自分を知るためのマイクロアレイ遺伝子検査~性格診断やルーツ探し、健康管理に

海外では遺伝子検査による自身の祖先探しが流行し、その情報が警察の犯人検挙にも活用された…というドキュメンタリーを観たことがある方も多いのではないかと思います。
残念ながら日本ではこのルーツ探しは流行していません。理由は、海外であれば自身のルーツがヨーロッパだったりアフリカだったりアジアだったりとバラエティに富んでいますが、日本人は人によって祖先が大きく異なることはあまりないからと言われています。

では、遺伝子検査は日本では需要がないのでしょうか。
そんなことはありません。遺伝子検査は、ルーツ探し以外にも自分の性格のタイプやお酒への強さ、遺伝子上の食べ物の好み、また将来における疾患のかかりやすさなどもわかるためです。このように治療や診療が目的ではなく、自分を知るため、または健康管理をするために一般の方が申し込める遺伝子検査をDirect-to-Consumer(DTC、消費者向け遺伝子検査サービス)と呼びます。そして、このDTCには大規模なジェノタイピング解析ができるマイクロアレイが便利です。

遺伝子検査に最適なテクノロジー、ジェノタイピングアレイ

一度に多くの個人に対して遺伝子検査を実行するためにもっとも一般的な方法は、マイクロアレイ技術のひとつであるジェノタイピングアレイを用いる方法です。これはSNPアレイとも呼ばれています。
ヒトのゲノムには、個人によって一塩基だけが異なるという多様性が存在します。このわずかな違いをSNPと呼びます。SNPはヒトゲノム全体の0.5%未満程度と言われており、このSNPによって体質や病気のかかりやすさなどに違いが生じることがわかっています。
ジェノタイピングアレイは、この一塩基の違いに応じた遺伝子マーカーをアレイ面上に多数設置し、サンプルのDNAがこの遺伝子マーカーに結合することで、個人の一塩基多型を解析する方法です。一般的に、何十万ものマーカーが高密度に設置されているため、一度の実験で多数のSNPを解析することができます。
このテクノロジーにより、遺伝子検査に必要な情報を効率的に、かつハイスループットでキャプチャできます。このジェノタイピングアレイは、2000年代初頭に祖先を調べる遺伝子テストのリファレンスを構築したときの基盤として使用されため、今日でもゴールドスタンダードと呼ばれています。

病気のなりやすさや体質を知り、健康管理にも役立てる

DTC企業によってサービスは異なりますが、たいていの場合、遺伝子検査によってがんや生活習慣病、薄毛や肥満へのなりやすさ、性格など、自身の遺伝学的な傾向を知ることができます。日本における遺伝子検査は、アメリカのように祖先探しとしてではなく、自身の健康管理ツールのひとつとなっていくと言われています。

もちろん、遺伝子の情報は現在も研究が進み続けており、情報は日々更新されています。さらに、遺伝子検査は過去のデータからの統計学的にリスク判定を行います。この2つの理由により、遺伝子検査によって「必ずがんになる」という明確な答えは出ません。しかし、自分にいくつかの疾病の発症リスクが高いことがわかれば、予防することができます。これからは個別化医療の時代とも言われていますし、個人の健康管理にもっとも適したアプローチができるよう、日本でも今後遺伝子検査の需要は高まってくるものと考えられます。

アメリカで流行、遺伝子検査によるルーツ探しとは?

アメリカで大流行した遺伝子検査による祖先探しについても触れておきましょう。DTCを利用して祖先探しをした人々は、今や1000万を超える規模で拡大し続けています。
自分がどこから来たのか。DTCの結果はそれを示す起源の物語です。DTCを利用した方々は公開されているデータを用いて友人とディスカッションしたり、家族で共有したり、さらには自分のアイデンティティを考えたりと、まるでエンターテイメントのように楽しむことができます。

では、どうやって祖先探しをしているのでしょうか。遺伝子検査による祖先探しには、3つの方法があります。mtDNA、Y染色体DNA、常染色体DNA検査です。
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、各細胞内のミトコンドリアオルガネラ内のDNAです。この情報から、母方の血統を知ることができます。
Y染色体DNAは男性にのみ存在し、父親から息子へと受け継がれますが、父親から娘へは受け継がれません。男性だけがY染色体DNAを受け継ぐことができるので、このDNAを調べることで、男性の父方の血統を知ることができます。
常染色体DNAは、男女ともに持っている22対の染色体です。常染色体DNAは両親から受け継がれているため、家族の両側で祖先を知ることができます。
祖先検査では、一般的にこれら常染色体DNA、mtDNA、Y-DNAを組み合わせて判定を行っています。

まとめ

遺伝子検査はアメリカで祖先探しのツールとして大流行しました。しかしメリットはそれだけではなく、将来の疾患リスクを知ることで予防に役立てることができます。この遺伝子検査にもっとも適した方法はジェノタイピングアレイと言い、ヒトの一塩基多型(SNP)を解析する方法です。
個別化医療の時代、こういった技術は今後も需要が高まっていくものと思われます。

予測ゲノミクスに関するエキスパートからの新しい知見 ≫

集団医療や個別化医療の将来を担う予測ゲノミクス ≫

日本人のゲノム解析研究にさらに特化したアレイ疾患志向性 Axiom ジャポニカアレイ NEO »

マイクロアレイを用いたヒトジェノタイピング »

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

記事へのご意見・ご感想お待ちしています

  • サーモフィッシャーサイエンティフィックジャパングループ各社は取得した個人情報を弊社の個人情報保護方針に従い利用し、安全かつ適切に管理します。取得した個人情報は、グループ各社が実施するセミナーに関するご連絡、および製品/サービス情報等のご案内のために利用させていただき、その他の目的では利用しません。詳細は個人情報の取扱いについてをご確認ください。
  • 送信の際には、このページに記載のすべての注意事項に同意いただいたものとみなされます。