前回に引き続き、検量線をひかずに定量できる「比較Ct法」について、実験データをみながら解説します。
検量線をひくために必要な、標準サンプルの調整と測定。このコストを省いて定量できる便利な方法が「比較Ct法」です。今回は、比較Ct法を攻略するための理論をきっちりおさえます。”]
こちらの表は、4種類の組織におけるc-myc遺伝子の相対発現量を測定した結果です。Brainサンプルを基準(キャリブレータ)に、比較Ct法を利用して相対定量をおこなっています。
ここで気になるのは、異なる4種類の相対定量法で同様の結果が出るのか、という疑問です。図にあるように、比較Ct法でも検量線と同等の精度で相対定量がおこなえます。
さて早速、比較Ct法で解析したいところですが、比較Ct法は必ずしも全ての場合につかえる方法ではないことに注意せねばなりません。前回の復習となりますが、比較Ct法の成立する条件をもう一度、みてみましょう。
※比較Ct法が成立する条件
- ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子のPCR効率がほぼ等しい
- 希釈によって⊿Ct値が変動しない=検量線を描いた時の傾きが同じ
- PCR効率が1に近い
- 設計のガイドラインに基づくとPCR効率の下がらない短いAmpliconサイズの設計が可能
比較Ct法では、「ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子のPCR効率がほぼ等しい」という条件が、必須なのです。ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子の増幅効率が等しければ、立ち上がりのサイクル数の差は正確に初期濃度の差を反映するので、それをそのまま初期濃度の補正に用いることができるからです。
仮に、ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子の増幅効率が等しくない場合は、立ち上がりのサイクル数の差は初期濃度の差と増幅効率の差の2つを反映したものとなり、初期濃度の補正に用いることができなくなってしまいます。
利便性の高い比較Ct法ですが、自分の実験系に比較Ct法が成立する条件が当てはまるかどうかは十分な検討が必要です。条件さえそろえば、比較Ct法を採用するメリットは大いにあります。
次回は、比較Ct法の条件検討に必要な予備実験について考えます。お楽しみに!
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