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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 同一反応で2種類以上の遺伝子を検出する、マルチプレックスリアルタイムPCRの利点とは?

同一反応で2種類以上の遺伝子を検出する、マルチプレックスリアルタイムPCRの利点とは?

Written by LATB Staff | Published: 03.16.2017

マルチプレックスPCRは、同一反応における2種類以上の遺伝子配列を増幅し特異的に検出する方法です。リアルタイムPCRマルチプレックスは、定性または定量的結果を得るために使用されます。今回はマルチプレックスリアルタイムPCRの概要と利点についてご紹介します。

▼もくじ [非表示]

  • マルチプレックスの概要
  • マルチプレックスの利点
  • マルチプレクシング用装置
  • マルチプレクシングに推奨されるケミストリ
  • マルチプレックス反応用色素の選択
  • マルチプレックスPCRにおけるバイアス
    • デュプレックスシナリオ1
    • デュプレックスシナリオ2
    • デュプレックスシナリオ3
  • マルチプレックスプライマー相互作用
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マルチプレックスの概要

マルチプレックスPCRは、同一反応における2種類以上の遺伝子配列を増幅し特異的に検出する方法です。マルチプレックスPCRを成功させるためには、ゲル電気泳動などのエンドポイント検出法によって目的のすべての配列が検出されるのに十分な増幅産物が生成されなくてはなりません。マルチプレックスPCRは、定性的結果を得るために使用されます。

リアルタイムPCRマルチプレックスは、定性または定量的結果を得るために使用されます。リアルタイムPCRマルチプレクックスを成功させるためには、目的の配列に関して十分なシグナルが生成されなくてはなりません。

「プレックス」という表現は、多重項の表現に使用されます。シングルプレックスは単一の遺伝子配列を増幅するようにデザインされたアッセイです。デュプレックスは、2個の遺伝子配列を増幅するようにデザインされたアッセイです。最も一般的なマルチプレックスはデュプレックスであり、ターゲット遺伝子のアッセイを、対照または標準化遺伝子と同一のウェルで行われます。

いくつかの市販のリアルタイムPCRキットがマルチプレックス用にデザインされ検証されています。例えば、Applied Biosystems™ MicroSEQ™ E. coli O157:H7 Kit は、標的とするE.coliアッセイを内在性陽性対照とともにマルチプレックスします。研究に応用する際には、研究者自身がマルチプレックスするアッセイを選択し、マルチプレックスの検証も行う必要があります。マルチプレックスアッセイの構築を検討する場合には、マルチプレックスの利点と、その検証を行うのに必要な検討がどの程度必要か熟考することが必要です。

マルチプレックスの利点

マルチプレックスの3つの利点は、スループットの増加(プレート当たりより多くの試料がアッセイ可能)、サンプル使用量の減少および試薬使用量の減少です。これらのメリットは実験中のターゲット数によります。例えば、単一のターゲットアッセイの定量的実験においては、ターゲットと内在性コントロールとともにデュプレックスとしてランできることにより、スループットが増加し、試料および試薬の使用量を2倍減少させることが可能です。しかし、2個のターゲットアッセイが含まれる定量的実験の場合には、すべてのデータを得るために、ターゲット1とノーマライザー、およびターゲット2とノーマライザーという2種類のデュプレックスが必要です。この場合、スループットは増加しますが、試料および試薬の使用量の減少は1.5倍に抑えられます。これら3つの利点は、実験に使用する遺伝子配列の数の関数として以下の式で表現されます。

改良倍数 =( 遺伝子数)/ (遺伝子数 – 1)

ターゲットと内在性コントロールとマルチプレックスするもう一つの利点は、ピペッティングのエラーを最小化できることです。同一ウェルからのターゲットと内在性コントロールのデータは、同一の試料添加操作に由来しているため、ピペッティングのエラーはターゲットおよびノーマライザーの結果に同等に影響していると考えられます。この利点を利用するためには、反復精度を計算する前にターゲットデータを同一ウェルの標準化データで標準化することが必要です。シングルプレックス法により解析された(ウェルベースの標準化なし)マルチプレックスデータと、マルチプレックス法により行われた解析との比較により、シングルプレックスのエラーにもよりますが、マルチプレックス精度の利点が極めて大きくなる可能性のあることが示されています。例えば、シングルプレックスのエラーが最小である試料においては、マルチプレックス精度の利点も最小となります。

マルチプレックス精度の利点は、より高い精度を必要とする定量的実験においては特に重要です。例えば、コピー数変異の実験において、1コピーの遺伝子から2コピーを識別するのは2倍の変化であり、良好な精度が必要です。しかし、2コピーから3コピーを識別するのはわずか1.5倍の変化であり、さらに優れた精度が要求されます。マルチプレクシングは、このようなタイプの実験に必要とされる精度を得るために推奨される一つの方法です。

マルチプレクシング用装置

マルチプレックスアッセイでは通常同一のウェルに複数の色素が含まれています。リアルタイムPCR装置は同一のウェルに存在するこれらの異なる色素を正確に測定することができる必要があります。一方の色素のシグナルが他方の色素のシグナルと比較して極めて高い場合においても、各色素に関して特異的に測定できることが必要です。

マルチプレクシングに推奨されるケミストリ

リアルタイムPCRマルチプレクシングに最適な蛍光ケミストリは、マルチプレックスにおいて各遺伝子配列を検出するために、それぞれ異なった色素を使用できるものです。ほとんどのマルチプレクシングは、TaqManプローブベースのアッセイに代表される、多重色素、高特異性ケミストリを用いて行われています。

