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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】リアルタイムPCRのホットスタート酵素をホットせずにスタートしてみた

【やってみた】リアルタイムPCRのホットスタート酵素をホットせずにスタートしてみた

作成者 LatB Staff 03.06.2023

▼もくじ

  • やってみた結果
  • はじめに
  • 材料と方法
  • 結果と考察
  • まとめ

やってみた結果

  • 定量に適さないデータとなった。
  • データがばらついた。

はじめに

ホットスタート技術では、DNAポリメラーゼを修飾することで室温でのDNAポリメラーゼ活性を抑制します。このことにより、室温で反応液を調製しても、非特異的な増幅を回避でき安定した結果を得られます。
ホットスタート対応のさまざまな試薬をお使いになったご経験のある方ならば、DNAポリメラーゼの活性化に必要な時間が2 minであったり10 minであったりすることにお気づきかもしれません。もしかすると、10 minも待っていられず、少しでも早く実験を終わらせたいと思われた方もいるかもしれません。ホットスタート技術の一般的な種類は、化学修飾と抗体結合に大別できます。今回は、化学修飾のホットスタート技術を採用しているApplied Biosystems™ AmpliTaq Gold™ DNA polymeraseを対象に、DNAポリメラーゼ活性化に必要な時間について調べてみました。

材料と方法

AmpliTaq Gold DNA Polymerase が含まれるマスターミックス試薬として、Applied Biosystems™ TaqMan™ Universal Master Mix II, no UNG を使用し、製品のプロトコルに従い20 µL容量の反応液を調製しました。鋳型DNAとしてHeLa cDNAを2 ng/well で使用し、Applied Biosystems™ TaqMan™ Gene Expression Assay (20x) にてGAPDHをターゲットにしました。95℃でのポリメラーゼ活性化の時間をプロトコル通りの10 minから、5 min、1 min、0 minと振って、GAPDHをターゲットに増幅させた場合のCT値によって活性化時間の影響を評価しました(n = 6のレプリケート)。PCR部分も含めた反応条件は下記の通りです。リアルタイムPCRにはApplied Biosystems™ QuantStudio™ 5 Real-Time PCR Systemを使用しました。

1. 95℃ 10 or 5 or 1 or 0 min(活性化時間)
2. 95℃ 15 sec
3. 60℃ 1 min
※2~3を40 cycle反復

結果と考察

それでは早速結果を見てみましょう。
DNAポリメラーゼ活性化の時間を10 min、5 min、1 min、0 minと振った実験の増幅曲線を確認します(図1)。プロトコル通りの条件である活性化時間10 minでは、6反復の増幅曲線がきれいに重なり、ばらつきのかなり少ないデータであることが分かります。その半分の活性化時間である5 minでは複数の増幅曲線が確認でき、データがばらついていることが分かります。活性化時間1 minと0 minでは、さらにばらつきが大きくなったように見受けられました。


次に、増幅曲線とThreshold line との交点から算出されるCT値から、定量的なデータを確認してみます(図2)。標準となる活性化時間10 minでは、図1の増幅曲線でも確認した通り、ばらつきの非常に小さいデータが得られました。活性化時間を5 min → 1 min → 0 minと短くするにつれてCT値が大きくなり、標準偏差CT SDからばらつきも大きくなったことが分かりました。


ここで少し考えてみましょう。活性化時間0 minで、DNAポリメラーゼを活性化せずともPCR反応が進んだのはなぜなのでしょうか。その理由はおそらく、95℃ 15 sec → 60℃ 1 min を40サイクルというPCR反応を繰り返すうちに化学修飾が外れ、ある時点からDNAポリメラーゼが活性化されたと予想されます。つまり、6反復それぞれで活性化された時点が異なるために、増幅曲線やCT値がばらついたのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたか。

今回はホットスタート酵素について、DNAポリメラーゼ活性化の時間について【やってみた】実験を実施しました。製品のプロトコルに従って実験しないと、データがばらつくだけでなく、正しいCT値も得られないことをお示ししました。ホットスタート技術を利用すると、DNAポリメラーゼ活性を抑制しておけるので、室温で反応液を調製しても非特異的な増幅を回避でき安定した実験結果を得ることができます。当社Applied BiosystemsブランドのリアルタイムPCR試薬のDNAポリメラーゼは、すべてホットスタート技術を搭載しております!

当社ではRNA抽出やリアルタイムPCR、他にも細胞培養、ウェスタンブロッティングなど、実際に実験(実習)を行いつつ学べる各種ハンズオントレーニングを開催しています。その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!

 

今回の記事に関連するページ:
PCR試薬と酵素の基礎知識
リアルタイム PCR(qPCR)ラーニングセンター
AmpliTaq Gold DNA ポリメラーゼ
【やってみた】 RNAをcDNAに逆転写する反応時間を超短くしてリアルタイムPCRで確かめてみた

 

研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。

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