フローサイトメトリーは、さまざまな学問分野で現在利用できるもっとも強力なマルチパラメーターシングルセル解析ツールのひとつです。特に免疫学研究では、複数の細胞集団が混在するなかで特定の対象細胞を研究できるため、その複雑なメカニズムを理解するのに役立っています。しかし、生活に役立つ他の多くのものがそうであるように、フローサイトメトリーにも、得られたデータの質に影響を及ぼす欠点がないわけではありません。
そこで今回は、フローサイトメトリーデータの精度向上を可能にするInvitrogen™ Attune™ CytPix™ Flow Cytometerについて、ご紹介いたします。
▼こんな方におすすめです!
・フローサイトメーターを利用されている方
フローサイトメトリーにおける一般的な問題
サンプル中に凝集物/ダブレットがあると間違ったデータが示されることがあります。また、死細胞が試薬に非特異的に結合することによって生じる偽陽性結果が研究者を悩ませることもあります。従来のフローサイトメトリーからは、形態学的データや視覚的画像は得られません。しかし、免疫学における細胞相互作用の研究や、質を維持しながら培養細胞を解析する際には、こうしたデータや画像がとりわけ重要になります。
どのソリューションが利用できますか?
幸いなことに(特に免疫学における)科学の進歩により、今では生細胞と死細胞を区別する細胞生死判定用色素や、ダブレットを解析から除去できるゲーティングストラテジーなどの優れたソリューションがあります。しかし、これらのソリューションは、さらに新たな問題ももたらします。細胞生死判定用色素は、他の点では必要のない付加的な試薬であり、余分な手順とコストがかかります。この競争市場で、だれが余分なコストを必要とするでしょうか?また、このソリューションでは細胞生死判定用色素の蛍光を検出するために、チャネルがひとつブロックされます。そのため、完全なパネルを使用する場合に、解析パラメーターがひとつ除外されることになります。これではマルチチャネルフローサイトメトリーとは言えません。要するに、これらのソリューションはたしかにメリットはありますが、デメリットがないわけではないということです。もうひとつ考えられる理想的な選択肢は、良好な状態の単細胞懸濁液を調製することですが、現実には、必ずしも理想的なサンプルを入手できるわけではなく、場合によってはサンプルが十分に得られないこともあります。これは、患者由来のサンプルを使用することが多いためです。いずれにせよ、解析担当者にとって、すでに病気の患者のところに戻ってもう少し組織を取らせてほしいと頼むことは現実的に不可能です。
もっとよい方法はないでしょうか?
フローサイトメトリーの際に細胞を撮影し、ダブレットまたは死細胞か否かを確認できる装置があれば、と想像してみてください。そうなれば素晴らしいことです。当社はInvitrogen™ Attune™ CytPix™ Flow Cytometerにより、この想像を現実のものにしました。この装置では、ハイスピード明視野カメラと Invitrogen™ Attune™ Cytometric softwareを組み合わせることにより、収集した各事象を撮影し、ダブレットや凝集した死細胞あるいはデブリと単一細胞の識別ができます。さらにこれらの画像は、サンプルがフローセルを通過している間に撮影されます。この技術を用いることによって不要な細胞をゲートから除外でき、標的細胞集団のみに関する精度の高いデータが得られます。ひとつの装置で画像を何枚撮影できるかという疑問に対する答えは「たくさん!」です。ハイスピードカメラにより、1秒あたり最大6,000枚を撮影できるため、解析の範囲が大幅に広がります。また、アコースティックフォーカシングにより、画像の質をさらに高めています。Attune CytPixモデルがもたらす視覚的画像は、細胞培養の品質チェック(QC)改善の可能性にもつながります。たとえば、ある研究では細胞培養QCにより、一見コンフルエントにみえるにもかかわらず、細胞数減少および生存率低下という形で生存能低下が観察されましたが、この根本原因はAttune CytPixモデルによって取得した画像から、微生物汚染であることを突きとめられました。これは、こうした画像がなければできなかったことです。もうひとつのメリットは、細胞間相互作用を観察できることです。CAR-T免疫療法に用いる細胞をRamos(リンパ腫)細胞とともにインキュベートし、Attune CytPixモデルで解析すると、一部の画像にRamos細胞を標的としているCAR-T細胞が視覚的に示されます。
このソリューションは、これまでの研究を一気に変えるゲームチェンジャーとなる可能性があります。このソリューションを用いれば、ダブレットや死細胞による不純物を除去できるだけでなく、細胞生死判定用色素などの追加の試薬が不要になり(金銭的節約)、チャネルをブロックすることもないため、実際の研究でパラメーターを最大限利用できるようになります。さらに、QCプロセスを改善する機会が開かれ、細胞間相互作用やその他多くの研究が可能になります。
この装置があれば、データの正確性を高めつつ、免疫学研究を簡素化するという夢を実現できるのではないでしょうか。
まとめ
・蛍光シグナルと明視野画像を同時に取得できれば、正確なゲート調整ができます。
・いつものフローサイトメトリーデータに形態学的特徴が付加されることで、新しい発見があるかもしれません。
・Attune CytPix Flow Cytometerを用いることで、データ解析の精度に確証を持てます。
このブログで紹介した製品の詳細はこちら:Invitrogen Attune CytPix Flow Cytometer
フローサイトメトリーに関するリソースおよびソリューション
•Flow Cytometry Panel Builder - このオンラインツールは、従来のフローサイトメーターやスペクトルフローサイトメーターを用いた特定のアプリケーション用に、効果的な試薬パネルを設計するのに役立ちます。
•Flow Cytometry Protocols Handbook - サンプル調製からさまざまな細胞刺激条件、染色、イムノフェノタイピング、データ解析戦略に至るまで、フローサイトメトリーにおけるあなたのニーズに合ったプロトコールが見つかります。
•Immunology at Work Resource Center - 自信をもってすぐに始められる実用的なガイダンスやプロトコールが紹介されています。
References
1.How experts are breaking down barriers in flow cytometry (selectscience.net)
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。