RNAを含むマルチプレックスアッセイにおいては、一般的に1-Step RT-PCRよりも2-Step RT-PCRが推奨されます。1-StepRT-PCRでは、逆転写とPCRに同濃度のプライマーが必要となり、マルチプレクシングにおけるプライマー濃度の最適化が制限されます。2-Step RT-PCRにおいては、逆転写に影響を及ぼすことなく、マルチプレクシング用にプライマー濃度の最適化を検討することが可能です。

マルチプレックス反応用色素の選択

マルチプレックスリアルタイムPCRを行う場合、検出する各遺伝子には、それぞれ異なるレポーター色素を用いる事が必要です。選択したレポーター色素を同一のウェル内においてリアルタイムPCR装置によって励起し正確に検出することが必要です。メーカーは各装置について推奨する色素を紹介しています。Applied Biosystems™ リアルタイムPCRマスターミックスには赤色パッシブレファレンス色素(ROX色素)が含まれています。青色のみを励起する装置は、このROX色素をパッシブレファレンス色素として励起させることができますが、青色励起は一般的に赤色色素をレポーターとして使用するには十分ではありません。

レポーター色素はターゲット遺伝子や遺伝子産物の種類によって選択する必要はありませんが、適切な色素の選択を行うことにより、マルチプレックスアッセイを簡素化することが可能です。例えば、Invitrogen™ FAM™ 色素は、TaqManプローブで使用される最も一般的なレポーター色素です。当社では、ターゲットアッセイ用のレポーターとしてFAM色素を選択し、内在性コントロール用のレポーターとしてInvitrogen™ VIC™ 色素を選択することをお勧めしております。この組み合わせにより、FAM色素標識をした複数のターゲットと、内在性コントロール用の、VIC 色素の2種類の色素を組み合わせたマルチプレックスアッセイをすることが可能です。トリプレックスアッセイを行う場合には、3番目の色素としてInvitrogen™ NED™ 色素をFAM色素およびVIC 色素とともに使用できます。NED色素を使用する場合には、同一のウェルにTAMRA色素が存在しないようご注意ください。

マルチプレックスPCRにおけるバイアス

マルチプレックスPCRでの偏り(バイアス)は、マルチプレックスアッセイにおいて起こり得る好ましくない現象で、バイアスがかかるとより多く存在する遺伝子がDNAポリメラーゼによって偏って増幅され、存在量の少ない遺伝子の増幅を抑制してしまいます。バイアスへの対処法はより多く存在するターゲットへのPCRプライマー濃度を減少させることで、「プライマーリミット」と呼ばれています。制限をかけたプライマー濃度は、少なくとも指数関数的に増幅し、且つPCR産物が蓄積し存在量の少ないターゲットの増幅を阻害してしまう前にプライマーが枯渇する程度の濃度である必要があります。

マルチプレックスアッセイをする場合には、PCR反応における各遺伝子や遺伝子産物の絶対DNA量またはcDNA量に基づいて、どの遺伝子がバイアスを起こす可能性があるかを確認する必要があります。デュプレックスにおいて最も一般的な3つのシナリオを以下に示します。

デュプレックスシナリオ1

これが最も一般的なシナリオです。より多く存在する遺伝子または遺伝子産物がすべてのサンプルにおいて同一の場合。プライマーリミットは、最も多く存在するターゲットに対してのみ行うことが必要です。例えば、真核生物の総RNAの20%に相当する18S rRNA が内在性コントロールであるとします。18S rRNA 由来のcDNAはすべてのサンプルにおいて、どのmRNA由来のcDNAよりも多く存在します。このため、18S rRNAアッセイのみプライマーリミットを行うことが必要です。

デュプレックスシナリオ2

2つの遺伝子がすべてのサンプルにおいてほぼ同一量存在する場合。一般的に、Thresholdが同じであると仮定した場合、2つの遺伝子間のCt の差が3以上ある場合は遺伝子量は同等といえません。コピー数多型などのゲノムDNA解析の多くはこのシナリオにあてはまります。シナリオ2においては2つの遺伝子がほぼ同時に指数関数的増幅ラインを示すため、プライマーリミットは必要ありません。

デュプレックスシナリオ3

このシナリオにおいては、いずれの遺伝子および遺伝子産物も極めて多く存在する可能性があります。この場合いずれのアッセイもプライマーリミットの必要があります。

マルチプレックスプライマー相互作用

マルチプレックスアッセイに関するもう一つの注意点は、異なるアッセイ用プライマー間におこる相互作用です。マルチプレックス中のアッセイ数の増加によりプライマーペアの数も増加するため、それぞれのプライマー同士の反応の相互作用のリスクも増大します。例えば、4つのPCRプライマーを含むデュプレックスアッセイにおいては、6つのプライマーペアが生じる可能性があります。6つのPCRプライマーでは、15のプライマーペアが生じる可能性があります。各アッセイは、シングルプレックスにおいては良好な性能を示しますが、マルチプレックスアッセイにおいてはプライマー同士の相互作用が競合産物を生成し、増幅を抑制する可能性があります。プライマー同士の相互作用は、マルチプレックスに使用されるアッセイが相同配列を含む場合に生じる可能性があります。プライマー相互作用が起こる場合は、異なるアッセイをマルチプレックスに使用することがその対処法となります。

 

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