前回はリアルタイムPCRで測定に使われる蛍光色素についてお伝えしましたが、今回と次回はいよいよ、その測定を正確にする秘訣を公開します。
リアルタイムPCRで使われる蛍光色素は蛍光スペクトルが近く物理的に分離するのが難しいため、クロストークの影響が避けられないと、前回テクニカルサポート担当者に教えてもらいました。そこで弊社のリアルタイムPCR装置では、検出した蛍光シグナルの構成要素を分離し、区別する解析アルゴリズムを採用しています。これは、「マルチコンポーネントシステム」と言います。具体的にはどのように働いているのでしょうか?
まず、リアルタイムPCR装置で測定する蛍光シグナルはどんなものか見ていきましょう。PCRプレートのそれぞれのウェルの中には、複数の蛍光スペクトルが入っており、蛍光シグナルはすべてのスペクトルの和であるComposite spectrumとして検出されます。つまり、図の例では、以下のようになります。
測定された蛍光シグナル = FAM™ Dye + TAMRA™ Dye + ROX™ Dye + バックグラウンド
マルチコンポーネントシステムは蛍光色素単独の正確なシグナルを算出するのですが、そのために欠かせないのがキャリブレーション。弊社のリアルタイムPCR装置は、納品時に設置場所で1台ごとにキャリブレーションを行い、FAM™ Dye 、TAMRA™ Dye 、ROX™ Dye など各蛍光色素のraw dataをウェルごとに読み込んでいます。そして実際に測定の際、マルチコンポーネントシステムがrow dataを使い、上記の方程式の解を求めて、それぞれの正確なシグナルをはじき出す、というわけです。
なるほど、このような解析アルゴリズムを使った蛍光補正機能があるから、FAM™ Dye とVIC® Dyeのような蛍光色素を区別できるのですね。
ところで、図をご覧になって、なぜROXを使っているのだろう?と思われた方はいらっしゃいませんか?実はこのROXは、正確に測定するために一役買っているんです。
詳細は次回に続きます!
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