シーケンス解析のトラブルシュート:シグナルのドロップとトップヘビーデータ

シーケンス解析により解読できた長さが予想より短い場合、さまざまな原因が考えられます。より長く解読するための対処法は、原因により異なるため、まずRaw Dataを確認し、原因を考察する必要があります。Applied Biosystems™ Sequencing AnalysisソフトウエアでのRaw Dataの確認手順は、こちらをご参照ください。
本ブログでは、Raw Dataのシグナルが予想より早い段階でドロップした場合と、波形序盤のシグナル強度が高くトップヘビーな状態となった場合について、考えられる原因と対処法をご紹介します。

波形の途中でシグナルがドロップしている

Raw Dataのシグナルが予想より早い段階でドロップした場合(図1)、解析領域の塩基配列が原因でDNAの伸長が停止した可能性が考えられます。この場合、熱処理や変性剤の添加などが対処法となります。下表に、予測される原因と対処法をまとめます。

図1. シグナル強度が急激に低下したデータ例 (Raw Data)

図1. シグナル強度が急激に低下したデータ例 (Raw Data)

予測される原因 対処法
シーケンス反応において、テンプレートの特定領域で、DNA ポリメラーゼによるDNAの伸長が停止した
  • ヘアピンなどの二次構造が原因の場合、問題の領域周辺のプライマーを再設計する。添加剤(5~10% DMSOやベタイン、グリセロールなど)の使用や、シーケンス反応の最初のインキュベーションを1分から10分に延長することで、テンプレートの変性が促進されるとの報告もある※1
  • Gリッチな塩基配列の場合、Applied Biosystems™ dGTP BigDye™ Terminator Ready Reaction Cycle Sequencing Kitの使用も選択肢のひとつ
シーケンス反応に使用したApplied Biosystems™ BigDye™ Terminator Ready Reaction Mixの量が少ない BigDye Terminator Ready Reaction Mixを希釈して使用している場合、標準プロトコルへ戻す
※1 当社でのテストは実施しておりません。

トップヘビーデータ

Raw Dataの最初から後半に向かい徐々にピーク高さが低下している場合、シーケンス反応液の組成が適切でない可能性があります。

図2. シグナル強度が徐々に低下したデータ例 (Raw Data)

図2. シグナル強度が徐々に低下したデータ例 (Raw Data)

予測される原因   対処法
シーケンス反応の伸長時間が短い、または伸長温度が高い   伸長時間を延ばすか、伸長温度を下げる
シーケンシング反応のプライマー対テンプレートの比率が不適切   良好な結果が得られるプライマー対テンプレートの比率を検討する
テンプレートに、DNA ポリメラーゼ活性を阻害するものがコンタミネーションしている   テンプレートの調製方法を確認し、別の方法を試すか、テンプレートを精製する
シーケンス反応に使用したBigDye Terminator Ready Reaction Mixの量が少ない   BigDye Terminator Ready Reaction Mixを希釈して使用している場合、標準プロトコルへ戻す

Raw Dataが、図3に示すような波形となっている場合、シーケンス反応で、短いシーケンス産物が優先的に生成されている可能性があります。短いシーケンス産物は、テンプレートとしたPCR産物中のプライマーダイマーに起因することが懸念されるため、PCRプライマーを再設計し、プライマーダイマーが形成されるデザインを除外することが対処法となります。

図3. 短いシーケンス産物が優先的に生成した場合のデータ例 (Raw Data)

図3. 短いシーケンス産物が優先的に生成した場合のデータ例 (Raw Data)

まとめ

今回は、シグナルが予想より早くドロップした場合と、トップヘビーデータとなった場合について、考えられる原因と対処法をご紹介しました。シーケンス解析の結果、解読できた長さが想定より短いときは、本ブログの内容を参考にしていただければと思います。

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