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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 液体窒素環境によるサンプル保管

液体窒素環境によるサンプル保管

Written by LatB Staff | Published: 10.13.2023

細胞や血液などの生体試料をはじめさまざまな試料を超低温環境下で保管している施設は多いと思います。ラボでよく使われる超低温保管設備には、大きく分けて液体窒素保存容器と超低温フリーザーがあります。それぞれの利点・欠点を知り、試料を保管する目的や試料の用途、施設に合わせて保管設備を用意することは長期間、安定して試料を保管するために役立ちます。

この記事では、液体窒素を用いた試料保管の利点と欠点そして注意点についてご紹介します。

▼こんな方におすすめです!
・試料の凍結保管をしている全てのラボの方
・液相保管か気相保管で悩まれている方

▼もくじ [非表示]

  • 液体窒素保存容器による試料保管の利点と欠点
  • 液相保管と気相保管
  • 液相保管のリスクとは
  • 気相保管がおすすめです
  • どうしても液相保管したい・・・そんなときは
  • まとめ

液体窒素保存容器による試料保管の利点と欠点

液体窒素保存容器の利点は、何といっても停電などにより電力供給が遮断されても一定期間はその低温が維持できることです。

液相保管では-196 ℃、気相保管でも約-160~-180 ℃(液体窒素液面からの高さにより異なります)と、超低温フリーザーの限界温度である約-150 ℃と比べてより低温環境で保管できることも利点のひとつです。

欠点としては、液体窒素保存容器を運用するためには高圧ガスを扱う専門の会社と契約し液体窒素の安定供給を確保しなければならないこと、定期的な液体窒素の補充が必要であること、そしてその取り扱いにも細心の注意が必要となることです。

液相保管と気相保管

液体窒素保存容器を用いた試料保管には液相保管と気相保管の2つがあります。

液相保管ではクライオチューブなどの凍結保存容器を液体窒素に浸漬するため、温度を-196 ℃で均一に保つことができ超低温で安定した試料保管が可能です。一方、気相保管では容器に充填する液体窒素の量をラックやキャニスターが漬からないように抑え、液体窒素の冷気によって試料を約-160~-180 ℃で保管します。

一見すると均一な温度で保管ができる液相保管が良さそうですが、液相保管にはいくつかのリスクが伴います。

液相保管のリスクとは

試料の保管に使われるクライオチューブなどのプラスチック製の凍結保存用チューブは低温環境で使用することを前提に設計されています。しかし、樹脂やガスケットなどのシール材は超低温環境ではその柔軟性・弾性が失われるため、液相保管でチューブ内部への液体窒素の流入を防ぐことは非常に難しいことです。

液体窒素の流入によって引き起こされるリスクの1つがチューブの破裂です。チューブの中に流入した液体窒素は、液体窒素保管容器から取り出された後に加温されることで急激に気化します。その体積は約700倍にも膨張することがあります。膨張によって内圧が高まったチューブは破裂し、試料が飛散してしまう危険性があります。たとえチューブが破裂しなくても、チューブに亀裂が入ることで中の試料が流出してしまうこともあるでしょう。

もう1つのリスクは、試料が汚染される可能性です。液体窒素自体が汚染されている可能性があり、液体窒素に含まれる微生物によって試料の品質が損なわれてしまいます。

ISBER(International Society for Biological and Environmental Repositories)がリリースしている「ISBERベスト・プラクティス:リポジトリに対する推奨事項 英語版第4版日本語対応版 補遺1:液体窒素による試料の凍結保存」の「1.9 保管容器及びラベル」の項には、「水と同様に液体窒素もウイルス、細菌、真菌及び動物細胞を伝染させる媒介体となることがあり、バイオハザード(生物的災害)として取り扱うべきである。」(ISBER, 2019, p27)とあり、試料の液相保管は“バイオハザードリスクがある“と国際的にも危険であることが広く認識されています。

気相保管がおすすめです

液体窒素保存容器に十分な液体窒素が充填された状態では、容器内は-150 ℃以下に保たれるため、気相保管でも長期にわたり安定した試料保管が可能です。気相保管ではチューブは液体窒素に触れないため、チューブ破裂や試料汚染の危険性を回避できます。

ただし、気相保管では同じ容器内部でもチューブを保存する位置によって温度が異なります。また、容器内部の温度(特に開口部に近い位置)がフタの開閉による影響を受けやすいと いう欠点もあります。液相保管・気相保管どちらにも利点・欠点があるので、試料や目的に応じて適切な保管方法を選択いただくことが望ましいと考えます。

図1. 一般的な液体窒素容器の温度 (温度は製品やLN₂の量、スペースなどにより異なります。)

図1. 一般的な液体窒素容器の温度
(温度は製品やLN₂の量、スペースなどにより異なります。)

なお、当社でもさまざまな凍結保存用チューブを取り扱っておりますが(Thermo Scientific™ Nunc™ CryoTube™、Thermo Scientific™ Nalgene™ クライオバイアル、Thermo Scientific™ 2Dコード付きチューブなど)、どんなにチューブのキャップをしっかり締めたとしても、チューブ内に液体窒素が混入するリスクがあるため液相保管は推奨しておりません。

どうしても液相保管したい・・・そんなときは

当社ではチューブへの液体窒素の流入・接触を防ぐためのツールとしてThermo Scientific™ Nunc™ CryoFlex (製品番号343958PK)を取り扱っています。Nunc CryoFlexはNunc CryoTubeを保護するために特別に開発されたポリエチレン製のチューブで、簡単にNunc CryoTubeを密封することができます。これによりチューブ内への液体窒素の浸入、接触を防ぐことができます。
どうしても試料の液相保管を行いたい場合には、Nunc CryoFlexを使用してチューブを正しく密封することをおすすめします。

まとめ

多くの試料は将来使用するために保管されます。当社では、長期間、安定して試料を保管するために、お客さまの試料を保管する目的 や試料の用途、施設に見合った保管設備や保管方法について経験豊富なスタッフがご提案を行います。シンプルなサンプル管理から大規模プロジェクトまで、まずはご相談ください。

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【セミナー案内】サンプル管理に関するセミナーを実施しています。詳細は、こちらをご覧ください。

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研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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