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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / マイクロアレイとは?|マイクロアレイを用いた発現解析の原理と解析方法

マイクロアレイとは?|マイクロアレイを用いた発現解析の原理と解析方法

Written by LATB Staff | Published: 12.18.2017

弊社の主要な製品であるマイクロアレイは、その登場以来様々な分野やアプリケーションで使われてきています。今回はマイクロアレイ解析の中から、もっとも代表的なアプリケーションである発現解析についてご紹介します。

▼もくじ [非表示]

  • マイクロアレイとは?
  • マイクロアレイの歴史
  • マイクロアレイとDNAプローブ
  • マイクロアレイの製造技術
  • GeneChipプローブアレイの合成工程
  • マイクロアレイによる発現解析の原理
  • マイクロアレイと解析ソフトウェア
  • マイクロアレイの実験を始めるには?
  • まとめ
  • マイクロアレイ無料出張セミナーのご案内
    • マイクロアレイ お試し解析

マイクロアレイとは?

アレイ (Array) には整列とか配列、などといった意味がありますので、マイクロアレイ (Microarray) とは文字通り、ごく小さな物質が整然と並んでいるイメージを持つと良いでしょう。これらの微小な物質との相互作用を通して、実験室レベルでおこなわれる作業をミクロレベルで大量かつ同時並行に処理できるのが、マイクロアレイの特徴と言えます。

整然と並んでいる微小物質には様々なものが考えられますが、生物学的な実験においては核酸、ペプチド、抗体などを用いるのが一般的です。特にDNA断片を並べたDNAマイクロアレイは、マイクロアレイの中でも最も頻繁に利用されていることから、ただ単にマイクロアレイといった場合はDNAマイクロアレイのことを指していることも多いようです。実際、このページでもDNAマイクロアレイを短縮して、ただ単にマイクロアレイと呼ぶことにしています。

DNA断片はチップ(基盤)上に固定化されているので、マイクロアレイのことをDNAチップと呼ぶこともありますが、実質的に両者は全く同じものです。またマイクロアレイのことをGeneChip(ジーンチップ)と呼ぶ方もいらっしゃいますが、実はGeneChipは弊社が命名したブランド名であることをご存知の方は意外と少ないかもしれません。マイクロアレイが一般名詞なのに対して、GeneChipというのは商品名(ブランド名)です。製品の普及にともなって製品名が固有名詞化する例はいろいろとありますが(サランラップ、セロテープ、など)、弊社のGeneChipもマイクロアレイの代名詞として多くの方に認めていただいている証といえるでしょう。

マイクロアレイの歴史

弊社のGeneChip®テクノロジーは、1980年代後半にStephen P.A. Fodor博士率いる科学者チームによって発明されました。これは微小なガラスチップの上にDNAプローブを合成し、多量の生物学的データを構築するという革新的な理論に基づいた技術です。この技術をもとにして、アフィメトリクス(現サーモフィッシャーサイエンティフィック)は1992年の創業以来、マイクロアレイテクノロジーの発展を常にリードしてきました。現在では医学や薬学、生物学のみならず、一般消費者向け遺伝子検査やアグリバイオなど、幅広いヘルスサイエンスやバイオロジーの分野で活用され、数多くの論文に弊社のマイクロアレイが使われています。

マイクロアレイとDNAプローブ

マイクロアレイを拡大してみると下記の図のように表すことができます。

start-microarray-fig1

図1 マイクロアレイの拡大図

マイクロアレイ上には各DNAプローブが固定化されている小さな区切りが多数ありますが、弊社ではこの区切り一つ一つのことをセルと呼んでいます。各セルには同一のDNAプローブが固定化されており、それぞれのセル上にあるDNAプローブが解析したい遺伝子に対応しています。

マイクロアレイ上のセルの数をフィーチャーサイズと呼んでおり、この数が多ければ多いほど多数の遺伝子やエクソンを解析できます。弊社の発現解析マイクロアレイのうち、もっともフィーチャーサイズの大きな製品はClariom Dですが、その数は実に600万以上と、他のマイクロアレイ製品の追随を許しません。

