アミン類の分析に適したICメソッドとは
トリメチルアミン、クロルフェニラミン、メチルアミン、ジメチルアミン、脂肪族アミンや生体アミンといったさまざまな種類が存在するアミン類ですが、アンモニアと同様に弱塩基性を示すため、イオンクロマトグラフィー(IC)による分析が適しています。
本記事では、アミン類とは何か、また医薬品業界におけるアミン分析の重要性について解説します。
アミン類とは
アミンとは、アンモニアの脂肪族および芳香族誘導体です。アミン類には医薬品(製剤)として、また、原薬の合成に使用されるものがあります。多くのアミン製剤は、天然のアミン神経伝達物質(生体アミン)の作用を模倣したり、阻害したりするために設計されています。例えば、クロルフェニラミンはアレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬です。クロルプロマジンは、眠気を誘うことなく鎮静作用をもたらす抗精神病薬で、不安感や精神的不調の緩和に用いられます。エフェドリンおよびフェニレフリンは充血除去薬として用いられます。
医薬品業界におけるアミン類分析の重要性
アミン類に属するN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)は化学式(CH₃)₂NNOで示される有機化合物です。N-ニトロソジメチルアミンは一部の発酵食品に含まれる発がん性物質であることが知られています¹。2018年7月以降、ロサルタン、ラニチジン、メトホルミンなどの数種類の製剤からN-ニトロソジメチルアミンが検出されたことから、米国食品医薬品局(FDA)により回収されています。このため、FDAはヒト用医薬品におけるN-ニトロソジメチルアミンを管理するための業界向けガイダンスを提供しています。これにより、医薬品製造中のN-ニトロソジメチルアミン生成のリスクを理解することに関心が高まっています。
アミン類の分析に適したICメソッド
イオンクロマトグラフィーは非イオン性成分を含む製剤中のイオン性成分の検出に特に有用です。アミン類分析にICを用いるメソッドは米国薬局方の医薬品各条(モノグラフ)に示されており、有効成分、分解生成物、不純物の測定など、あらゆる医薬品製造にかかわる工程に使用されています。
大方の医薬品サンプルでは、サンプル前処理はほとんど必要なく、分析対象物の誘導体化も不要です。陽イオン交換カラムを用いたケースでは脂肪族アミンのIC分析について、多数の報告がされています。
サプレッサー式電気伝導度検出を用いる陽イオン交換クロマトグラフィー(陽イオンIC)は、µg/L~mg/L濃度の一般的な陽イオンと多くのアミンの測定において実績のあるメソッドです。
具体的な分析例を知りたい方へ
より詳しく実際の分析について学びたい方は、医薬品中のアミン類測定のためのメソッド開発に関するガイドをダウンロードいただけます。ICカラム選択ガイド、AppsLab(分析アプリケーションライブラリー)、およびバーチャルカラムなどのツールについて紹介しており、さらに、ジメチルアミン、メチルアミンおよびトリメチルアミンを分離した例を挙げ、紹介したツールの活用方法について説明しておりますので、ご興味のある方はぜひダウンロードしてみてください。
参考文献
1. U.S. Environmental Protection Agency, Integrated Risk
Information System (IRIS). https://cfpub.epa.gov/ncea/iris/iris_documents/documents/subst/0045_summary.pdf (accessed Mar. 25, 2022)
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