細胞や組織からタンパク質サンプルを調製するとき、疎水性タンパク質を可溶化する目的で界面活性剤が用いられますが、続いて行われる下流の実験によっては界面活性剤が阻害因子となるため、サンプルから除去しなければならない場合があります。例えば、界面活性剤がタンパク質の活性を阻害してしまう場合、タンパク質定量や電気泳動に適合しない場合などです。界面活性剤を除く方法としては、透析や限外ろ過により低分子を除去する方法、あるいはタンパク質を沈殿させ、再溶解する方法があげられます。
界面活性剤は、臨界ミセル濃度(Critical Micelle Concentration: CMC)を超えるとミセルを形成する性質をもち、タンパク質の可溶化ではCMC以上の濃度で使用します。透析や限外ろ過は、CMCが高い界面活性剤やミセル会合数が小さい界面活性剤の除去には有用ですが、CMCが低い場合やミセル会合数が大きい場合、ほとんどの界面活性剤が透析膜のポアサイズよりも大きいミセル状態で存在しており、効率よく除去することは困難です。またタンパク質沈殿法も、タンパク質が変性する、あるいはタンパク質の再溶解ができなくなる可能性があります。
Pierce™ Detergent Removal Spin Columnsは、タンパク質溶液やペプチド溶液からSDS, CHAPS, Triton X-100, NP-40などの界面活性剤(1-5%)を95%以上の効率で、迅速に除去するためのスピンカラムです。スピンカラムに充填済みのレジンは、タンパク質抽出やサンプル調製で使用される一般的な界面活性剤とアフィニティー結合します。操作はレジンの平衡化、サンプルの添加・インキュベーション・回収と簡便で、10分以内に界面活性剤の除去が完了します。透析や限外ろ過において懸念される、タンパク質やペプチドの非特異的吸着によるロスは少量です(表1参照)。また、低濃度のタンパク質溶液から界面活性剤を除去したい場合には、HiPPR™ Detergent Removal Spin Column Kitが有効です。1-100 μg/mLの低濃度タンパク質溶液から、界面活性剤(0.5-1%)を95%以上除去できます。
下記の表では、界面活性剤を含むBSA(0.1 mL, 100 μg)をPierce™ Detergent Removal Spin Columnsで処理し、界面活性剤の除去率とタンパク質回収率を測定しました。BSA以外でも、insulin(5.7 kDa)、α-lactalbumin(14.2 kDa)、carbonic anhydrase(29 kDa)でそれぞれ同様の結果が得られています。
| 界面活性剤 | 界面活性剤除去率 (%) | BSA 回収率 (%) |
| SDS, 2.5% | 99 | 95 |
| CHAPS, 3% | 99 | 90 |
| Triton X-100, 2% | 99 | 87 |
| NP-40, 1% | 95 | 91 |
※その他の界面活性剤の除去率につきましては、Pierce™ Detergent Removal Spin Columnsの製品情報ページをご参照ください。
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