今回は、リアルタイムPCR産物の検出につかうケミストリにはどんなものがあるのか、見ていきます。
弊社のリアルタイムPCRでは、「SYBR® Green I」 、「Taqman®プローブ」という2種類のケミストリを用いた検出方法を提供しています。
SYBR® Green I
SYBR® Green Iは、2本鎖DNAに入り込むと蛍光を発する蛍光色素です。この蛍光色素には、2本鎖DNA配列のみを標識する特異性はありません。そのため、プライマーダイマーや非特異的なPCR産物といった副産物にも結合し、蛍光シグナルを示してしまうことがあります(図)。この問題を防ぐためには、目的のPCR産物のみを特異的に増幅するよう、プライマー設計と濃度の条件検討をおこなう必要があります。
Taqman®プローブ
Taqman®プローブは20~30merの長さのオリゴヌクレオチドで、相補的な配列を特異的に認識します(5’ヌクレアーゼアッセイ)。プライマーダイマーや非特異的なPCR産物といった副産物ができてしまっても、プローブの配列特異性が副産物の影響を最小限にしてくれます。
両者の違いをまとめましょう。SYBR® Green はプライマーだけで配列を識別するのに対し、Taqman®プローブ法はプライマーとTaqman®プローブの両方で配列を認識します。Taqman®プローブは、より高い特異性でPCR産物を検出できる製品と言えるのです。
とはいえ、実験によってはSYBR® Green Iをつかいたいという方もいらっしゃいます。SYBR® Green Iを利用する上でのアドバイスはありますか?
SYBR® Green Iを使う場合には、融解曲線解析プログラムを利用いただくと安心です。このプロクラグムは弊社のリアルタイムPCR装置に付属し、プライマーの特異性を確認できます。もちろん、PCR産物をゲル上で泳動することも、確実に確認できる方法です。
サンプル内に非常に似た配列が存在する場合や、スプライシングバリアントを区別する必要がある場合には、Taqman® MGBプローブを用いることをお勧めします。とくに、SYBR® Green Iで良い系が構築できずに苦労されている方は、ぜひ一度、Taqman®プローブを試してみて下さい。SYBR® Green IからTaqman® MGBプローブに乗り換えることで、結果的にコストを安くできるかもしれません。
以前、この講座でご紹介したTaqMan® Gene Expression Assaysでも、Taqman® MGBプローブを使用しています。プローブの選択によっては、プライマーの設計やPCRの条件検討をしなくても確実な結果を得られるというわけです。
次回は、内在性コントロールについて考えます。
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