RoHS指令(ローズ指令)とは
RoHS指令とは、欧州における電気・電子機器を対象とした特定有害物質の使用制限に関する法律で、電化製品・電子機器の輸出を行う国内企業にとっても、この法律に対する対応は大きな課題となっています。
この記事では、RoHS指令で定められた規制物質の分析について、当社がおすすめする効率的な対応法をご紹介します。
RoHS指令の規制物質
RoHS指令で規制対象となっている代表的な物質は以下の通りです。
- 鉛
- 水銀
- カドミウム
- フタル酸エステル
- 臭素系難燃剤
- 六価クロム
このように無機物から有機物にわたる幅広い物質が規制対象となっており、それぞれについて基準値を設けて規制対象をしています。欧州に向けて、電化製品・電子機器の輸出を行う際には、これらすべての物質に対して基準値を下回っていることを証明する必要がありますが、多くの製品群を抱える企業においては大量の検体を抱えることになり、検査にかかるコストが大きな問題となっています。そのため、最近では専門の調査機関への検査依頼だけでなく、自社内での検査も一般化しつつあります。
その中でも、有機物であるフタル酸エステルと臭素系難燃剤の分析に関しては、GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析装置)の活用が有効であり、IEC(国際電気標準会議)に定められた分析法においても中心的な役割を担っています。
フタル酸エステルの規制対応(IEC 62231-8)
日本のように厳密に生産現場が管理されている場合フタル酸エステルは、ほとんどのケースで不検出が予想されます。そのため、日本の生産現場においてもっとも重要なことは、手間のかかる精密分析を行う検体を基準に従いながら減らしていくことです。
フタル酸エステルの評価フローであるIEC 62231-8においては、熱脱着-GS/MSによるスクリーニング分析と精密定量法が併記されているため、すべての検体に対し最初にスクリーニング法で検査を行って、疑わしいサンプルのみを検出し場合のみ精密定量法での検査を行うことが非常に有効です。複雑な前処理を必要とせず、生産現場で検査が可能な熱脱着-GS/MSでスクリーニング法を行えば、IECの基準を満たしながら、検査にかかる手間を省略することができ、大幅なコスト削減につながります。
また、分析結果が迅速に出ることで生産現場での時間の削減も期待ができます。
臭素系難燃剤(PBB/PBDE)の規制対応(IEC 62231-6)
PBBおよび、PBDEに代表される臭素系難燃剤の分析は他の規制対象物質と比べて困難です。多数の同位体が存在することから高度な分析が必要なため、前述のフタル酸エステルの分析のように生産現場でスクリーニングを行うことが難しく、多くの企業で専門の企業に委託するケースが多く見られます。
IEC 62231-6に規定されている分析法としては下記の図のような構成となっています。
しかし、このような非常にコストのかかる方法を効率化するため、下記のような評価法が導入される場合もあります
この方法は、IEC 62231-6に規定をされている方法ではありませんが、日本国内で使用されている臭素系難燃剤はDecaBDEのみのため、国内の検査だけであればこの方法も有効となります。このような考え方に基づいた分析であれば、前出のフタル酸エステルにおけるスクリーニング法による疑わしい検体の判別と同じことが可能になり、精密定量を行うサンプル数を最低限に抑えることが可能となります。
当社の分析システムの利点
サーモフィッシャーサイエンティフィックは、RoHS指令スクリーニング分析に最適な仕様の装置をご用意しています。
Thermo Scientific™ ISQ™ 7000 GC-MSシステム(VPI)
真空ロックシステム(VPI)
当社の独自機能であるVPIは真空状態の解除なしでイオン源の交換ができます。
メンテナンスが数分間程度で可能なため、計画的なメンテナンスが実現できます。スケジュール通りのメンテナンスを行っていれば、感度低下による再測定などの無駄な時間が無くなり、ダウンタイムの削減につながります。これは装置を汚しやすいポリマーサンプル分析にとって非常に有効なシステムと言えるでしょう。
V-Lock ソースプラグ
装置内の真空状態を頻繁に解除することは装置の寿命の短縮につながるため推奨されません。V-Lockソースプラグは真空状態を解除することなくカラム交換が可能なシステムです。これにより迅速なカラムの交換が可能になるだけでなく、ターボポンプの負担軽減にもつながり、またMS内の清浄性の維持にも貢献します。
Thermo Scientific™ Chromeleon™ クロマトグラフィーデータシステム7.2
Thermo Scientific Chromeleonクロマトグラフィーデータシステムは、RoHSに対応したオペレーションソフトウエアです。
上の画像のように、コンソールとクロマトグラフィースタジオという2つの機能を持っており、コンソールでシーケンスの編集や装置の状態確認などを行いながら、クロマトグラフィースタジオでデータ解析や報告書の作成などが可能です。
まとめ
RoHS指令に対応する効率的な方法についてご紹介をしてきましたが、いかがだったでしょうか?RoHSに対応したISQ 7000はメンテナンス性に優れており、大幅なダウンタイム短縮を実現できます。また、Chromeleonソフトウェアを使用すれば分析の状況や結果を管理し、報告作業を最適化することができます。
上記の機能を使って、実際に規制対象物質の分析を行う方法など、より詳しい情報を知りたい方は、こちらから動画をご視聴いただけます。ぜひご覧ください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。