材料やデバイスの特性を評価する上で、製品を構成する元素が「どこに」「どの程度」「どのように」存在しているかを把握することは非常に重要です。元素イメージング分析は、試料中の元素分布を可視化する手法であり、試作評価や故障解析において有益な情報を得られる技術と言えます。
固体試料中の元素イメージング分析には複数の手法が存在しますが、それぞれ適用可能な空間スケールや濃度レンジが異なります。本記事では、元素イメージングの概要を整理したうえで、LA-ICP-MSの特長と、全固体電池セルへの適用事例をご紹介します。
▼このような方におすすめです!
・材料・デバイスの解析を担当されている方
・μm~mmレベルの広域の元素分布を評価したい方
・EDXやEPMA分析以上の高感度が必要な方
・イメージング分析の定量性に課題を感じている方 |
材料評価に用いられる元素イメージング分析
元素イメージング分析は、試料中の元素分布を面内方向(2D)および深さ方向に取得する手法で、工業材料やデバイスの試作評価、故障解析などに活用されています。
必要とされるイメージングのスケールは、試料や分析目的によって異なります。空間スケールはデバイス全体の広域からナノレベルの微小領域まで、濃度スケールは主成分から微量不純物まで幅広いレンジが求められます。
元素イメージング分析には複数の手法が存在し、それぞれ得意とする空間領域や濃度レンジが異なるため、目的に応じた選択が必要です。
その中で、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)は、面内μm~cmレベルにわたる広い空間スケールに適用でき、高感度かつ定量的な分析に対応できる点から、材料・デバイスの評価への応用が進んでいます。

LA-ICP-MSの特長
広域イメージングと深さ方向分析への対応
LA-ICP-MSでは、レーザー照射により試料表面をアブレーションし、生成したエアロゾルをICPイオン源で原子化・イオン化し、質量分析計で検出します。
レーザー照射位置を水平方向に走査することで2D元素イメージを、同一位置に繰り返し照射することで深さ方向プロファイルを取得できます。これらを組み合わせることで、3Dイメージングにも対応可能です。
測定領域は最小ビーム径から数cm角まで対応し、深さ方向についても数十nmから数百µm以上の範囲まで分析できます。このように、面内方向と深さ方向の両方に対応することで、デバイス全体の構造や内部元素分布を把握できます。
広域イメージングと定量評価を支えるガルバノ方式
このような広い領域を分析する場合、レーザー照射位置を精密かつ連続的に制御することが重要になります。
LA-ICP-MSでは、レーザーを面内方向に走査しながら分析しますが、その走査方式としてガルバノ方式を用いることが有効です。
ガルバノ方式では、高繰り返し周波数レーザーとガルバノミラー光学系を組み合わせた「高速多点アブレーション」を実現でき、レーザー光を高速可動ミラーで走査しながら、照射位置を精密かつ連続的に制御します。
この方式により、数mmから数cm角までの測定領域に対応します。また、堅牢なThermo Scientific™ ICP-MSと組み合わせることで、高感度かつ定量的な評価が可能になります。
ガルバノ方式LA-ICP-MSは、広域イメージングと定量評価を実現する技術です。
全固体電池セルの分析事例
全固体電池では、固体電解質内部や電極界面における元素分布が、出力特性や寿命に影響します。そのため、局所的な観察だけでなく、深さ方向を含むデバイス全体の広域評価が重要となります。
本事例では、広さ数mm、深さ約100 µmの3Dイメージングを実施しました。
その結果、電極活物質、集電体、固体電解質からなる多層構造を3次元的に確認できました。

さらに、マトリックスマッチングと組み合わせた、定量濃度に基づくマッピングも実施しました。その結果、不純物元素が高濃度に存在する箇所を明瞭に確認できました。これにより、不純物が局在する異常箇所を把握しやすくなり、試作評価や故障解析をシンプルかつ正確に行えます。

まとめ
ガルバノ方式LA-ICP-MSは、
・広域3D元素イメージング
・サブppbレベルの高感度検出
・定量濃度に基づく分布評価
に対応可能な分析手法です。
全固体電池セルの事例のように、材料やデバイス中の広域の元素分布を定量的に評価できます。
より詳細な技術情報については、下記資料をご覧ください。
LA-ICP-MSによる広域・定量的な深さ方向分析およびイメージング分析
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。



