多様な物質が含まれる培養上清からターゲットのタンパク質を同定できたのは、アジド標識されたタンパク質(オルガノイドから分泌されたタンパク質)を高感度・低バックグラウンドで検出できるClick-iTアプリケーションだからこそと考えられます(参考文献1、2)。さらに、AHA以外にもさまざまなアジドが用意されており、糖鎖や脂質などによる翻訳後修飾に着目したタンパク質の捕捉と同定も可能です。
タンパク質標識用のアジド化合物は、マニュアルのTable 2にまとめられています。本キットが採用された論文数はまだ多くありませんが、お客さまの実験系と本キットがうまく組み合わさったとき、未知の生命現象に関与する新規タンパク質の同定につながることが期待されます。

[参考文献]
1. Lorenzoni et al., (2022) “ETS-related gene (ERG) undermines genome stability in mouse prostate progenitors via Gsk3β dependent Nkx3.1 degradation.” Cancer Lett. 534:215612 (PMID: 35259458)

2. Cambuli et al., (2022) “Intra-epithelial non-canonical Activin A signaling
safeguards prostate progenitor quiescence.” EMBO Rep. 23: e54049 (PMID: 35253958)

[製品情報]
■Click-IT Protein Enrichment Kit, for click chemistry capture of azide-modified proteins(製品番号C10416

まとめ

  • Click-IT Protein Enrichment Kitにより、着目している生命現象が起きているときの新生タンパク質を捕捉し、同定することができます。
  • 新生タンパク質のClick-iTアプリケーションは、タンパク質全般のみならず、特定の翻訳後修飾されたタンパク質をターゲットとした解析も可能です。

<Click-iTシリーズの細胞解析アプリケーション>
EdUだけじゃない!Click-iTシリーズの細胞解析アプリケーション(その1)
こんなこともできる!Click-iTシリーズの細胞解析アプリケーション(その2)
遺伝子発現を見える化する!Click-iTシリーズの細胞解析アプリケーション(その3)
タンパク質合成をとらえる!Click-iTシリーズの細胞解析アプリケーション(その4)

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