【簡単解説!】AAV製造におけるアフィニティ樹脂の活用法

近年、遺伝子治療の分野が急速に進展しており、その中でもアデノ随伴ウイルス(AAV)の利用が注目されています。AAVを用いた治療法の成功には、高純度かつ大量のAAVを効率よく精製することが不可欠です。この記事では、AAV精製におけるアフィニティ樹脂のメリットを、製造技術者や初心者にもわかりやすく解説します。

▼こんな方におすすめです!

  • アフィニティクロマトグラフィー、AAVを含むウイルスベクターの精製に関心がある方
  • 精製プロセスの効率化に取り組んでいる方
  • AAVを使用した遺伝子治療の開発に携わっている方

アフィニティ樹脂の重要性

アフィニティ精製は、特定の分子を選択的に捕捉する技術で、AAV精製においては短時間で高純度のウイルス粒子を得るために非常に重要です。特に、当社のThermo Scientific™ POROS™ CaptureSelect™ AAVX Resinは、さまざまなAAVセロタイプに対して高い結合容量を持ち、効率的な精製を実現します。

広範な特異性と高い結合容量

POROS CaptureSelect AAVX Resinは、ネイティブなAAVやエンジニアドされたカプシドを認識する広い特異性を持っています。これにより、さまざまなAAVセロタイプを一つの方法で精製することが可能となり、プラットフォーム化が実現します。また、短い滞留時間でも高い動的結合容量を有するため、生産性が向上します。

まず、複数のセロタイプで静的結合実験をしました。AAVの定量はqPCRで行いました。評価した全てのセロタイプに結合することが確認され、幅広いセロタイプに対応できることが示唆されました(図1)。

POROS CaptureSelect AAVX Resinの静的結合実験

図1. POROS CaptureSelect AAVX Resinの静的結合実験

次に動的結合容量について調べました。以下図2は、縦軸が動的結合容量(10%ブレークスルー)、横軸が滞留時間を示しています。AAVXは複数のセロタイプで高い動的結合容量が確認できました。また、短い滞留時間であっても高い結合容量を実現しています。

POROS CaptureSelect AAVX Resinの動的結合実験

図2. POROS CaptureSelect AAVX Resinの動的結合実験

 

スケーラビリティとプロセス最適化

POROS CaptureSelect AAVX Resinは、スケールアップしやすく、大型バイオリアクターにも対応可能です。その結果、大規模生産においても効率的な精製が実現します。生産スケールによる精製効率への影響を確認するため、二つの異なるセロタイプ、複数の生産スケールで比較しました。その結果、同等の回収率が確認されました(図3)。

POROS CaptureSelect AAVX樹脂でベクター生産スケールによる回収率の比較

図3. POROS CaptureSelect AAVX樹脂でベクター生産スケールによる回収率の比較

 

洗浄と溶出の最適化

AAV精製では、開発品ごとに洗浄と溶出条件を最適化することも重要です。

下記グラフで示しているように、POROS CaptureSelect AAVX Resinは、pH 9.0の洗浄条件では、AAVの安定性を保ちながら、不純物を効果的に除去でき、pH 2.5以下の溶出条件にアルギニンを加えると、回収率を80~90%に向上させることができます。

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POROS CaptureSelect AAVX Resinで洗浄バッファーの最適化例

図4. POROS CaptureSelect AAVX Resinで洗浄バッファーの最適化例

AAV6を使用して11種の異なる洗浄バッファーを検討しました。それぞれpHやNaCl、添加剤の濃度が異なります。図4のグラフ上部にそれぞれの条件での回収率が記載されています。このケーススタディではpH 7.5およびpH 9かつ1.5 M NaClのバッファー(Run4, Run7)で良い回収率が確認されました。このように開発品ごとに最適化をすることで回収率の向上が期待されます。

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POROS CaptureSelect AAVX Resinで溶出バッファーの最適化例

図5. POROS CaptureSelect AAVX Resinで溶出バッファーの最適化例

図5のケーススタディでは最も効率的なベクター回収率はグリシンpH 2.0と2.5でした。またpH 3.0であっても添加剤を加えることで近い回収率が確認されています。

POROS CaptureSelect AAVX Resinは、高い不純物除去能力を持ち、モデルウイルスのクリアランスも効果的に行います。これにより、製品の純度と安全性が確保されます。6種の異なるモデルウイルスでウイルスクリアランス試験を実施しました。すべてのウイルスで効果的なクリアランスが確認されました(図6)。

図6. POROS CaptureSelect AAVX Resinでのウイルスクリアランス事例

図6. POROS CaptureSelect AAVX Resinでのウイルスクリアランス事例

まとめ

いかがでしたか?

AAV製造におけるアフィニティ精製は、効率的なウイルス粒子の精製に欠かせない技術であり、遺伝子治療の未来に向けた大きな前進となります。当社のPOROS CaptureSelect AAVX Resin は、その高い性能とスケーラビリティにより、多様なAAVセロタイプに対応した精製プラットフォームを提供します。今後のAAV精製技術の進展により、さらに効率的で高品質な遺伝子治療が実現されることを期待しています。

当社ではリクエストフォームより、精製に関する資料請求や、お客さまの課題に対するご相談などを承っております。ぜひ、下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

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