はじめに
タンパク質の沈殿はサンプルの濃縮や共存物質(阻害物質)の除去に広く利用されています。沈殿法としては硫酸アンモニウムによる沈殿がよく知られますが、総タンパク定量や質量分析でも沈殿法による阻害物質の除去が必要になることがあります。タンパク質の沈殿法としては、さまざまな方法が知られていますが、ここでは各法の特長を含めて簡単にご紹介していきます。
沈殿法の種類と原理
沈殿法には、塩析、有機溶媒処理、酸処理、水溶性ポリマー処理などがあります。回収したタンパク質の用途(アプリケーション)により再溶解で使用できるバッファーが異なりますので、適切な沈殿法を選択することが必要です。たとえば、回収後もタンパク質の活性を保持したい場合には、タンパク質の変性を最小限に抑える沈殿剤(硫酸アンモニウム等のカオトロピック塩、ポリエチレングリコールやデキストランなどの水溶性ポリマー)が利用されます。一方で、回収後の活性が不要な場合には、より変性的な沈殿剤(TCAや塩酸などの酸、アセトンやアルコールなどの有機溶媒)が利用されます。
電気泳動や質量分析など回収後の活性を必要としないアプリケーションでは、再溶解に問題が出ない程度の変性的な沈殿剤を用います。たとえば、SDS-PAGE電気泳動ではサンプルバッファーを添加して95℃に加熱することで多くの場合は再溶解が可能です。質量分析の前処理ではTCA/アセトン沈殿で還元剤やアルキル化剤の除去をおこなうことがありますが、回収したタンパク質ペレットの再溶解には6M尿素の添加と希釈(終濃度1M尿素)、さらに一晩のトリプシン消化が必要になることもあります。
| 沈殿剤の種類 | 代表的な沈殿剤 |
| 塩 | 硫酸アンモニウム |
| アルコール | エタノール、プロパノール、メタノール |
| 有機溶媒 | アセトン、クロロホルム |
| 酸 | トリクロロ酢酸、塩酸 |
| 水溶性ポリマー | ポリエチレングリコール、デキストラン |
最後に
次回はいくつかの沈殿法をプロトコルとともにご紹介します。
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