マイクロアレイの受託解析を利用する際に知っておきたいポイントその2

前回のブログ「マイクロアレイの受託解析を利用する際に知っておきたいポイント」では、解析対象遺伝子や解析できるサンプル、また発現解析用マイクロアレイのラインナップについてなど、マイクロアレイを受託解析に依頼する前に、あらかじめ知っておくと役に立つポイントをご紹介しました。

今回は受託解析前のポイントその2として、mRNAの発現解析アレイにはどのようなサンプルを準備する必要があるのか、また受託会社に送るサンプルは、どのくらいのクオリティや純度が必要なのかをご紹介します。

発現解析アレイ用に、Total RNAを準備しよう!

発現解析アレイで用いるスタートのサンプルは、Total RNAです。そのため、受託会社を利用してマイクロアレイのデータが欲しい方は、まずTotal RNAのご用意をお願いします。
抽出方法には特に指定はありません。よって、お客様のサンプルに適した、いつもご研究室で行っている抽出方法にてご準備ください。
なお、受託会社によっては組織や細胞を送っていただければTotal RNAの抽出の有償サービスがあるケースもありますので、Total RNAの抽出にご不安がある場合は受託会社にお問い合わせされることをお勧めします。

では、皆様のTotal RNAを用い、受託会社はどのようにマイクロアレイを行っているのでしょうか。まずTotal RNAを用いてマイクロアレイ用のサンプル調製を行う必要があります。下記に、マイクロアレイの実験の流れを示しました。

<Total RNAからマイクロアレイのデータを出すまでの流れ>

ではお客様から受託会社に送られるTotal RNAはどんな品質でも、どんな濃度でもよいのでしょうか。そんなことはありません。Total RNAの分解が進みすぎていたり、純度が低すぎたりすると、サンプル調製と解析がうまくいかないことがあるからです。

それでは次に、受託会社に送るTotal RNAの品質は、どのレベルのものがよいのかをご紹介しましょう。

Total RNAのQCを行い、確実に結果を出しましょう

マイクロアレイの実験では、Total RNAの品質がマイクロアレイの成功・失敗を左右すると言っても過言ではないほど重要です。ここでは、マイクロアレイ用のTotal RNAの品質チェック(QC)にはどういう確認が必要かをご紹介しましょう。

・Total RNAはNuclease Free Waterに溶かしましょう
まず、受託会社に送るTotal RNAはNuclease Free Waterに溶かしましょう。DEPC水やTEバッファーは推奨されておりません。また、Total RNAの濃度が薄すぎるとマイクロアレイの実験に使えなくなることもありますので、ご注意ください。

・Total RNAの濃度や量を確認しましょう
マイクロアレイ実験に必要なTotal RNAはある程度の濃度と量がないと解析が難しくなります。濃度やサンプル量は受託会社によって規定が異なり、特に濃度が基準を下回ると実験自体ができない場合があるので必ず受託会社の基準をご確認ください。

そして濃度の確認とともに行っていただきたいのが、純度や分解度合いの確認です。

・Total RNAの純度や分解度合いの確認を行いましょう
マイクロアレイ解析に用いるTotal RNAにも、受託会社ごとに純度や分解度合いの基準があり、どんなものでもアレイ解析ができるわけではありません。基本的には純度が高く、分解していないTotal RNAが理想です。
受託会社は弊社からの技術トレーニングを受けている、マイクロアレイのプロの方々が実験と解析を行ってくれますが、Total RNAの品質が低すぎる場合は、いくら実験のプロでもデータを出すことは困難です。

では、Total RNAを受託会社に送る前、どういった品質チェックをすればよいでしょうか。
Total RNAの品質チェックは、純度の確認と分解度合いの確認をオススメします。純度の確認には、吸光度計でのレシオが必要になります。受託会社によって基準値は異なりますが、たいていの場合、下記の両方か、または片方のデータが必要になりますので、確認をしておくようにしましょう。

A260/A230の値

A260/A280の値

これらの数値が低いサンプルは、塩や有機溶媒、またはタンパク質などの混入が考えられ、マイクロアレイでデータが出ない原因にもなります。これらの値が受託会社の基準値に達していない場合は、精製を行うか、受託会社に相談してみるようにしましょう。

また、分解度合いの確認には、Agilent社のBioanalyzerによるRIN値またはリボソームRNAの18S/28Sのレシオを基準として設けているところが多いです。Bioanalyzerをお持ちの方は、Total RNAのRIN値を測定してみましょう。RIN値が低いサンプルの場合はTotal RNAの分解が進んでおり、データが出ない原因になることがあります。しかし、たとえばFFPEサンプルなどの分解が進んでいるサンプルでも解析できることもあります。これは受託会社によって対応の可否が異なりますので、RIN値が低くても諦めず、まずは受託会社に問い合わせてみて、状況を伝えてみましょう。

まとめ

受託会社にお送りするサンプルはTotal RNAです。事前に濃度や量、純度などを確認しておきましょう。それがマイクロアレイで確実なデータを入手するための第一歩となります。

受託解析企業一覧(8社)

倉敷紡績 株式会社
認定サービスプロバイダーとして15年以上の実績と経験があります。特に遺伝子発現解析用途では、組織からのRNA抽出や微量サンプル解析、解析後のデータマイニングなどの幅広いサポートが可能です。

株式会社 ジェネティックラボ
ジェネティックラボは、病理診断とコア技術である最先端の分子生物学的解析技術を駆使し、バイオマーカーの探索・評価、診断手法、診断薬・治療薬開発を推進します。

積水メディカル 株式会社
遺伝子の網羅的発現解析、ターゲット遺伝子発現量の測定及びヒト肝毒性の予測等、幅広いニーズに合わせた試験の実施が可能です。

一般財団法人 化学物質評価研究機構
再現性の高いアレイデータ測定および、ご要望に合わせたデータ解析まで幅広く対応しております。また、アレイを使用した核酸医薬品のin vitroオフターゲット効果の評価も行っております。

株式会社 セルイノベーター
遺伝子発現解析(マイクロアレイ、NGS)を実験の計画から、サンプル調製、マイクロアレイ、NGS実験、データ解析(データマイニングサポート)までを一貫してサポートする会社です。解析関連のブログはこちらです。

フィルジェン 株式会社
弊社独自の解析ソフトMicroarray Data Analysis toolを無償提供!豊富な経験と実績、幅広い受託サービスでお客様の次のステップもサポートします。

株式会社 理研ジェネシス
網羅的探索から特定遺伝子の検証まで、多岐にわたる遺伝子解析サービスを提供します。

株式会社 LSIメディエンス

また、受託会社に本格的な解析を依頼する前にどのような結果が出るのか見てみたい方向けに、サーモフィッシャーには「お試し有償解析サービス」もございます。この機会に一度、弊社のアレイをお試しください。

マイクロアレイの手引き

DNAマイクロアレイは登場してからすでに20年が経ち、同じように網羅的な発現解析が出来る次世代シーケンサーの普及もあって、熟成した技術と言えます。しかしマイクロアレイは次世代シーケンサーに比べてコスト的なメリットがあり、また解析の容易さなどから、まだまだ強力な網羅的な遺伝子発現解析が出来る技術として、近年見直されて来ている技術でもあります。
この手引きはそのマイクロアレイの原理や基礎、ワークフローなどについて学べるページです。

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