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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 共免疫沈降実験におけるバッファーについて|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第23回

共免疫沈降実験におけるバッファーについて|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第23回

Written by LatB Staff | Published: 03.04.2020

今回も、前々回と前回に引き続き、(共)免疫沈降法に関する基本情報やポイントについてご紹介します。

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  • (共)免疫沈降に関係するファクター
    • 結合バッファー
    • 洗浄バッファー
    • 溶出バッファー
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  • 共免疫沈降法関連、その他の記事はこちら

(共)免疫沈降に関係するファクター

前回もご説明しましたが、(共)免疫沈降法は比較的シンプルな手法ですが、それでも下の表に示すような複数のファクターが関係しています。実験を成功させるためにも各ファクターについて理解し、マテリアルの選択、抗体固定化やバッファーの調製を、それぞれ目的に合わせて行うことが望まれます。以下では、それぞれのファクターについて個別にご紹介します(今回は『結合バッファー』、『洗浄バッファー』、『溶出バッファー』の各種バッファーについて説明します。『実験フォーマット』〜『ライセートの前処理』については前々回、『抗体の固定化』については前回をご覧ください。)。

ファクター 関連する内容
実験フォーマット カラム法(スピンカラム、オープンカラム)、バッチ法
担体の種類 アガロース担体、アクリルアミド担体、磁性担体
反応手順 抗原抗体反応、抗体の担体への結合
ライセートの前処理 非特異結合
抗体の固定化 固定化方法、向き、量
結合バッファー 抗原抗体反応条件、タンパク質複合体形成条件
洗浄バッファー 界面活性剤、塩、還元剤
溶出バッファー pH、塩、変性剤

結合バッファー

免疫沈降における結合バッファーの条件として、抗原と抗体とのアフィニティー相互作用を阻害しないことが求められます。もちろん、共免疫沈降の場合は、IP抗体と反応する抗原(baitタンパク質)が相互作用する別のタンパク質(preyタンパク質)との反応を阻害しない条件が必要になります。通常、抗原と抗体のアフィニティーは高いため、中性付近の一般的なバッファー(PBSやTBS)が使用できます。しかしbaitとprey間のアフィニティーはタンパク質によって大きく異なるため、pHや塩濃度の至適条件を検討する必要があります。また相互作用に補因子が必要な場合は結合バッファーに補因子を添加する必要があります。界面活性剤や還元剤の存在により反応が阻害される場合にはそれらの除去も必要になります。

洗浄バッファー

洗浄バッファーは、抗原抗体反応やタンパク質間相互作用を維持しつつ、非特異的に結合しているタンパク質を除去できるバッファーが理想的です。通常、PBSやTBSのような生理学的条件に近いバッファーをベースとして、必要に応じて界面活性剤(例:0.5-1% NP-40, Triton-X100, CHAPS)を添加します。もしタンパク質間相互作用のアフィニティーが比較的高ければ、塩濃度を高めてイオン結合や静電気的結合を解離させることで、非特異的な結合をしているタンパク質の除去を行うことも可能です(例:0.5-1 M NaCl)。

溶出バッファー

免疫沈降における溶出では、ウェスタンブロッティングによる検出を前提として、SDSサンプルバッファーを利用することも可能です。SDSサンプルバッファーを利用すると、変性と還元作用により効率よくタンパク質を回収できます。ただし変性作用が大きいためIP抗体の再利用ができない点や下流の実験における回収タンパク質の利用方法に制限が生じる点がデメリットです。

変性作用の少ない溶出バッファーとして一般的に広く利用されるバッファーが0.1 Mグリシン pH2.5-3のような酸性のバッファーです。このバッファーでは多くの場合、抗原と抗体間の結合を解離させることができます(この条件でも解離しない抗 原抗体反応もあります)。溶出液はすぐに中和バッファー(1M Tris•HCl, pH 8.5など)と混合することによりタンパク質への影響を抑えることができます。しかしながらこの条件でも短時間酸性条件にさらされることで溶出タンパク質がダメージを受けることもあります。

変性作用の最も少ない溶出バッファーとして、塩濃度の高いバッファーも利用できます。弊社では、pH 6.6のGentle Ag/Ab Elution Bufferをご用意しています。ただし溶出効率はSDSサンプルバッファーや0.1 Mグリシン pH2.5-3より落ちることがあります。

その他、さまざまな溶出バッファーが知られています(表2)。反応系や下流の実験に合わせてご検討ください。

利用する条件 例
低pH IgG Elution Buffer
100 mM Glycine•HCl, pH 2.5-3.0
100 mM Citric acid, pH 3.0
 高pH 50-100 mM Triethylamine または Triethanolamine, pH 11.5
150 mM Ammonium hydroxide, pH 10.5
0.1 M Glycine•NaOH, pH 10.0
 イオン強度 Gentle Ag/Ab Elution Buffer
5 M Lithium chloride
3.5 M Magnesium または Potassium chloride
3.0 M Potassium chloride
2.5 M Sodium または Potassium iodide
0.2-3.0 M Sodium thiocyanate
0.1 M Tris-acetate with 2.0 M NaCl, pH 7.7
 変性 2-6 M Guanidine•HCl
2-8 M Urea
1.0 M Ammonium thiocyanate
1% Sodium deoxycholate
1% SDS
 有機溶媒 10% Dioxane
50% Ethylene glycol, pH 8-11.5
 競合剤 >0.1 Mのリガンドやアナログ

※Gentle Ag/Ab Elution Buffer はリン酸バッファー(特にリン酸カリウムを含むバッファー)と混合すると不溶性の沈殿が生じてしまいます。したがって(共)免疫沈降(または抗体精製)においてGentle Ag/Ab Elution Bufferを使用する場合は、結合バッファーとして非リン酸バッファー系のバッファーまたは弊社のGentle Ag/Ab Binding Buffer, pH 8.0のご使用をおすすめします。

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共免疫沈降法関連、その他の記事はこちら

  • 【第8回】in vitro タンパク質相互作用を解析する方法まとめ
  • 【第9回】共免疫沈降法の「問題点」と「改善策」まとめ
  • 【第12回】さまざまな抗体精製法をまとめてみた その1
  • 【第13回】さまざまな抗体精製法をまとめてみた その2
  • 【第14回】みんなが知りたいプロテインA/G/Lの性質
  • 【第21回】共免疫沈降実験の基本的な実験手順
  • 【第22回】共免疫沈降実験における抗体の固定化

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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