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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 次世代シーケンスを用いたてんかん関連遺伝子の低頻度変異の検出

次世代シーケンスを用いたてんかん関連遺伝子の低頻度変異の検出

Written by LatB Staff | Published: 06.25.2021

てんかんは遺伝的な影響が強い疾患であることが知られており、これまでに、いくつかの原因遺伝子が特定されています[1] 。たとえば、SCN1A における変異は、良性の熱性けいれんからより重度なドラベ症候群まで、幅広い重症度の臨床症状を引き起こす可能性があります。このことは、特に変異がどのように伝達されるのかが不明な場合が多いために、原因遺伝子の特定を難しくしています。散発的に生じる重症例では、原因となる変異が胚発生時に生じ、生殖細胞系での伝達を介さない de novo 変異であるとされています。

▼こんな方におすすめです!
・てんかん研究に興味のある方
・遺伝性疾患の原因遺伝子を調べたい方
・低頻度な変異を検出したい方

▼もくじ

  • Ion AmpliSeq™ On-Demand パネルを用いた変異解析
  • Ion AmpliSeq™ HD テクノロジーを用いた deep sequence により、低頻度な変異を検出
  • てんかん関連遺伝子解析の展望
  • まとめ
  • 次世代シーケンサ(NGS)入門
  • 参考文献

Ion AmpliSeq™ On-Demand パネルを用いた変異解析

デンマークにあるAmplexa Genetics の研究者は散発的なてんかんの重症例について研究しています。彼らの結果は、孤発性のてんかんは実際には de novo 変異によるものではなく、モザイク現象によって両親から伝達されている可能性を示唆すると見られています。モザイク現象とは、単一の受精卵から発生した個体内で、異なる遺伝子型をもつ細胞が2つ以上存在することです。

Amplexa の研修者であるM.Sc. Line Larsen は、2018年のESHG (European Society of Human Genetics) において、次世代シーケンサでdeep sequence を行うことによりde novo 変異をもつ患者46名の親の遺伝子型を調査した初期の研究を発表しました。彼らは、Ion PGM™ system でIon AmpliSeq™ On-Demand パネルを使用して既知のてんかん原因遺伝子を含む12遺伝子の変異をシーケンス解析しました。平均リードデプスを6,600 カバレッジ 取得することで、通常の全エクソンシーケンスの手法よりも詳細に家族間の遺伝子変異を調べることに成功しました。

Ion AmpliSeq™ HD テクノロジーを用いた deep sequence により、低頻度な変異を検出

de novo 変異と考えられていたてんかん関連変異46例中4例で、モザイク現象が検出されました。モザイク現象の割合は、調査した両親間で0.8% から 29% と大きく異なっていました。ある父親は、最も極端なケースであるにも関わらず、軽度な症状を示しました。
Ion AmpliSeq™ テクノロジーはPCRベースの増幅方法を使用しています。Amplexaのラボでは、モザイク変異がライブラリ調製時のPCRエラーに疑われる可能性を排除したいと考えました。
そのために、彼らはIon AmpliSeq™ HDテクノロジーを使用して再度シーケンスを行い、前述の家族間の遺伝子変異を解析しました。Ion AmpliSeq HD™ テクノロジーは、Ion AmpliSeq™ テクノロジーとは独立した手法で、分子タグ技術を使用して、PCRに起因する問題を排除します。新しいIon AmpliSeq HD™ テクノロジーは、ゲノムDNA に含まれる変異を頻度0.1% まで検出でき、非常に検出下限 (LOD) が低いという利点があります。彼らはIon GeneStudio™ S5 Prime システムでIon 550™ chip を使用して、Ion AmpliSeq HD™ を用いたシーケンスを行いました。
Ion AmpliSeq™ On-Demandパネルを用いた結果と同様に、Ion AmpliSeq™ HDテクノロジーにより、調査した症例のうち9%が、親のモザイク現象と一致することが確認されました (図1)。
図1 親のゲノムDNA においてレアな変異を示すてんかん関連de novo 変異4例のシーケンス結果。Ion AmpliSeq™ テクノロジーを用いた結果とIon AmpliSeq™ HDテクノロジーを用いた結果には相関がありました。

てんかん関連遺伝子解析の展望

「Ion AmpliSeq™ On-Demand パネルと同様に、Ion AmpliSeq™ HD テクノロジーは、カスタムパネルの設計が簡単です。そのため、wet ラボでの作業は迅速かつ簡単で、サンプル抽出からわずか3日で結果を取得可能です。0.1% のLOD を得るには50,000 カバレッジの深いリードデプスが必要で、0.5% のLOD の場合には、15,000 リードが必要です。」とLine Larsen 氏は述べています。
彼らは、この新しいテクノロジーを使用して、以前に検出された変異のすべてを0.2% のLOD で検出することに成功しました。彼らの発見は、親のモザイク現象が早期発症型の難治性てんかんにおける遺伝的な伝達メカニズムであり、複数の異なる遺伝子で起こりうることを裏付けると考えられます。
また、彼らはIon AmpliSeq™ HD テクノロジーを使用した研究を続けており、この高感度なライブラリ調製法でさらにモザイク現象を発見できるか検討をしています。
「今度は、異なる組織からDNAを抽出してサンプルを収集し、以前は検出されなかったモザイク現象を検出できるか検討する解析を行いたいと思っています。新たに検出されたモザイク現象は、代替技術 (ddPCR) で検証し、de novo 変異をもつ多くの患者の親を分析します。」とLarsen は結論付けました。

まとめ

てんかんにおけるモザイク現象と低頻度な変異を解析するIon AmpliSeq HD テクノロジーについてより知りたい場合は、Amplexa が研究を紹介するWebセミナーをご覧ください。
Ion AmpliSeq™ On-Dmandパネルの詳細は、ここから確認できます。ヒトの遺伝学における変異解析については、こちらをご覧ください。
Ion AmpliSeqテクノロジーはブログ「遺伝子パネルがわかる!Ion AmpliSeq テクノロジーのすべて」をご覧ください。

次世代シーケンサ(NGS)入門

次世代シーケンスの原理や何ができるかがよくわからない、または自分の研究領域にどのように活用できるかわからないという方向けに、次世代シーケンスの基本や各研究領域に特化したアプリケーションをまとめました。リンク先から、それぞれの領域に応じたページをご覧いただけます。

詳細を見る

「モザイク変異をもつ親からの変異伝達を調べる超高感度なターゲットNGS 遺伝子パネルの使用」は、2018 年6月のESHG でデンマークのLine H.G. Larsen, M.Sc., Amplexa Genetics A/S, により発表されました。

参考文献

[1] . Thomas & Berkovic (2014)
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。
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