サンガーシーケンスを利用するアプリケーションとして、DNAバーコーディング(Barcode of Life project)、ショートタンデムリピートを用いたフラグメント解析、Ion AmpliSeq™テクノロジーで
発見されたバリアントの検証などが知られています。
今回は、より一般的なサンガーシーケンシングの概要をご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・サンガーシーケンスの利用者
・サンガーシーケンスの一般的なアプリケーションに興味のある方
・サンガーシーケンスの歴史に興味のある方
▼もくじ
サンガーシーケンシングアプリケーション:de novo
サンガーシーケンシングによるゲノムのde novoシーケンシング(ウイルス、細菌、高等生物)は、今日の現代ゲノミクスの基礎を築きました。バクテリオファージPhiX174が1977年Fred Sanger氏によって初のゲノム配列として決定されました。たった5,386塩基の配列ですが、このバクテリオファージのゲノム配列の決定とその後に続く研究は、歴史的に重要なものになりました。Arthur Kornberg氏はこのバクテリオファージを20年以上にわたって使用し、多くの発見を生み出しました。岡崎令治氏は彼の元ポスドクであり、DNA複製フォークで彼の名前を冠した断片を発見しました。スタンフォード大学のKornberg氏とその同僚Paul Berg氏とPeter Lobban氏は、リガーゼ、エキソヌクレアーゼ、ターミナルトランスフェラーゼ、およびさまざまなポリメラーゼの機能を解明しました。このバクテリオファージから、組み換えDNA技術の原理が確立され、その結果、現在、世界中で2,000億米ドルを超える価値のあるバイオテクノロジー産業が生まれています。
当然のことながら、1977年以降、多数のモデル生物がキャピラリー電気泳動によるさまざまなde novoサンガーシーケンスのアプローチで塩基配列が解読されました。最も単純な手法は、インサートのサイズが100塩基から1500塩基のランダムな「ショットガン」フラグメントを作成し、プラスミドベクターにクローン化したものを解読することです。この方法はインサートの両方向から800塩基ずつ読み取ることで全体の塩基配列を解読できるというものです。
より大きなインサート(コスミドクローンは40 kb、人工染色体[BAC]クローンの場合は100 kbから300 kb)の場合、これらを適切な細菌宿主で増殖・精製し、さらにシーケンシングプラスミドサブクローン化します。この手順は冗長に見えるかもしれませんが、ゲノムをBACクローンのサブセットに分割し、さらにシーケンシングベクターにサブクローン化することで、全体的なゲノムアセンブリがしやすくなるというものです。さらに、未知の挿入配列の最初の読み取りはインサート配列のすぐ外側のベクター配列から始め、読み取りの終わりの配列に対して新たなシーケンシングプライマーを配置して読むプライマーウォーキング法もあります。他にもトランスポゾンを使用してクローン化したインサート配列をランダムに挿入し、インサート全体に散在するシーケンシングプライマーランディング部位としてシーケンスする方法もあります。
プライマーオリエンテーション(1990年代に開発された方法でペアエンドシーケンスとも呼ばれます)はインサートDNA分子の両端のみの配列(例えば800塩基)を読み取り、未知のインサートの両側に一意の800塩基の決定された配列があると想定することで、オーバーラップが発生する場所のマッチングに非常に役立ちます。
サンガーシーケンシングアプリケーション:リシーケンシング
確立された配列(参照配列)を持つ生物の遺伝子またはゲノム領域の配列決定は、この技術が特定の表現型に関与するその生物内の変異体を探すため、リシーケンシングと呼ばれます。通常、遺伝子または領域は、複数の個別のPCR増幅によって選択されます。まず、PCRプライマーに、増幅される対象領域の遺伝子または領域固有の塩基に融合されたユニバーサルシーケンシングプライマーサイトを持たせます。次に、融合プライマー配列をPCR産物のシーケンスプライマーの位置として利用し、続いてサンガーシーケンス法を使用して配列決定します。ときには、遺伝子ファミリーのメンバーである遺伝子、または偽遺伝子またはパラロガス遺伝子を有する遺伝子の場合、高レベルの特異性を備えたプライマーを設計することは困難な場合があります。この時はNested-PCRと呼ばれる手法を用います。この手法は、2セットのプライマーを使用し、外側のペアがいくつかの非常に類似した領域を表すアンプリコンを生成し、次にその最初の増幅産物を2回目のPCRの鋳型とし、優位性のある内側のプライマーペアを設計し増幅するものです。
サンガーシーケンシングアプリケーション:メチル化解析メチレーション
エピジェネティック修飾の分野では、転写の調節は、転写産物のmicroRNA / DICE複合体形成ノックダウンのレベル、DNAトポロジーに影響を与えるヒストン修飾(リジンおよび他のアミノ酸残基のアセチル化およびメチル化)およびCpGアイランドおよび近傍の5′-メチルサイトシンのレベルで発生するといわれています。CpGメチル化を研究するために、メチル化シトシン含有DNAのバイサルファイト処理を活用します。この処理により、メチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換しますが、メチル化シトシンはそのような処理の影響を受けません。このため、配列決定されたときにウラシル残基がチミンとして読み取られることで対象領域のメチル化が正確に解析できます。この方法を利用したメチル化解析をバイサルファイトシーケンス法と呼びます。なお、このアプローチは定量的ではないため、完全なものではありません。
サンガーシーケンシングアプリケーション:16S 微生物同定
未知の培養微生物(細菌と真菌の両方)は、細菌の場合は16Sリボソーム配列、または真菌の26Sリボソーム配列の保存されたD2領域によって識別される場合があります。配列をMicroSeqID™データベースの既知の生物シーケンスと比較することにより、1,700を超える細菌種と1,000を超える真菌種について、マッチングおよび系統樹を自動的に作成できます。また、独自の株情報や新しい株情報を受け入れる柔軟性も備えています。この一連のシステムのサンガーシーケンシングワークフローの詳細と、Applied Biosystems™ MicroSEQ™ Identification Systemの詳細をご覧ください。
まとめ
・de novoシーケンシングは未知のゲノム配列決定には不可欠な手法です。
・リシーケンスは対象領域の変異検出に有用です。
・メチル化解析はエピジェネティック研究に役立ちます
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このケミストリーガイドでは、ワークフローからアプリケーションまでサンガーシーケンスの基本原理を学べます。
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。