【やってみた】アガロースゲル電気泳動 ゲル染色方法の比較

アガロースゲル電気泳動後のゲル染色にはいくつか方法が存在し、研究室ごとに独自の手法が用いられていることも多く、その方法を継続して実施されている方も多いのではないでしょうか(ちなみに筆者は後染め派)。果たして、その染色方法は効率的なのでしょうか?
今回は、以下4つの染色方法について、その効果を比較検証しました。

  1. 先染め(ゲル作製時に、染色試薬を添加し作製)
  2. 後染め(泳動後、染色液に浸潤し染色)
  3. 泳動バッファー染め(泳動バッファーに染色試薬を添加、泳動中に染色)
  4. サンプル染め(ローディング時のサンプルに、染色試薬を添加)

使用試薬

  • アガロース
  • Invitrogen™ UltraPure™ Agarose-1000
    製品番号:16550100
    今回は1%アガロースゲルを作成

  • TAE buffer
  • Invitrogen™ TAE (10X), RNase-free
    製品番号:AM9869
    ※超純水にて1×に希釈し使用

  • 染色試薬
  • Invitrogen™ SYBR™ Safe DNA Gel Stain
    製品番号:S33102

  • サイズマーカー
  • Invitrogen™ 1kb plus DNA Ladder
    製品番号:10787018

  • Loading Dye
  • Invitrogen™ Track-it™ Cyan/Orange Loading Buffer
    製品番号:10482028

  • PCR産物
  • 850 bp増幅産物

準備

【1%アガロースゲル作製】
ゲル厚さを揃えるため、すべて16 mL/枚で作製しました。

    SYBR safe DNA Gel Stain 不含有
    1. Ultra Pure Agaroseを1×TAEに溶解(1%濃度)
    2. 電子レンジで融解
    3. 16 mLずつ型に分注
    SYBR safe DNA Gel Stain 含有
    1. Ultra Pure Agaroseを1×TAEに溶解(1%濃度)
    2. Total volumeに対して1/10000量のSYBR Safe DNA Gel Stainを添加
    3. 電子レンジで融解
    4. 16 mLずつ型に分注

【PCR産物・サイズマーカー希釈】
PCR産物 : Nuclease Free Waterで以下の濃度3段階に希釈

    1. 1/5
    2. 1/10
    3. 1/20

サイズマーカー 1kb plus DNA Ladder :Nuclease Free Waterで以下の濃度に希釈

  • 1/10

【SYBR Safe含有 1×TAE調製】※2.後染め、3.泳動バッファー染め用
1×TAEのVolumeに対して、1/10000量のSYBR Safe DNA Gel Stainを添加

【SYBR Safe希釈】※4.サンプル染め用
SYBR Safe DNA Gel Stain: 1×TAEで以下の濃度に希釈

  • 1/10

【泳動サンプル】
1.先染め、2.後染め、3.泳動バッファー染め

  • Marker
    1kb plus DNA Ladder 1/10 10 µL + Track iT 2 µL/well
  • サンプル
    希釈済みPCR産物 10 µL + Track iT 2 µL/well

4. サンプル染め

  • Marker
    1kb plus DNA Ladder 1/10 10 µL + Track iT 2 µL + SYBR Safe 1/10 1 µL/well
  • サンプル
    希釈済みPCR産物 10 µL + Track iT 2 µL + 1/10 希釈SYBR Safe 1 µL/well

ゲル電気泳動

全ての泳動は、100V、30分の条件で行いました。
撮影のタイミングを揃えるため、以下の手順でサンプルをローディング、泳動を実施しました。

    (1)2.後染め

    アガロースゲル SYBR safe 不含有 1%アガロースゲル
    泳動バッファー 1×TAE
    泳動Marker 1kb plus DNA Ladder 1/10 10 µL + Track iT 2 µL/well
    泳動サンプル 希釈済みPCR産物 10 µL + Track iT 2 µL/well

    30分泳動後、SYBR Safe含有 1×TAEで30分染色(静置)

    (2)1で30分染色している間、他3パターンを同時に泳動
    (1人では限界があるため、2人体制で実施しました)


    1.先染め

    アガロースゲル SYBR safe 含有1%アガロースゲル
    泳動バッファー 1×TAE
    泳動Marker 1kb plus DNA Ladder 1/10 10 µL + Track iT 2 µL/well
    泳動サンプル 希釈済みPCR産物 10 µL + Track iT 2 µL/well

    3.泳動バッファー染め

    アガロースゲル SYBR safe 不含有1%アガロースゲル
    泳動バッファー 1×TAE (1/10000 SYBR Safe添加
    泳動Marker 1kb plus DNA Ladder 1/10 10 µL + Track iT 2 µL/well
    泳動サンプル 希釈済みPCR産物 10 µL + Track iT 2 µL/well

    4.サンプル染め

    アガロースゲル SYBR safe 不含有1%アガロースゲル
    泳動バッファー 1×TAE
    泳動Marker 1kb plus DNA Ladder 1/10 10 µL + Track iT 2 µL + 1/10希釈 SYBR Safe 1 µL/well
    泳動サンプル 希釈済みPCR産物 10µL + Track iT 2 µL+ 1/10希釈 SYBR Safe 1 µL/well

泳動写真

ゲルの撮影は、Invitrogen iBright Imaging Systems を使用し、染色条件の違いによる効果を比較するため、同じ露光条件下で同時に撮影を行いました(図1)。

図1. 電気泳動写真
M: 1kb plus DNA Ladder
1/5: 1/5希釈PCR産物
1/10: 1/10希釈PCR産物
1/20: 1/20希釈PCR産物

まとめ

効果的な染色条件の検証という観点から、バンドの濃淡で比較した結果、1.先染め、2.後染め、3泳動バッファー染めの3つの方法では顕著な差は見られませんでした。泳動写真を見た瞬間、「あれ?意外と同じように染まっている!」というのが率直な感想でした。

一方、4.サンプル染めに関しては、SYBR Safe DNA Gel Stainの添加量を増やすことで、バンドの検出がより鮮明になると考えられますが、その分SYBR Safe DNA Gel Stainの消費量が増加するため、コストパフォーマンスの面で課題が残ります。

1.先染めではバックグラウンドが上がる(ゲルが光る)のでは、と予想していましたが、今回のSYBR safe DNA Gel Stainを使用した場合においては、バックグラウンドに関して大差が見られませんでした。ただ、やはりゲル自体を染色していない4.サンプル染めと比較すると、1~3の方法ではゲルを染色しているため、バックグラウンドが若干高いことが分かります。

また、SYBR safe DNA Gel Stainのユーザーガイドにも記載されている通り、1.先染めは、バンドの泳動速度が遅れた結果となりました。

3.泳動バッファー染めに関しても、泳動にやや遅延が見られました。泳動遅延は、プラスに荷電した染色色素がDNAと逆向きに泳動される、ということが要因で起こります。さらに、結合した色素がDNAの移動度を変え(ゲルシフト)、その結果正しいサイズの位置に泳動されない、という事象も発生するため注意が必要です。

3.泳動パッファー染めの泳動写真では、低分子のバンドがより鮮明に染色されております。染色色素がDNAとは逆向きに泳動されることから、プラス側の電極に近い方からSYBR safe DNA Gel Stainがゲル内に入り込み、低分子側のバンドが、より染色されやすい状況になっているのでは、とも推測されました。

いかがでしたでしょうか。今回の検証は、試薬調製後、直ちに検証を開始しました。
なお、SYBR safe DNA Gel Stain含有ゲルや、泳動バッファーを作り置きした場合は、結果が変わる可能性がありますので、この点ご注意ください。

 

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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