普段、お客様からいただくリアルタイムPCRのご質問について、考えられる原因とその解決方法をまとめました。リアルタイムPCRでお困りの際はぜひ参考にしてください!
▼もくじ [非表示]
- Q: 一定量のヒトゲノムDNAに含まれるコピー数はいくつですか?
- Q: リアルタイムPCRアッセイの効率に配慮が必要な理由は何ですか?
- Q: 私の行った実験では、より濃度の高いテンプレートからより効率の低い増幅曲線が得られました。希釈試料から得られた傾きは–3.4、R2値は0.99でしたが、高濃度の試料から得られた傾きは–2.5、R2値は0.84でした。
- Q: 効率の異なるPCR反応間のCt値を比較することは可能でしょうか?
- Q: クエンチャーとは何ですか? なぜクエンチャーをリアルタイムPCRに使用するのですか?
- Q:どのような場合に、2-Stepではなく1-StepのqRT-PCRを使用するのでしょうか?
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Q: 一定量のヒトゲノムDNAに含まれるコピー数はいくつですか?
1ゲノムコピー = 3×109bp
1bp = 618g/mol
1ゲノムコピー =(3×109bp)×(618g/mol/bp)
= 1.85×1012g/mol =(1.85×1012g/mol)× (1 mole/6.02 × 1023(アボガドロ数)
= 3.08×10-12g
各体細胞には6.16pg(精子および卵細胞には3.08pg)の DNAが含まれています。3.08pgのヒトDNAには、すべての非反復配列が1コピー含まれています。したがって、 100ngのゲノムDNAには、100,000pg/3.08pg = ~33,000コピーが、すなわち1ngのDNAには330コピーが含まれます。
Q: リアルタイムPCRアッセイの効率に配慮が必要な理由は何ですか?
例えば2つの遺伝子の発現を比較したい場合(例えば、ノーマライザー遺伝子を使用する場合)には、測定された Ct 値が PCR 試薬中に存在する汚染物質による影響を受けていないということ、あるいは最適化が行われていないアッセイに起因するものではないということを確証するためにPCR効率を確認しておくことが必要です。
Q: 私の行った実験では、より濃度の高いテンプレートからより効率の低い増幅曲線が得られました。希釈試料から得られた傾きは–3.4、R2値は0.99でしたが、高濃度の試料から得られた傾きは–2.5、R2値は0.84でした。
試料中に含まれる何かがPCRを阻害していると考えられます。希釈された試料からより高い効率が得られたのは 、阻害物質(塩またはその他の成分)が、阻害効果を示す濃度以下に希釈されたためです。この現象に関する説明は以下に示す参考文献などに記載されています。
- Ramakers C, Ruijter JM, Deprez RH et al.(2003) Assumption-free analysis of quantitative real-time polymerase chain reaction (PCR) data. Neurosci Lett 339:62–66.
- Liu W and Saint DA(2002) A new quantitative method of real time reverse transcription polymerase chain reaction assay based on simulation of polymerase chain reaction kinetics. Anal Biochem 302:52–59.
- Bar T, Ståhlberg A, Muszta A et al.(2003) Kinetic outlier detection (KOD) in real-time PCR. Nucleic Acids Res 31:e105.
Q: 効率の異なるPCR反応間のCt値を比較することは可能でしょうか?
効率の異なるPCR反応間のCt値を比較することはできません。その理由は、∆∆Ctの算出がPCR効率は同等であるという仮定の下に行われているためです。このため、未知の試料の定量を行う前にシステムの最適化を行うことが必要です。または検量線法を用いて効率を補正した定量を行うことが可能です。
Q: クエンチャーとは何ですか? なぜクエンチャーをリアルタイムPCRに使用するのですか?
クエンチャーとは、プライマーまたはプローブに結合させた分子で、プライマーまたはプローブに結合している蛍光色素からの発光を消光します。クエンチャーは一般的にプローブをベースとするアッセイに使用され、同一のオリゴに結合している蛍光色素から発光される蛍光を消光したりあるいはその波長を変化させたりします。クエンチャーのこの作用は一般的にはFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)により生じます。蛍光色素が励起されるとそのエネルギーはクエンチャーに転移され、クエンチャーが異なる(より長い)波長で発光します。一般的なクエンチャーには、TAMRA™色素、および非蛍光性のクエンチャーなどがあります。
Q:どのような場合に、2-Stepではなく1-StepのqRT-PCRを使用するのでしょうか?
2-Step qRT-PCRは、単一のRNA試料から複数の遺伝子発現を検出するために広く使用されています。 2-Step qRT-PCRでは、さらに将来の解析用にcDNAを保存しておくことが可能です。しかし、多数の試料を解析する場合には1-Step qRT-PCRのほうが操作は容易で、cDNA合成と増幅の間にチューブを開ける必要がないため、キャリーオーバーによる汚染を最小限に抑えることが可能です。すべてのcDNA試料を増幅に使用するため、1-Step qRT-PCRはより感度が高く、わずか0.1pgのトータルRNAでも解析が可能です。
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