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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / シーケンス解析のトラブルシュート:データのシグナルが無いまたは低い場合の原因と対処法

シーケンス解析のトラブルシュート:データのシグナルが無いまたは低い場合の原因と対処法

Written by LatB Staff | Published: 05.02.2024

シーケンス解析の結果、塩基配列を解読できなかった場合、考えられる要因のひとつに、十分な強度のシグナルが得られていないことがあげられます。本ブログでは、シーケンス解析データのシグナル強度の確認方法と、強度が十分でなかった場合の原因と対処法をご紹介いたします。

▼もくじ

  • シグナル強度の確認方法
  • シーケンス反応物由来のシグナルがない場合
  • 蛍光ターミネーターのシグナルのみの場合
  • 全体的に低シグナルの場合
  • まとめ
    • サンガーシーケンシング ハンドブック
    • セミナー、ハンズオントレーニング

シグナル強度の確認方法

シーケンス解析データのシグナル強度は、Applied Biosystems™ Sequencing Analysisソフトウエア、または、Thermo Fisher™ Connect PlatformのアプリであるQuality Checkからご確認いただけます。本ブログでは、Sequencing Analysisソフトウエアからのデータ確認手順をご紹介します。Quality Checkでの確認方法は、こちらをご参照ください。

Sequencing Analysisソフトウエアを起動し、図1の手順で、データを確認したいサンプルファイル(.ab1)を読み込みます。「Show」のチェックボックスをクリックし、Rawタブを選択します(図2)。表示されるRaw Dataのピーク高は、ジェネティックアナライザで検出された蛍光シグナルの強度を示します。シーケンス解析がうまくいかなかった場合、シグナル強度が適切でない恐れがあります。低シグナル、または、シグナルがない場合のデータ例、予測される原因と対処法を、以下にご紹介します。
なお、Electropherogramタブからは、Raw Dataを補正した波形であるElectropherogramを確認できます。

図1. Sequencing Analysisソフトウエアへのサンプルファイルの読み込み

図1. Sequencing Analysisソフトウエアへのサンプルファイルの読み込み
※クリックすると大きな画像が表示されます


図2. Sequencing AnalysisソフトウエアからのRaw Dataの確認

図2. Sequencing AnalysisソフトウエアからのRaw Dataの確認
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シーケンス反応物由来のシグナルがない場合

シーケンス反応物由来のシグナルが検出されていない場合、Raw Dataでは、図3に示すように、ピークがみられず、ベースラインのみが表示されます。ピークがないため、ベースラインが拡大された縦軸表示になっており、縦軸の数値を確認すると、0付近を推移していることがわかります。このとき、Electropherogramでは、不規則な波形が表示されます。トラブルの原因を正しく把握するために、Raw Dataを確認することが重要です。

図3. シグナルがないデータ例
上:Raw Data、下:Electropherogram

図3. シグナルがないデータ例
上:Raw Data、下:Electropherogram
※クリックすると大きな画像が表示されます

シグナルがない場合に予測される原因と対処法は以下の通りです。

予測される原因 対処法
インジェクションの失敗 ・ウェル内の液量を確認し、少ない場合は十分な量のサンプルを再調製する(※1)
・使用したランモジュールが適切か確認する(※2)
・指定のプレート・8連チューブを使用しているか確認する
・キャピラリが破損していないか確認する
サンプルの溶解に水が使用されているため、蒸発し液量が減った ・Applied Biosystems™ Hi-Di™ Formamideを使用してサンプルを再調製する
キャピラリが破損している ・キャピラリを確認し、破損が見つかった場合はキャピラリアレイを交換する
・同じキャピラリに繰り返しエラーが見られる場合も交換する
テンプレートまたはサンプルが多過ぎるため、一時的にキャピラリが目詰まりした ・サンプルを再インジェクションする

※1 10 µL以上。Applied Biosystems™ BigDye™ XTerminator™ 精製キット専用のランモジュール使用の場合は65 µL以上
※2 通常のランモジュールを使用すべきサンプルに対し、誤ってBigDye XTerminator精製キット専用のランモジュールを使用している場合など

蛍光ターミネーターのシグナルのみの場合

シーケンス反応では、蛍光標識ジデオキシヌクレオチド(蛍光ターミネーター)を用いることで、伸長産物に蛍光が標識されます。シーケンス反応がうまくいかず、反応に使われなかった蛍光ターミネーターが多く残存した場合、精製により除去しきれず、ピークとして検出されることがあります(図4)。

