サンドイッチELISAの系を自作で構築する場合には、抗体ペアの選定、検量線用のスタンダードタンパクの選定、抗体濃度、反応時間、サンプル調整…と数多くの条件検討が必要です。ステップ数も多いので、何をどう条件検討すればよいか悩む方も少なくありません。
こちらの【ELISAやってみた】ではCapture Antibodyの濃度を検討しましたが、今回はDetector Antibody(検出抗体)にフォーカスし、抗体濃度を変更すると結果がどう変化するかを確認してみました。
▼こんな方におすすめです!
・これから自作ELISAを構築したい
・ELISAの条件検討で悩んでいる
材料と方法
材料:
Invitrogen™IL-6 Mouse Uncoated ELISA Kit with Plates (88-7064-88)
方法:
キットに含まれるDetector Antibodyについて、マニュアル推奨の希釈率がx250のところ、6種類の希釈率で調製しました。
Detector Antibody濃度が高い方から順にx62.5、x 125、x 250、x 500、x 1000、x 2000
キット付属のプロトコルに従い作業を行いました。
検量線用のスタンダードサンプル(7段階)を反応させ、洗浄、その後の反応ステップを実施しました。
Thermo Scientific™ Multiskan™ SkyHigh Microplate Spectrophotometerで450 nmの吸光度を測定し、Thermo Scientific™ SkanIt™ソフトウエアで解析し、4PL検量線を作成しました。
結果
各希釈率における測定値を利用し、作成された検量線は下記になります。抗体濃度依存的に吸光度が変動する結果となりました。
注意:こちらはDetector Antibody濃度以外は十分に検討された条件で得られた結果です。
ただしアッセイ系によっては、結果は変わる可能性があります。
考察
Detector Antibody濃度を上げれば吸光度が高くなる、またDetector Antibody濃度を下げれば吸光度は低くなる、という予想通りの結果でした。ただx 62.5とx 125の検量線では高濃度サンプルの吸光度が非常に高く、またx 2000の検量線の傾きは非常に小さいことが気になります。このような場合、次の2点に着目しましょう。
1) アッセイウインドウの広さは十分か?
ELISAは手技による結果の値のばらつきが生じやすい実験系です。アッセイウインドウが狭いと、些細な吸光度のばらつきが、検量線より濃度に換算した場合に大きなばらつきとなることがあります。そのためできるだけ広いアッセイウインドウをとれるよう、条件検討することが望ましいです。
2) 信頼できる吸光度の値について
Multiskan SkyHigh Microplate Spectrophotometerでは、Abs 0~2.5が信頼性のある吸光度レンジになります。信頼性のある吸光度レンジはご使用になるプレートリーダーによっても異なりますが、Abs 2以上では透過率が1%以下になるため、微弱なシグナルを検出することになります。そのため一般的にはAbs 2までの範囲で測定することが推奨されています。
もちろん検量線を評価する指標は上記に限りません。ただ今回の実験においては、x 62.5とx 125の検量線において、吸光度が2.5を超えているポイントについては検量線に採用するのは望ましくないと言えます。
またx 2000の検量線においては、改めてレプリケートをとって値のばらつきの具合を確認し、信頼できる検量線かを再評価する必要があるでしょう。
また今回の結果では示されませんでしたが、Detector Antibody濃度が高すぎるとバックグラウンド上昇の原因にもなると言われております。ELISAの実験系を構築する場合は、抗体濃度の検討が重要であることをご理解いただけたかと思います。
まとめ
- Detector Antibodyの濃度を変えると、濃度依存的に結果の吸光度も変動する
- アッセイウインドウが十分広いかも要チェック
- 検量線を作成する場合、スタンダードの吸光度が~2.5に収まるよう条件検討を行う
弊社ではELISAだけなく、リアルタイムPCRや細胞培養、ウェスタンブロッティングなど、実際に実験(実習)を行いつつ学べるハンズオントレーニングを各種開催しています。その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。