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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分析・測定関連 / 定量プロテオミクスとは?|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第20回

定量プロテオミクスとは?|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第20回

Written by LATB Staff | Published: 03.04.2020

今回は、前回に引き続きタンパク質の質量分析に関する基本概要についてご紹介します。主に定量プロテオミクスについてご紹介します。
質量分析(”mass spec” または MS)は、プロテオミクスおよび新薬開発において強力な分析ツールです。質量分析は、化合物の構造と化学的な性質を明らかにすることによって、既知および未知の化合物の同定と定量を可能にします。今回はタンパク質の質量分析に関する基本概要についてご紹介します!

▼もくじ [非表示]

  • 質量分析による相対定量と絶対定量
  • ラベルフリー定量
  • Metabolic標識法
  • Isotopic標識法
  • Isobaric標識法
  • スパイク法
  • タンパク質実験関連、その他の記事はこちら

質量分析による相対定量と絶対定量

相対定量は、サンプル中の目的ペプチドについて、何らかの処理をした別のサンプル中の目的ペプチドと比較してその相対的な存在レベルを分析する方法です。例えば、2種類のサンプルを別々に質量分析し、それぞれのサンプルで共通なペプチドのスペクトルを比べてそのペプチド(タンパク質)の存在比を解析するラベルフリー定量法があります。またコストや時間がかかるものの、より比較精度を高める方法として、安定同位体標識を行う方法があります。例えば、 2種類のサンプルについて、一方は重い原子を、もう一方は軽い原子を持つペプチドを用意します。一方に対して化学的あるいは物理的な処理を行った後、または両方に対してそれぞれ異なる化学的あるいは物理的な処理を行った後、両者のタンパク質サンプルを混合してLC-MS(またはLC-MS/MS)を行うと、安定同位体の種類が異なるだけの化学的には同じペプチド分子が同じ挙動で分離、分析されるため、容易に両者の存在比を比較できます。安定同位体標識には、生細胞の代謝を利用して導入する方法、抽出タンパク質(またはペプチド)に酵素反応または化学反応を利用して標識する方法が用いられます。

一方、絶対定量では、重い(または軽い)安定同位体で標識された濃度既知のペプチド(目的タンパク質配列の一部に相当するペプチド)を解析サンプルに添加(スパイク)します。LC-MS(またはLC-MS/MS)を行うと、相対定量における安定同位体標識ペプチドと同様、化学的には同じペプチド分子が同じ挙動で分離、分析できるため、定量したいペプチドとスパイクしたペプチドの存在比が分析できます。さらに、相対定量と異なり標的ペプチドの濃度が分かっているため、安定同位体標識ペプチドの検量線における線形領域では、濃度既知のペプチドとの存在比から目的ペプチドの濃度が定量できます。

protein-basic20-fig

図 定量プロテオミクスの代表的手法。軽い安定同位体で標識されたタンパク質は赤色、重い安定同位体で標識されたタンパク質は青色で記載しています。

ラベルフリー定量

名前の通り標識を行わずにサンプルを直接解析する方法です。

  • 他の手法に比べて低コスト
  • 比較サンプルを最初から最後まで別々に処理、解析するため実験操作によるアーティファクトな影響が生じる傾向
  • タンパク質発現量の変化が小さいと相対定量が困難

Metabolic標識法

安定同位体源を培地に添加し、培養中に代謝により取り込ませる方法です。

  • 通常、6-8回の継代培養で安定同位体を効率よく(>90%)取り込み可能
  • 実験上流で標識するため実験操作によるアーティファクトな影響は僅少
  • タンパク質発現量や翻訳後修飾の変化が小さい場合でも相対定量が可能
  • アルギニンからプロリンへの代謝によりプロリンが標識されると解析が複雑
  • 増殖しにくい細胞では困難
  • 比較細胞数は安定同位体の数(組合せ)に限定

Isotopic標識法

酵素反応を利用した同位体標識する方法や同位体を持つタグを化学的に標識する方法です。

  • 臨床サンプル(血清や組織など)のようにMetabolic標識が出来ない場合でも標識可能
  • タグラベル法の場合、標識ペプチドのみ精製できるためサンプルの複雑さを解消可能
  • 酵素反応を利用した安定同位体原子の置換や付加反応では時間所要またはペプチドイオン状態の変化が問題

Isobaric標識法

化学的性質や総質量が同じタグで、タグの一部がMS/MSによってCID (collision-induced dissociation)で切断できるタグを標識する方法です。切断により生じるタグ断片は標識試薬ごとに安定同位体の置換率が異なりその存在比率が分かるため、元のタグで標識されたペプチドの存在比率が分析できます。

  • 他の方法に比べて、多くの検体間で比較可能
  • LC-MS/MSにより MS1でペプチドの同定を、MS2で存在比を分析可能

スパイク法

安定同位体を含む合成ペプチドを既知量サンプルに添加(スパイク)し、このペプチドを内部標準品としてサンプル中のペプチド量を定量します。市販品としてカスタム合成ペプチド AQUAペプチド(absolute quantitation ペプチド)があります。

  • 絶対定量が可能

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