図4. 蛍光ターミネーターのみのデータ例
上:Raw Data、下:Electropherogram

図4. 蛍光ターミネーターのみのデータ例
上:Raw Data、下:Electropherogram
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予測される原因と対処法は以下の通りです。

予測される原因 対処法
テンプレート量が少ないため、シーケンス産物が少なくなりすぎている ・DNAの濃度と品質を確認する
シーケンス反応試薬のいずれかを入れ忘れている、または劣化している ・実験手順を確認する
・試薬の濃度と品質を確認する
・コントロールDNAテンプレートとプライマー(※3)を用い、シーケンス反応が失敗しているのか、テンプレートやプライマーの品質が低いのかを判断する
テンプレートにフェノールなどのシーケンス反応阻害物質が含まれている ・推奨される手順に従い、テンプレートを調製する
・DNA品質を確認する
・必要に応じて、テンプレートを精製する
プライマーの設計が悪いため、プライミングされない ・新しいプライマーを作成し、実験をやり直す
シーケンス産物の精製時のロス ・シーケンス産物の精製手順を見直す

※3 シーケンシングキットには、コントロールDNAとプライマーが付属しています。これらを用いることで、失敗の原因が、テンプレートやプライマーにあるかどうかを判断しやすくなります。

全体的に低シグナルの場合

Raw Dataで、シーケンス反応産物由来のピークが検出されているものの、そのシグナル強度が低い場合(図5)、良好なシーケンス解析結果を得ることができません。シグナル強度はRaw Dataからも確認できますが、Sequencing Analysisソフトウエアの「Annotation」タブに示される「Ave Signal Intensity」でも確認できます。Ave Signal Intensityには、塩基ごとの平均シグナル強度が表示され、この数値が1~2桁の場合、シグナルが不十分と考えられます。

図5. 低シグナルのデータ例
上:Raw Data、下:Electropherogram

図5. 低シグナルのデータ例
上:Raw Data、下:Electropherogram
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シグナル強度が十分でない場合、下記の原因が考えられます。

予測される原因 対処法
シーケンス反応が失敗 ・コントロールDNAテンプレートとプライマーを使用してシーケンス反応を行い、原因を考察する
Ready Reaction Mixの量が不十分 ・Ready Reaction Mixを希釈している場合は、標準プロトコルで反応液を調製する
サイクルシーケンス反応のプライマーまたはテンプレート量が不十分 ・DNA量を確認し、推奨される量(※4)を使用する
テンプレートの品質が低い ・推奨される手順に従い、テンプレートを調製する
・DNAの品質を確認する
・必要に応じて、テンプレートを精製する
シーケンス産物の精製時のロス ・シーケンス産物の精製手順を見直す
サンプル溶液に含まれる塩により、サンプルのインジェクションが阻害されている(精製の不十分なテンプレート、PCR産物からの塩の残留、または、シーケンス反応後のエタノール沈殿物の塩の残留) ・DNA品質、PCR精製、シーケンス反応の精製手順を確認する

※4 サイクルシーケンス反応で推奨されるプライマー量は、3.2 pmolです。テンプレートの推奨使用量は、下表のとおりです。

DNA template Quantity
 PCR product  100~200 bp 1~3 ng
 200~500 bp 3~10 ng
 500~1,000 bp 5~20 ng
 1,000~2,000 bp 10~40 ng
  > 2,000 bp 20~50 ng
 Single-stranded DNA 25~50 ng
 Double-stranded DNA 150~300 ng
 Cosmid, BAC 0.5~1.0 µg
 Bacterial genomic DNA 2~3 µg

まとめ

シーケンス解析がうまくいかない場合、さまざまな要因が考えられます。今回は、シグナルが低い場合についてご紹介しました。その他の要因についても、今後ご紹介していく予定です。
キャピラリ電気泳動によるシーケンス解析について、より詳しく知りたい方は、サンガーシーケンスの基本原則を学べる資料をダウンロードいただけます。また、シーケンス解析の基礎セミナーやハンズオントレーニングもございますので、ぜひご活用ください。

サンガーシーケンシング ハンドブック

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セミナー、ハンズオントレーニング

サンガーシーケンス解析基礎セミナー(1)基本原理
サンガーシーケンス解析基礎セミナー(2)データ確認とトラブルシュート
完全マスター!ハンズオントレーニングコース キャピラリーシーケンサ(1) サンプル調製からデータ確認まで

 

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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