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顕微FT-IR(顕微赤外分光光度計)を用いた多層フィルム分析(2)

Written by LatB Staff | Published: 12.08.2022

食品パッケージなどに使用されているポリマーフィルムは、保存性などの機能を持たせるために、数種類のポリマーを組み合わせて使用されている製品が多くあります。このような多層フィルムの開発、品質管理、リバースエンジニアリングには、それぞれの層を構成するポリマーの成分の分析が重要であり、この分析に顕微FT-IR(顕微赤外分光光度計)が広く用いられています。
顕微FT-IRでは、波長により変化しますが、一般的に数μm~10 μm程度の空間分解能で分析することが可能です。「顕微FT-IR(顕微赤外分光光度計)を用いた多層フィルム分析(1)」では、透過法を用いた多層フィルムの分析について記載しましたが、ここでは透過法よりも高空間分解能である顕微ATR法により多層フィルムの分析を行った例を紹介します。

Nicolet iN10赤外顕微鏡

Nicolet iN10赤外顕微鏡

多層フィルムの前処理

顕微FT-IRでATR測定を行う場合、当社の製品には2種類のアクセサリーがあります。1つ目は顕微鏡観察後に対物カセグレンにATRクリスタルを取り付けて、顕微鏡ステージを上昇させて接触する「スライド式ATR」(図1)です。

2つ目は顕微鏡ステージにATRアクセサリーを取り付けてイメージ測定を行う「イメージングATRアクセサリー」(図2)です。イメージングATRアクセサリーは、アクセサリーに備え付けのサンプルステージに載せたサンプルとATRクリスタルを接触させた状態で顕微鏡ステージを水平方向に移動させることで、ATRクリスタル内部の赤外光の集光位置を動かし、サンプルのイメージ測定を行うものです。
スライド式ATRが一点ずつ接触させながら測定するのに対して、イメージングATRでは1回のイメージ測定で1回接触させるのみになります(図3)。このため、スライド式ATRで多層フィルムの断面のイメージ測定を行う場合、ATRクリスタルの接触によってサンプル形状が変わらないようにするため、多層フィルムを包埋する必要があります。一方でイメージングATRアクセサリーを使用する場合は、薄片化したフィルムをそのまま測定することも可能です。

図1 スライド式ATR 「Tip-ATR」

 

FTIF ATR accessory

図2 イメージングATRアクセサリ

 

FTIR ATR difference

図3 イメージングATRアクセサリとスライド式ATRの測定方式の違い

 

スライド式ATRが測定点ごとにサンプルに接触させるのに対し(左)、イメージングATRは接触させた範囲内で赤外光の集光位置を移動させて測定します。

ここでは、イメージングATRアクセサリーを用いて多層フィルム切片を測定した例を紹介します。測定には、ミクロトームで20 μmの厚さに薄片化した多層フィルムを用いました。
測定条件は以下のとおりです。
・測定機器:Thermo Scientific™ Nicolet™ iN10赤外顕微鏡
・波数分解能:8 cm-1
・積算回数:1回
・測定点数:2144点
・ステップサイズ:X-6 μm, Y-2.5 μm
・測定時間:約 5 分

FTIR Film

図4 積層フィルム断面の顕微鏡観察画像(□:測定エリア)

多層フィルムの顕微ATRマッピング測定と解析

図5に、図4に示した多層フィルム薄片のATRマッピング測定から得られたデータについて3000~2800 cm-1の波数範囲のピーク面積から作成した分布イメージを示します(図5上)。また、赤、橙、青色の各層から得られたスペクトルを示します(図5下)。

図5から、各層の成分ごとに2900 cm-1付近のピーク強度が異なることが確認され、上記のピーク面積から作成した分布イメージにより、この多層フィルムがPEを中心にナイロンとPETが両端側に重なった構成であることが確認されました。

FTIR_Film_2

FTIR Film3

図5 多層フィルム薄片のATRマッピング測定結果

上:3000~2800 cm-1のピーク面積プロファイルから作成した各層の分布イメージ
下:多層フィルム各層から得られたATRスペクトル(赤:PE、橙:ナイロン、青:PET)

さらに、得られたマッピングデータの1800~1000 cm-1の波数範囲を用いて多変量カーブ分解(MCR)による解析を行った結果を図6に示します。MCRにより図5に示した3成分に加えてナイロンとPETの間の成分が確認され、得られたMCR成分スペクトルのライブラリ検索結果を行った結果、ポリエステル系の接着剤が多層フィルムに使用されていることが分かりました。

このように、ATRイメージングアクセサリーを用いることで、透過測定では測定が困難な接着層についても、多層フィルムの形状をあまり変えることなく測定し、検出することが可能です。
FTIR ATR film1

FTIR Imaging Film2

図6 マッピングデータの1800-1000cm-1を用いたMCRによる解析結果

上:MCRによって分離された4成分の分布イメージ(黄:PE、青:ナイロン、赤:接着層、緑:PET)
下:MCRによって分離された接着層とPETの成分スペクトルとそれぞれのライブラリ検索結果

まとめ

今回、多層フィルムの分析方法として、高分解能で測定可能な顕微ATRとイメージングATRアクセサリーを用いたマッピングを紹介しました。

当社の顕微FT-IR Nicolet iN10赤外顕微鏡およびThermo Scientific™ Nicolet™ RaptIR赤外顕微鏡は、今回紹介したMCRのような多変量解析を利用したマッピングデータの解析が可能であるため、通常のピーク高さやピーク面積によるイメージ作成だけでなく、分かりにくい混合物の成分の検出とその分布イメージを見ることができる可能性が有ります。

当社FT-IR「Nicolet iN10」についてはこちらをご参照ください。

 

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