単一の細胞または細胞集団のマルチパラメーター解析に用いるフローサイトメトリーのアプリケーションは広く知られていますが、フローサイトメトリーアッセイの標準化についてはそれほど多く知られていません。
アッセイの標準化は、異なる研究・装置・施設間でデータを比較するうえで極めて重要です。フローサイトメトリーには、装置の設定、試薬、コントロール、サンプル処理、データ解析といった多くの変数があります。例えて言うならば、それはおいしいハンバーガーを作るようなものです(フローサイトメトリーアッセイの標準化の方がはるかに難しいですが)。おいしいハンバーガーを作るのは良いことですが、それが世界中で好まれ、人々に受け入れられるためには、調理プロセスや原材料の質などがどこの場所でも同じになるよう、標準化する必要があります。
そこで今回は、フローサイトメトリーアッセイの標準化におすすめの標準ビーズついて、ご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・フローサイトメトリーアッセイを実施されている方
アッセイの標準化が難しいのはなぜでしょうか?
ひとつの実験内または複数の実験間で、サンプルから得られたデータを比較し、観察された差が生物学的なものであり、変数によるものではないことを確認するには、標準化が必要不可欠です。また、異なる装置、研究者、施設、研究室間でデータを比較する場合にも、標準化は重要です。ひとつの研究室内でフローサイトメトリー解析の手順を標準化するのは比較的難しくはありません(ただし、“比較的”です。標準化プロセスにともなう難しさは、研究者には周知の事実です)。複数の施設や研究室間で標準化を行うのは、それよりもはるかに難しくやっかいです。標準化のプロセスは時間を要し、誤差の管理やばらつきに関する技術的な専門知識が求められます。標準ビーズは、試験やコンペンセーションにおける標準として、装置のコントロールに役立ちます。アライメント、サイズキャリブレーション、ソートセットアップのばらつきを最小限に抑えた装置から得られる一貫性のあるデータ、サンプルの保存、実験間および装置間でのデータの比較は、標準ビーズが提供するさまざまなメリットの一部です。
切り札となる標準ビーズ
フローサイトメトリーアッセイの標準化にともなう難しさを理解したところで、では、どこから標準化に着手すればよいのでしょうか。まず検討すべき点は装置です。細胞が特定のインテロゲーションポイント(光散乱および蛍光放出が生じる)でレーザー光を通過し、測定感度の低下や測定誤差が生じないようにするには、光学系および流路系を標準化する必要があります。Invitrogen™ AccuCheck™ ERF Reference Particlesは、フローサイトメトリー解析における蛍光強度の標準化とキャリブレーションに用いられます。特定の蛍光色素分子について所定のNIST(米国国立標準技術研究所)トレーサブルな蛍光強度標準を適用することで、装置の感度および精度を判断でき、フローサイトメトリー装置間のデータ比較が可能になります。さらに、本製品を生物学的標準と併用すれば、バイオマーカーの発現レベルの定量化も可能です。このソリューションは、特に経時的な結果の比較が重要な場合に、高い信頼性と互換性を提供します。これは、AccuCheck™ ERF Reference ParticlesのERF値がNISTトレーサブルであり、他社製のMESFビーズとは異なり、メーカー間での比較が可能なためです。アッセイについてさらに詳しく述べると、蛍光色素標識抗体はフローサイトメトリー研究における重要な要素であり、標準化の観点からみた場合、その性能は、大規模なマルチパラメーターパネルにおける重点領域のひとつです。コンペンセーション、検出器でのアンミキシング、あるいは色素・細胞・バッファー間における予想外の相互作用により、大規模パネルでは抗体の性能が十分に発揮されない傾向があります。これには、Invitrogen™ Flow Cytometry Compensation Beadsなどの適切なコントロールの使用が有用なことがあります。これらのビーズは、正確な蛍光シグナルを得るための電圧およびゲーティングパラメーターの設定に役立ちます。コンペンセーションビーズは、複数の蛍光色素分子の発光が重なる場合、サンプルが限られている場合(免疫学研究によくある)、大規模なマルチカラーイムノフェノタイピングパネル、あるいは大規模な実験において特に有効です。
計数用ビーズのメリット
フローサイトメトリーは細胞特性を迅速に定量化する方法ですが、ほとんどのフローサイトメーターでは、サンプル中の細胞濃度や細胞絶対数を得ることはできません。細胞絶対数を得るには、血液分析装置を用い、個々の細胞濃度数から算出するか、またはミクロスフェア計数用の内標準をサンプルに適用する方法があります(シングルプラットホーム検査とも呼ばれます)。シングルプラットホーム検査法は複雑さがなく、検査室間のばらつきや過小評価も避けられるため、優先的に使用されています。細胞だけでなく細菌の計数用にも、さまざまなInvitrogen Flow Cytometry Cell Counting Beadsが用意されています。
フローサイトメトリーアッセイの標準化は多くの変数を含む複雑なプロセスですが、標準ビーズをセットで用いることによって研究をより管理しやすくなり、同時に質の高いデータが得られます。
まとめ
・Invitrogen™ AccuCheck™ ERF Reference Particlesを用いて、フローサイトメーターの感度および精度の標準化ができます。
・Invitrogen Flow Cytometry Cell Counting Beadsを用いて、信頼性の高い細胞絶対数の計測を実現します。
このブログで紹介した製品の詳細はこちら:Invitrogen™ AccuCheck™ ERF Reference Particles, Invitrogen™ Flow Cytometry Compensation Beads, Invitrogen Flow Cytometry Cell Counting Beads
フローサイトメトリーに関するリソースおよびソリューション
•Flow Cytometry Panel Builder - このオンラインツールは、従来のフローサイトメーターやスペクトルフローサイトメーターを用いた特定のアプリケーション用に、効果的な試薬パネルを設計するのに役立ちます。
•Flow Cytometry Protocols Handbook - サンプル調製からさまざまな細胞刺激条件、染色、イムノフェノタイピング、データ解析戦略に至るまで、フローサイトメトリーにおけるあなたのニーズに合ったプロトコールが見つかります。
•Immunology at Work Resource Center - 自信をもってすぐに始められる実用的なガイダンスやプロトコールが紹介されています。
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。