Reckitt社におけるLIMSの展開
Reckitt社は、Muse™(ミューズ™)、Clearasil™(クレアラシル™)など、健康・栄養・衛生に関するブランドを複数持つ、イギリスに本社がある消費財企業です。20年以上にわたり、サーモフィッシャーサイエンティフィックは、Reckitt社の栄養関連事業のラボの品質管理のワークフローに対して、ラボ情報管理システム(LIMS)を提供してきました。LIMSを使うことで、品質管理におけるサンプルのワークフロー全体が、ひとつのアプリケーション内で追跡・管理できるようになり、データの整合性の維持につながるためです。
生産しているそれぞれの製品に対して規制を順守したり、GxP規範に適応させたりするために、カスタマイズされたワークフローを用いて各ラボを運営していることが、Reckitt社の品質管理プロセスが複雑になっている要因です。Reckitt社の全顧客に対して、同じワークフローの要件が適用されるわけではなく、各製品に応じて固有の要件を要求する顧客もいます。そのためReckitt社は、柔軟性のあるLIMSを必要としていました。
Reckitt社はThermo Scientific™ SampleManager™ LIMSソフトウエアを使用して、年間1,600万バッチ以上の栄養関連製品を生産しています。
また、Thermo Scientific™ SampleManager™ IDIソフトウエアにより、ロット情報、日付、使用の決定/結果などのラボデータを、自社のSAP™ と連携しています。SAPと連携させることで、さまざまな規格や要件に準拠した、業務効率のよいラボの基盤が実現しているのです。
クラウド化に向けた変革
Reckitt社ではLIMSのアップグレードの際にクラウド化を検討し、実現させました。ここではReckitt社が、既存のSampleManager LIMSソフトウエアの実装をどのようにクラウドに移行したか、についてご紹介します。
2018年、Reckitt社は社内のインフラ環境の分析を行い、クラウド化への変革の機会を探っていました。その際、5年間で400以上のアプリケーションのクラウド移行を計画しました。
「複雑にカスタマイズされ、複数のシステム統合を含んだグローバルLIMSのようなソリューションを、将来に向けて長期的に持続させるため、ソリューションを刷新する必要性に迫られていました。クラウドに移行することで、現在のシステムの拠点規模拡大が容易になるだけでなく、基幹システムとより連携してデータを活用することで、よい良いデータ分析を行うことができると考えたのです。」と、Reckitt社のIT・ライフサイエンス部門の責任者であるRaj Patra氏は述べています。
Reckitt社のクラウド化に向けた検討は、栄養関連事業の品質管理におけるLIMSから始まりました。その際、同社が使用していたSampleManager LIMSソフトウエアのバージョンはサポート終了が近づいていたため、アップグレードが既に計画されていました。サーモフィッシャーがLIMSのクラウド対応に対しても経験豊富であるということを知っていたReckitt社のプロジェクトチームは、LIMSのアップグレードプロジェクトの一環として、SampleManager LIMSソフトウエアをクラウドに移行することに決めました。
既存のLIMSをクラウドに移行するにためには、いくつかの課題がありました。当時Reckitt社が約20年にわたって使用していたLIMSは、さまざまなローカルシステムと連携しているだけでなく、大幅にカスタマイズされていたのです。チームの推定では過去20年間に、アプリケーションの少なくとも60%がカスタマイズされていました。現在の連携を維持し、カスタマイズを最小限に抑えることが、次のLIMSのアップデートやクラウド化のプロジェクトにとって成功の鍵となると考えられました。
クラウド化に向けて:システム連携
最初の課題のひとつは、分析機器やシステムとの連携です。Reckitt社は各拠点、各ビジネスワークフロー、各ラボの機器の連携要件を、再度明確に把握する必要性がありました。プロジェクトチームは、ラボとクラウド上のLIMSとのシームレスな接続の確立に取り組みました。
さまざまな課題と対応の中で、最も難易度が高かったのは、既存のカスタムコードへの対処でした。カスタマイズは、各拠点のフローに沿って効果的・効率的にLIMSを運用するのに役立っていましたが、反面、アップグレードする際のアプリケーションの移行が、より複雑になるという課題がありました。今回はクラウドへの移行に伴い、ほとんどのカスタマイズ機能をSampleManager LIMSソフトウエアのワークフローの「設定」の機能で対応しました。また、最新の.netテクノロジーに移行することで、将来にわたるアップグレードの合理化にもつながりました。
またプロジェクトの開始当初から、Reckitt社は個々のシステム、拠点、ビジネス機能、機器の連携要件を明確に把握する必要があると考えていました。これらの要件を把握した上で、同社のチームはサーモフィッシャーと協力して、各システムと機器の機能、接続させるためのツールについて検討しました。最終的に、Reckitt社はツールを組み合わせて連携のニーズを満たす手段を選択しました。
SAPとの接続のために、Reckitt社はSampleManager IDIソフトウエアを導入しました。SampleManager IDIソフトウエアは、ラボと製造部門間のデータフローを迅速化し、データ処理を効率化して、データ収集とレポートを統合します。
SampleManager IDIソフトウエアを使用することで、企業はラボをSAP S/4HANA™ と連携させて、サプライチェーン全体にわたる包括的な品質管理サポートを実現できます。
クラウド化に向けて:機器連携
ほとんどのラボと同様に、Reckitt社はさまざまなメーカーの幅広い機器を利用しています。機器ベンダーそれぞれに、データを共有するための独自の手段があります。結果をファイルに出力する機器もあれば、データベースを使用して結果を格納する機器もあります。最新機器はクラウドネイティブソリューションに接続してデータを共有することもできる一方で、従来の機器は独自のデータ形式でデータをオンプレミスに保持する場合もあります。
Reckitt社はこの課題に対処するために、Thermo Scientific™ Integration Manager™ ソフトウエアを利用しました。Integration Managerソフトウエアには、クラウドネイティブとオンプレミスの機器やシステム間のパイプラインを構築するため、あらゆるツールがあります。Integration Managerツールセットには強力なデータ変換機能が含まれており、ソースのデータ形式を変換先が読み込める形式に変換することができます。設定が完了すると、Integration Managerソフトウエアは自律的に動作し、問題がある場合は通知を送信します。
Integration Managerソフトウエアは、クラウドネイティブなソリューションとオンプレミスの機器、およびシステム間での双方向の接続を可能にします。Integration Managerソフトウエアを使用すると、クラウドからクロマトグラフィーデータシステム(CDS)などのオンプレミスソフトウエアに、簡単に実験データを送信できます。
社内の次世代クラウド化の第一歩へ
今回のReckitt社によるSampleManager LIMSソフトウエアのMicrosoft™ Azure™ クラウドへの移行の成功は、同社の将来に向けたクラウド化プロジェクトのモデルにもなるものとなりました。社内の次世代のクラウド化への第一歩となったのです。
SampleManager LIMSソフトウエアの詳細および本ブログでご紹介したケーススタディの完全版は以下をご参照ください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。
Muse and Clearasil are trademarks of Reckitt Benckiser.
Microsoft, Azure and Power BI are trademarks of Microsoft Corporation.
SAP and SAP S/4HANA are trademarks of SAP SE.