ミトコンドリアゲノムDNAを使ったヒト個人識別

陳旧試料のヒト個人識別はどのような方法があるでしょう。STRタイピング法では不十分な場合はないでしょうか。そこで今回は、ミトコンドリアゲノムDNA解析について、ご紹介いたします。

▼こんな方におすすめです!
・陳旧試料の血縁解析
・ミトコンドリア全ゲノム解析
・ミトコンドリアゲノムを用いた人類遺伝学研究

陳旧試料の課題

老朽したあるいは焦げ跡のある骨片、埋没して数年から数十年の歯、一本の毛幹などの小さな遺物があるとします。どのようにすると、これらの遺物を家族と関係づけられるでしょうか。このような少量および陳旧試料において、核DNAは低分子化しているため、多くの場合、現在のSTRタイピング法では有用な結果を得るには不十分です。

ミトコンドリアゲノムの特徴

1990年代初頭以来、ミトコンドリアDNA(mtDNA)解析は、これら陳旧試料のもっとも困難なケースに使用されてきました。
人間の細胞には核DNAのコピーが2つしか含まれていませんが、小さなmtDNAゲノム(16.5 kb)が約500〜1000コピー含まれている可能性があります。今日まで大半のmtDNA解析には、制御領域(CR)、高度可変領域(HV-I、HV-IIおよびHV-III)の1.2 kbpに焦点を当て、ヒト個人識別としてサンガーシーケンスを用いてきました。ただし制御領域解析では、mtDNAゲノムの母性遺伝と遺伝子組み換え変異により、決定的な同定が行われない可能性があります。

ミトコンドリア全ゲノム解析

Applied Biosystems™ Precision ID NGSシステムApplied Biosystems™ Precision ID mtDNA Whole Genome Panelは、独自のタイリングアプローチを使用してミトコンドリアゲノム全体をカバーします。これによりmtDNAゲノム解析において効果的な識別が可能となり、よりユニークなハプロタイプを提供します。
Bodnerらは、法医学的アプリケーションのためのmtDNA全ゲノムシーケンスの有用性を示しています。リンクの動画ビデオでは、インスブルック医科大学の法医学研究所のWalther Parsonが、mtDNA分析を使用して重要な識別を行うことで、彼の研究室が取り組んだいくつかのケースについて説明します。

まとめ

・ミトコンドリアゲノムは陳旧試料において効果的な結果を期待できます。
Precision ID mtDNA Whole Genome Panelはミトコンドリア全ゲノムを効果的に解析することができます。

ミトコンドリアゲノムDNA解析についてのお問い合わせは、お気軽に当社のテクニカルサポートまでご相談ください。

参考文献リスト:
Bodner M., et al (2015) Forensic Science International: Genetics Vol. 15, P21-26
Helena, the hidden beauty: Resolving the most common West Eurasian mtDNA control region haplotype by massively parallel sequencing an Italian population sample
DOI: https://doi.org/10.1016/j.fsigen.2014.09.012

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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