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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】リアルタイムPCR ランモードで結果に差がでるか比較してみた

【やってみた】リアルタイムPCR ランモードで結果に差がでるか比較してみた

Written by LatB Staff | Published: 07.04.2023

▼もくじ

  • はじめに
  • 材料と方法
  • 結果と考察
  • Fastモード対応試薬のご紹介
  • まとめ

はじめに

当社のリアルタイムPCR装置にはFastモードとStandardモードの2種類のランモードがあります。熱変性のステップやアニーリング・伸長反応ステップの反応時間と温度の上げ下げのスピードが異なります。そのためFastモードでは約30分、Standardモードでは約1時間半とラン時間が大きく変わります。Fastモードはラン時間が短い反面、短い反応時間で問題がないのか不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。実際に「伸長反応20秒で本当に大丈夫?」とご質問をうけることもあります。今回の記事ではFastモードの試薬をあえてStandardモードでランし、結果に差があるのか確認してみました。

こんな方にお勧めです。

  • ランモードの選択に迷っている方
  • Fastモードで十分にPCR反応が進んでいるのか不安な方
  • Fastモードの試薬を検討されている方

材料と方法

Fastモード用試薬としてApplied Biosystems™ TaqMan™ Fast Advanced Master Mixを使用しました。製品のプロトコルに従い20 µL容量の反応液を調製しました。50 ng/wellに調製されたcDNAを4倍もしくは3倍希釈し計6点の希釈系列を作成、鋳型として使用しました。レプリケートは3としました。Applied Biosystems™ TaqMan™ Gene Expression Assay (20x) をもちいてGAPDH、ACTB、IL-8、COL1A1、ACTA2、ALDHA1の6つの遺伝子を測定しました。反応条件は下記の通りです(図1、図2)。装置はApplied Biosystems™ QuantStudio™ 7 ProリアルタイムPCRシステムを使用しました。

Standardモードのプログラム ラン所要時間…1時間21分

Standardモードのプログラム

図1.Standardモードのプログラム

Fastモードのプログラム ラン所要時間…32分

Fastモードのプログラム

図2.Fastモードのプログラム

結果と考察

それでは早速結果を見てみましょう。
各ターゲット遺伝子ごとにcDNA量を横軸、Ct値を縦軸にプロットしました。Standardモードの青いプロットとFastモードのオレンジのプロットは非常によく一致しました(図3)。テクニカルレプリケートの3ウェルの平均値を比較しても差はわずかでした(表1)。

Ct値のプロット図

図3.Ct値のプロット図

表1.各サンプルにおけるCt値の平均値
ACTB S1 S2 S3 S4 S5 S6
Fast 17.3 19.1 21.2 23.3 25.4 27.5
Standard 17.0 19.2 21.3 23.3 25.4 27.5
GAPDH S1 S2 S3 S4 S5 S6
Fast 16.9 19.0 21.0 23.2 25.3 27.5
Standard 16.8 18.9 20.9 23.1 25.2 27.4
IL-8 S1 S2 S3 S4 S5 S6
Fast 24.5 26.7 28.8 30.8 33.0 34.9
Standard 24.2 26.4 28.3 30.4 32.3 34.8
COL1A1 S1 S2 S3 S4 S5 S6
Fast 22.8 24.4 26.0 27.6 29.4 30.8
Standard 23.2 24.8 26.4 28.0 29.6 31.2
ACTA2 S1 S2 S3 S4 S5 S6
Fast 25.2 26.8 28.6 30.3 32.0 33.5
Standard 25.3 26.9 28.6 30.3 31.9 33.7
ALDH1A1 S1 S2 S3 S4 S5 S6
Fast 23.7 25.4 27.1 28.7 30.3 31.9
Standard 23.7 25.4 27.1 28.6 30.2 32.1

検量線の精度をあらわすRの2乗値や増幅効率について非常に近い値となりました(表2)。反応時間が短縮されたFastモードでもStandardモードと同等の結果を得ることができました。FastモードでもPCR反応が十分に進むと分かりました。
※お使いのプライマーセット、TaqMan Assayによってはランモードによる影響がでる可能性もあります。

表2.検量線から算出されたPCR効率とR2値
Fastモード Standardモード
PCR効率(%) R2 PCR効率(%) R2
ACTB 95.99 1.000 93.95 1.000
GAPDH 92.28 1.000 92.12 1.000
IL-8 94.44 0.998 95.34 0.995
COL1A1 99.02 1.000 96.26 0.997
ACTA2 92.41 0.994 91.88 0.998
ALDHA1 94.25 0.997 92.12 0.999

Fastモード対応試薬のご紹介

最後に、当社でおすすめしているFastモード対応のMaster Mixをご紹介します。TaqMan Assay実験系のおすすめ製品で、検出感度、精度、ダイナミックレンジ、特異性に優れます。今回の実験でも使用しました。
TaqMan Fast Advanced Master Mix

SYBR™ Green実験系のおすすめ製品です。Fastモードに対応しており、特異性も高い試薬です。
Applied Biosystems™ PowerUp™ SYBR™ Green Master Mix

まとめ

リアルタイムPCRのFastモードとStandardモードのどちらを使っても結果に差が出ないことがわかりました。もし、Fastモード対応の試薬をお使いの場合は、ラン時間を1時間ほど短くできますので、ぜひFastモードで測定してみてください。

当社ではRNA抽出やリアルタイムPCR、他にも細胞培養、ウェスタンブロッティングなど、実際に実験(実習)を行いつつ学べる各種ハンズオントレーニングを開催しています。その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!

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研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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