マイクロアレイの性能はどれだけ多くのプローブを配置できるかで大きく異なってきます。製品を選ぶ際には是非ともマイクロアレイのフィーチャーサイズとプローブ数を気にかけてみてください。

なお、弊社のマイクロアレイは半導体製造で用いられている技術を応用しているため、高密度なプローブの配置が可能となっています。

マイクロアレイの製造技術

弊社は、半導体の製造技術に使われているフォトリソグラフィー技術と、コンビナトリアル・ケミストリーを融合させることにより、超高密度なマイクロアレイ製造技術を確立しました。

図2 マイクロアレイの製造過程

マイクロアレイは5インチ角のウェハーを用いて製造されます。合成完了後にウェハーを切断して得られた個々のアレイは、カートリッジまたはアレイプレートやアレイストリップに組み込まれます。弊社のマイクロアレイは、高度にコントロールされた製造プロセスにより、ロットごとのマーカーの欠落がなく、常に高い精度と再現性が確保されています。

GeneChipプローブアレイの合成工程

光化学反応で取り除くことができる保護基を持った合成リンカーを石英ガラスの基板上に結合させておき、マスクと呼ばれる遮蔽物質を通して紫外線の光を照射することにより、特定の領域だけ保護基を脱離させ、水酸基を露出させます。脱保護可能な保護基で修飾されたデオキシヌクレオチドのうちのいずれか1種類と反応させると、前のステップで光が照射された部分でのみ、重合反応が起こります。次のラウンドの脱保護とカップリング反応を行うために、別のマスクで基板上の異なる領域を照射し、ヌクレオチドの重合反応が繰り返されます。

このように、異なるマスクを適用した保護基の脱保護と、A, C, T, Gそれぞれの塩基を持ったヌクレオチドモノマー前駆体のカップリング反応を、プローブが通常25塩基である全長に達するまで繰り返すことで、アレイ基板上の特定の領域に、任意の配列のオリゴヌクレオチドプローブを合成することが可能となります。

start-microarray-fig0-2

図3 GeneChipプローブアレイの合成工程。1.フォトリソグラフィックマスクを利用して、活性化させたい部位を特異的に光照射します。2.光照射した領域が活性化されます。3.ヌクレオチドとインキュベーションすると、活性化された位置においてのみ化学的なカップリング反応が起こります。4.次に、新規のマスクパターンを使用します。5.1~3と同様のカップリングステップが繰り返されます。6.この過程を繰り返して目的とする長さのオリゴヌクレオチドプローブを合成します。

マイクロアレイによる発現解析の原理

マイクロアレイによる発現解析ではサンプル中のRNAを蛍光ラベルし、マイクロアレイ上のプローブと結合させますが、この結合のことをハイブリダイゼーションと呼びます。

ハイブリダイゼーションの結果、サンプル中に多く存在するRNAはプローブとたくさん結合し、その部分のセルが強く光ります。逆にRNAが少ない場合はプローブへの結合数が小さくなるので、蛍光強度は弱くなります。発現解析では、こうした各セルごとの蛍光強度の強さを測定することで、サンプル中の各RNAの発現量を解析できるのです。これがマイクロアレイによる発現解析の基本的な原理です。

ちなみにサンプルのRNAをラベルする際に1種類の色でラベルする方法を1色法と呼び、2種類の色でラベルする方法を2色法と呼んでいます。弊社のマイクロアレイでは1種類の蛍光色素の蛍光強度を測定する1色法を採用しています。

下の図はハイブリダイゼーション後のマイクロアレイを専用の装置で読み取った際の画像です。よく見ると細かい点が無数に散らばっているのが分かるかと思いますが、この点一つ一つがマイクロアレイの各セルに対応しています。

start-microarray-fig2

図4 マイクロアレイを読み取った際の画像

さてこの画像、左上の部分をズームしてみると以下のような模様が現れることが分かります。

start-microarray-fig3

図5 マイクロアレイを読み取った際の画像の拡大図

この模様、「GeneChip Mouse 430 2」と読めるのがお分かりでしょうか?実はマイクロアレイ上には必ずハイブリダイゼーションが起こるポジティブコントロールのプローブが配置されており、左上のこの箇所もシグナルが出るように設計されています。その結果、ポジティブコントロールの場所が明るく光ってマイクロアレイの名称が浮かび上がったという訳なのですね。文字の部分をよく見てみると小さなドットが並んでいるのが分かるかと思いますが、このドット一つ一つがセルになっています。上の全体画像と見比べてみると、いかにたくさんのセルがひとつのマイクロアレイに密集しているかがお分かりいただけるかと思います。

