【やってみた】時間をおいて発色後のELISAプレートを測定してみた

ELISAは抗原分子を感度良く定量的に測定できる実験手法で、抗体反応後に発色反応させた96ウェルプレートをプレートリーダーで吸光度測定する方法が一般的に行われています。発色反応後はあまり時間を置かずにプレートリーダーで測定することが望ましいとされますが、他のラボのプレートリーダーを借りて測定するなど、場合によっては発色反応後、すぐに測定できない方もいるのではないでしょうか。

そんなみなさまのために、発色後のELISAプレートを経時的に吸光度測定して、どれくらいの時間までであれば影響が少ないのか、検証してみました!

材料と方法

材料:

方法:

  1. ヒトp38 を検出するELISAキット(製品番号 KHO0061)の説明書に従い、2種のJukart細胞Lysateサンプルを発色反応まで行う(n=8)
  2. 反応停止液を入れた後、0分~48時間まで経時的に吸光度を測定する

結果

早速結果を見てみましょう。図1からお分かりのように、吸光度が中程度のサンプル(middle)と下限付近のサンプル(low)の両方が、時間とともに吸光度が低下しています。また、その下がり方もおおむね同様であることが分かります。
図2では、どのくらいの時間まで同じ割合で吸光度が低下しているか、middleサンプルとlowサンプルの比で確認してみました。棒グラフを見るとおおむね4時間くらいまで大きな変化はないように見えますが、数値をよく見たところ、2時間を超えると徐々に比が大きくなることが分かります。

図1. ELISA発色反応停止後の経時的な吸光度(450 nm)の変化
吸光度が中程度のサンプル(middle)と下限付近のサンプル(low)の両方が、時間とともに吸光度が低下している

図1. ELISA発色反応停止後の経時的な吸光度(450 nm)の変化
吸光度が中程度のサンプル(middle)と下限付近のサンプル(low)の両方が、時間とともに吸光度が低下している

表1で吸光度の細かい数値を見ると、発色後1時間経過するごとにおよそ10%ずつ、吸光度が低下していました。その減少割合は初期の吸光度によらず、数時間内であればmiddleサンプルもlowサンプルも同程度の低下率でしたが、24時間、48時間後にまでなるとlowサンプルの方が顕著に低下していました。

表1. 吸光度および吸光度比の経時変化
吸光度比では2時間を過ぎたあたりからわずかながら増加が見られる
経過時間 0(h) 0.5(h) 1(h) 1.5(h) 2(h) 2.5(h) 3(h) 3.5(h) 4(h) 7.5(h) 24(h) 48(h)
吸光度
(Average,n=8)
middle 0.947 0.918 0.874 0.801 0.746 0.703 0.662 0.619 0.588 0.417 0.166 0.068
low 0.151 0.148 0.140 0.129 0.120 0.112 0.105 0.096 0.090 0.054 0.014 0.006
減少率
(0hを100%とする)
middle 100% 97% 92% 85% 79% 74% 70% 65% 62% 44% 18% 7%
low 100% 98% 93% 85% 79% 74% 69% 63% 60% 36% 10% 4%
図2. 吸光度が中程度のサンプル(middle)と下限付近のサンプル(low)の吸光度比の経時変化
4時間くらいまでは大きな変化は見られない

図2. 吸光度が中程度のサンプル(middle)と下限付近のサンプル(low)の吸光度比の経時変化
4時間くらいまでは大きな変化は見られない

ここで、この比が定量結果にどのように影響するか考えてみましょう。仮に、定量実験において全てのウェルで同じ割合で吸光度が低下した場合、定量値はほとんど変化しないと考えられます。これは定量値を算出する物差しとなる検量線のサンプルと測定したいサンプルの比が変わらないためです。このことから、今回の検証でmiddleサンプルとlowサンプルの比が安定している時間内であれば、定量値への影響が限定的で、測定可能であると考えられます。
実は今回使用したキットの説明書には「反応停止後2時間以内に測定する」との記載があります。今回の検証データは説明書の記載内容の元データではありませんが、ちょうどその記載が正しいことが示されました。
ただし、今回のデータから2時間経過することで20%程度の吸光度低下がみられましたが、検出限界に近い吸光度のウェルでは図2の24時間、48時間のデータのように、この変化量が変わる可能性があります。そのため、反応停止後は2時間以内に測定すればよいと考えるのではなく、できるだけ速やかにプレートリーダーでデータを取ってしまうことをおすすめします。
また、ELISAキットによっては今回使用したTMBではなくABTSなど他の発色試薬が使用されることがあり、その場合は今回の検証結果は当てはまらない点にもご注意ください。

まとめ

  • ELISAの発色反応停止後、時間経過とともに吸光度が低下した
  • 検証データおよび製品説明書から、反応停止後2時間程度までは定量値に大きな影響はないと示唆された(発色試薬がTMBの場合)

いかがでしたでしょうか。
すぐにプレートリーダーが使えない環境でELISA実験をされている方にとって有用なデータをお示しできたのではないでしょうか。
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