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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】抗体を購入したままの原液で反応させてみた

【やってみた】抗体を購入したままの原液で反応させてみた

Written by LatB Staff | Published: 05.23.2024

抗体反応させてもシグナルが低く、うまく検出ができない…そんなときは抗体量を増やして再度テストしたくなります。抗体量は多い方がよく反応するのは当然ですが、極端に多くした場合、どんなデータになるのか。気になったのでやってみました!

▼もくじ

  • 材料と方法
  • 結果
  • まとめ
    • 【無料ダウンロード】フローサイトメトリープロトコルハンドブック(英語版)

材料と方法

材料:

  • ヒト子宮頸がん由来細胞株HeLa(2×105 cells/sample)
  • CD44 Monoclonal Antibody (IM7), FITC #11-0441-82, 0.5 mg/mL(PBS, pH 7.2, 0.09% sodium azide)
  • Rat IgG2b kappa Isotype Control (eB149/10H5), FITC, eBioscience #11-4031-82, 0.5 mg/mL(PBS, pH 7.2, 0.09% sodium azide)
  • Invitrogen™ Attune™ Nxt Flow Cytometer

方法:

  1. 遠心分離して上清を除去したHeLa細胞の沈殿にFITC標識CD44抗体またはFITC標識Isotype controlを添加して懸濁。全量は100 μLになるようにPBSと混合して液量を調整した。抗体・Isotype controlの添加量は下表のとおり。
  2. 室温で30分間インキュベート
  3. 遠心分離後、上清を除去して500 μLのPBSに懸濁し、Attune NxT Flow Cytometerで測定
表.使用したCD44抗体とIsotype Controlの量
Sample# 抗体原液
(μL)
抗体量
(μg/test)
備考
1 100 50 原液そのまま
2 50 25
3 20 10
4 10 5
5 5 2.5
6 2.5 1.25
7 1 0.5 メーカー推奨量
8 0.5 0.25
9 0.25 0.125
10 0.125 0.063
11 0.0625 0.031
12 0.03125 0.016
13 0.015 0.08
14 0 0 Negative Control
※Isotype Controlは、対象の抗体と同じアイソタイプで同じ蛍光標識がされた非特異的なイムノグロブリン溶液(今回はFITC標識されたRat IgG2b)。抗体なしのネガティブコントロールに比べ、より正確にバックグラウンドを反映したネガティブコントロールとして用いられる。

結果

まずはヒストグラムプロットをご覧ください(図1)。
CD44抗体で反応させたサンプルは、抗体原液で反応させたものと、推奨量で反応させたものでほとんど違いは見られませんでした。一方、Isotype Controlでは推奨量では抗体なし(ネガティブコントロール:Data not shown)と同等のプロットでしたが、抗体原液ではまるで陽性サンプルと見紛うばかりのプロットとなりました。もちろんこれはバックグラウンドが上がっているためで、やはり抗体原液では濃すぎることが分かりました。

図1. ヒストグラムプロット
抗体原液で反応(上段)、推奨量で反応(下段)

図1. ヒストグラムプロット
抗体原液で反応(上段)、推奨量で反応(下段)

それでは、抗体はどのくらい濃くしてもよいのでしょうか。図2では抗体を原液から約6700倍まで段階的に薄めて反応させ、フローサイトメトリーで得られたシグナル強度(MFI: Mean of Fluorescence Intensity)をグラフにしたものです。

図2. 各抗体量で反応させたシグナル強度
MFI値のプロット図(上段)とCD44抗体とIsotype ControlのMFI比(下段)

図2. 各抗体量で反応させたシグナル強度
MFI値のプロット図(上段)とCD44抗体とIsotype ControlのMFI比(下段)

Isotype Controlでは推奨量の5倍(5 μL/test)まではバックグランド値もほぼ変わらないことが分かりました。一方、CD44抗体は推奨量で反応させさたサンプルに比べ、5倍量の場合はシグナル値が上昇しているようですが、その差はわずかでした。
CD44とIsotype Controlのシグナル値の比、いわゆるSN比(図2下段)を見ると、推奨量である1 μL/testを含む0.5~5 μL/testの範囲でおおむねピークに達していました。つまり今回の実験系では、この範囲が適した抗体量ということが分かりました。
なお抗体が少なくても、例えば推奨量の10分の1程度でもIsotype Controlに比べて明瞭にヒストグラム上でCD44陽性であることが分かりました(Data not shown)。定量ではなく、陽性か陰性か分かればよい場合は節約のために薄めることもできそうです。
ただしこの範囲は、使用する抗体や蛍光色素、対象のサンプル(抗原量)によっても変わります。そのため初めてのサンプルを測定する際にはまずは推奨量でテストし、必要に応じて増減させて適切な抗体量を決定することをお勧めします。

まとめ

  • 抗体の原液はやはり濃すぎた
  • 抗体の反応には、適正な量の範囲がある
  • 陽性か陰性か知るだけなら薄めることもできるが、どれだけ薄めてよいかは十分な事前検討が必要

いかがでしたでしょうか。今回は抗体を原液で反応させるという、メーカーでないともったいなくてできないことをやってみました。1本100 μLの抗体製品だったので、1サンプルに1本まるごと投入という暴挙でした。やましいことはないのですが、それでもなんとなく上司に隠れて実験しました。

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