マイクロアレイと解析ソフトウェア

マイクロアレイの解析では上の図で示したような大量のデータを処理するため、専用の解析ソフトウェアを用いる必要があります。弊社では全ての研究者の方が自由に解析をおこなっていただけるように、無料のソフトウェアをご用意しています。

弊社のソフトウェアを用いれば、例えば下図のようなスキャッタープロットを簡単に描くことができます。

start-microarray-fig4

図6 マイクロアレイ解析ソフトウェアを用いたスキャッタープロット

この図では、赤い部分が発現の上昇した遺伝子を、緑色の部分が発現の減少した遺伝子を表しています。

あるいは、下図のような変動遺伝子のクラスタリングのヒートマップ表示も作成できます。マイクロアレイによる発現解析というと、このような図を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

start-microarray-fig5

図7 マイクロアレイ解析ソフトウェアを用いた変動遺伝子のクラスタリングのヒートマップ表示

以前はこうした解析をするには高価なソフトウェアを使用する必要がありましたが、弊社のマイクロアレイなら全て無料で解析できます。ソフトウェアやサンプルデータはウェブサイトから無料でダウンロードできますので、ご興味のある方は是非ともご自身の手で試されてみてはいかがでしょうか?

マイクロアレイの実験を始めるには?

マイクロアレイの解析には、スキャナと呼ばれる読み取り装置を用います。

弊社のマイクロアレイ解析には、Applied Biosystems™ GeneChip™ Scanner 3000 7G System (GCS3000 System) と呼ばれる装置が使われます。

GCS3000 Systemはマイクロアレイカートリッジの洗浄染色を自動で行うため、安定した解析結果を得ることができます。

特徴的な形をした装置ですので、どこかで見かけた記憶のある方も多いのではないでしょうか。共通機器室などに導入されている場合は、弊社の最新マイクロアレイであるApplied Biosystems™ Clariom™ Arrayなどの解析がすぐに行えます。マイクロアレイによる発現解析に興味のある方は、ぜひとも確認してみてください。

またスキャナを持っていない場合でも、マイクロアレイの受託解析を行っている会社にRNAサンプルを出すだけで、簡単に網羅的発現解析データを手に入れることができます。マイクロアレイの受託解析に関する情報は以下の記事にも詳しく記載してあります。

マイクロアレイの受託解析を利用する際に知っておきたいポイント

まとめ

今回はマイクロアレイを使った発現解析について、その原理や解析の方法について簡単にまとめてみました。本文中でもご紹介したように、最近では次世代型超高密度マイクロアレイのような新製品も登場してきており、その用途はますます拡大しています。これを機会に、是非とも最新の発現解析技術についての情報にも触れてみてください。

マイクロアレイ無料出張セミナーのご案内

マイクロアレイが登場してから、数十年という月日がたちました。2000年代初めには数百万円ほどした解析コストも、今では数十分の一以下にまで下がっています。かつては一部の限られた研究者だけが行えた網羅的発現解析が、いまや誰でも簡単に低コストで実施できるようになりました。

当社では、このテクノロジーをより多くのお客様に知っていただくために、無料の出張セミナーを開催しています。

・最新のマイクロアレイに関する動向に興味がある

・次世代シーケンサよりも精度の良い解析ができると聞いたけど、本当?

・解析するのにどの程度のコストがかかるのか知りたい

このような疑問や興味をお持ちのお客様は、ぜひともマイクロアレイ出張セミナーをお試しください。地域や人数を問わず、無料でご訪問いたします。

ご興味のある方は、こちらのフォームよりご連絡ください。

マイクロアレイ お試し解析

サーモフィッシャーには「お試し有償解析サービス」もございます。この機会に一度、弊社のアレイをお試しください。

お試し有償解析サービスはこちら

研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。

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