核酸定量は分子生物学や遺伝子研究において欠かすことができないステップです。その中でも、Thermo Scientific™ PicoGreen™色素などを用いた蛍光核酸定量は、その感度の高さから広く利用されています。
蛍光核酸定量では、検量線を作成し、それを利用してサンプルの濃度を求めます。従来この検量線は直線回帰を用いて作成されることが多いですが、実際には直線回帰では不十分な場合があります。この記事では、4パラメーターロジスティック(4PL)モデルを用いることの利点についてご紹介します。
直線回帰の限界
直線回帰は、検量線を作成する際に最もシンプルで一般的な方法です。
しかし蛍光核酸定量の場合、実際の測定データは必ずしも直線的ではありません。特に低濃度や高濃度の範囲では、蛍光強度と核酸濃度の関係が非線形になることが多いです。これにより、直線回帰に基づく検量線では、正確な濃度の推定が難しいケースがあります。
4PLのキホン
4PLは、以下の4つのパラメーターを用いてデータをフィッティングする方法です。
- a =上方漸近線
- b = スロープパラメーター(傾き)
- c = 縦軸が(a+d)/2である中間点の横軸
- d =下方漸近線

データの中央部分で急激に変化し、端範囲においては変化が緩やかになるシグモイド曲線を描くことができます。非線形の現象を表すのに適したモデルです。
直線回帰と4PLを比較してみた
Invitrogen™ Quant-iT™ dsDNA BR Assay KitのスタンダードのRFUを利用して、直線回帰と4PLで検量線を作成してみました。

上の図を見ても、直線回帰だと実測値と検量線が乖離しているポイントがある事が分かります。相関係数(R2)を確認しても、直線回帰のR2は0.996、4PLのR2は0.999とフィッティングに差があることが示されました(どの程度のフィッティングが求められるかは、実験系によります)。
実測値にフィットした検量線が作成できていれば、直線回帰でも、また4PL以外の曲線モデル(二次方程式など)も問題ありません。私たちの経験から、4PLは蛍光核酸定量のいろいろな形状のプロットに対応できる汎用性の高いモデルであるため、本ブログでご紹介しました。
まとめ
直線回帰ではフィットさせることができないケースでも、4PLモデルでは実測値に近い検量線を作成することができます。これにより、広い濃度レンジにおいて精度の高い濃度推定が可能になります。次回蛍光核酸定量を行う際は、よろしければ4PLモデルも試してみてください。
当社では、蛍光核酸定量に関するTipsを紹介するオンラインセミナーを開催しています。またRNA精製やqPCRなどを、実際に実験(実習)を行いつつ学べるハンズオントレーニングも各種開催しています。その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!
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