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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 共免疫沈降法の「問題点」と「改善策」まとめ|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第9回

共免疫沈降法の「問題点」と「改善策」まとめ|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第9回

Written by LATB Staff | Published: 03.04.2020

今回は、相互作用解析の代表的な手法である共免疫沈降法について、その問題点と改善策を紹介します!

▼もくじ [非表示]

  • はじめに
  • 従来の共免疫沈降法における問題点
    • 抗体フラグメントによる検出阻害
    • 免疫沈降抗体の不活性化
    • 非特異タンパク質のコンタミネーションとサンプルロス
  • 共免疫沈降法の問題点を改善するためのアプローチ
    • 検出阻害を解消するためのアプローチ
    • 免疫沈降抗体の不活性化を抑えるためのアプローチ
    • コンタミネーションとサンプルロスを抑えるためのアプローチ
  • 最後に
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  • 共免疫沈降法関連、その他の記事はこちら

はじめに

第8回で簡単に説明した共免疫沈降法の原理をおさらいしておきます。
[ss url=”https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/protein-basic8/” width=”180″ class=”alignleft” alt=”知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第8回” rel=”nofollow” ext=0 title=”知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第8回 in vitro タンパク質相互作用を解析する方法まとめ” caption=”タンパク質相互作用解析法には多くの手法が開発されています。今回は、再現性が比較的高くより直接的な相互作用解析を行うことができるin vitro タンパク質相互作用解析法についてまとめてみました。” ]
共免疫沈降法は、サンプル(例えば細胞ライセート)中に存在する複合体を、抗体を利用して回収する手法です。古典的な共免疫沈降法では先ず、複合体を形成する分子の内の1つの分子に対する抗体をサンプルに添加し、抗体と標的複合体とを反応させます。次に抗体と反応するタンパク質(Protein AやProtein Gなど)を固定化した支持体(アガロース担体など)を反応させることで、支持体に標的複合体を捕捉します(図)。反応溶液を遠心して標的複合体を支持体とともに沈殿させた後、適当なバッファーで洗浄し、さらに支持体から抗体と標的複合体を解離させるために適当なバッファーで処理して抗体および標的複合体を溶出します。共免疫沈降法は、目的抗原と複合体を形成する分子との細胞レベルにおける相互作用の解析手法として古くから利用されています。

protein-basic9-fig

図 共免疫沈降の流れ

従来の共免疫沈降法における問題点

抗体フラグメントによる検出阻害

共免疫沈降法(または免疫沈降法)では、精製した標的複合体をSDS-PAGEやウェスタンブロッティングで解析するのが一般的です。この解析の際に最も問題になるのが、免疫沈降に利用した抗体が影響して目的タンパク質の検出が阻害されることです。免疫沈降で用いる抗体(通常IgG)は、還元SDS-PAGEにより分離すると重鎖と軽鎖の各フラグメントに分離され、それぞれ50 kDaと25 kDaの位置にバンドが検出されます。したがって標的複合体を形成するタンパク質が電気泳動後このサイズ付近に分離されると、抗体フラグメントとバンドが重なってしまいます。ウェスタンブロッティングにおいても二次抗体が免疫沈降抗体を認識すると目的タンパク質の特異的な検出が困難になってしまいます。

免疫沈降抗体の不活性化

遠心ペレットとして回収した標的複合体の溶出には、一般的に酸や変性剤を含むバッファーを利用します。このため支持体から分離した抗体は再利用に向かず、毎回新しい抗体を用いた共免疫沈降実験が必要になります。

非特異タンパク質のコンタミネーションとサンプルロス

「はじめに」の項で説明したように、従来の共免疫沈降法では抗体を標的複合体と反応させた後、支持体に結合させ、遠心操作によってペレットに回収します。このようなバッチ法では洗浄効率が悪くなる傾向にあり、溶出画分への非特異タンパク質のコンタミネーションの原因となってしまいます。またバッチ法では洗浄液の除去をデカンテーションやピペット操作によって行うため、誤ってサンプルを捨ててしまう場合があります。

共免疫沈降法の問題点を改善するためのアプローチ

検出阻害を解消するためのアプローチ

抗体フラグメントによる検出阻害を解消するためには、抗体フラグメントの共溶出を抑えるアプローチが有効です。このアプローチには、免疫沈降抗体を支持体に共有結合的に固定化する方法あるいはアビジン‐ビオチン間の強力なアフィニティー相互作用を利用する方法が挙げられます。 免疫沈降抗体を支持体に共有結合固定する方法には、2つの方法が使用できます。1つめの方法は、抗体結合タンパク質(Protein AやProtein G)を固定化した支持体に免疫沈降抗体を反応させた後、クロスリンカーによって共有結合的に固定化する方法です。もう1つの方法は、抗体中の反応基(アミノ基など)と反応する活性化担体を利用して抗体を直接支持体に共有結合させる方法です。上記のいずれの方法でも固定化されなかった抗体は共免疫沈降前に洗浄除去できます。 アビジン‐ビオチン間の強力なアフィニティー相互作用を利用する方法では、ビオチン標識した免疫沈降抗体をアビジンやストレプトアビジン担体に固定化することにより、抗体の共溶出を抑えることが可能になります。

免疫沈降抗体の不活性化を抑えるためのアプローチ

遠心ペレットとして回収した標的複合体の溶出にマイルドなバッファーを利用することで、免疫沈降抗体の不活性化を避けることが可能です。弊社では、抗体を支持体に共有結合的に固定化する方法を利用した共免疫沈降キットをラインアップしています。このキットには、マイルドな条件で抗原溶出を行うことが出来る専用のElution Bufferを添付しています。この方法で溶出処理した場合、抗体固定化支持体は複数回再利用することが可能です。

コンタミネーションとサンプルロスを抑えるためのアプローチ

弊社の共免疫沈降キットでは、抗体を支持体に共有結合的に固定化した後の全ての操作(標的複合体との反応、洗浄、溶出)を、スピンカラムを用いて行います。スピンカラムを利用した場合、洗浄効率や抗原の溶出効率が向上し、あやまってサンプルを除去してしまうことがありません。

最後に

共免疫沈降法(または免疫沈降法)で最も問題になるのが、免疫沈降に利用した抗体が影響して目的タンパク質の検出が阻害されることです。今回は、免疫沈降抗体を支持体に共有結合的に固定化する方法とアビジン‐ビオチン間のアフィニティー相互作用を利用する方法を紹介しましたが、これらの方法が利用できない場合や、免疫沈降抗体の溶出が避けられない場合には、ウェスタンブロッティングにおいて免疫沈降抗体を検出しない方法が選択できます。弊社では、変性した抗体(免疫沈降抗体)とは反応せず、ネイティブな一次抗体を認識する酵素標識試薬、Clean-Blot IP Detection Reagentをご用意しています。

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共免疫沈降法関連、その他の記事はこちら

  • 【第8回】in vitro タンパク質相互作用を解析する方法まとめ
  • 【第12回】さまざまな抗体精製法をまとめてみた その1
  • 【第13回】さまざまな抗体精製法をまとめてみた その2
  • 【第14回】みんなが知りたいプロテインA/G/Lの性質
  • 【第21回】共免疫沈降実験の基本的な実験手順
  • 【第22回】共免疫沈降実験における抗体の固定化
  • 【第23回】共免疫沈降実験におけるバッファーについて

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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