分析を変革する~ソリッドネブライザーとは何か
元素分析の変遷
元素分析を行う際、現在主流となっているのはICP質量分析です。
過去には、原子吸光法やICP発光法などの分析手法が一般的でしたが、ICP質量分析計(ICP-MS)は、多元素同時分析を行うことができ、分析対象の元素の種類の豊富さや、低濃度の元素でも分析ができるという強みを持っていたため、多くの機関で使用されるようになりました。
しかし、一般化した当時のICP質量分析計は多くの場合、水溶液試料が分析対象であり、岩石等の固体試料を分析するためには、溶液を用いるための高度な知識と機器の操作技術が必要であり、また一度液体化するための手間がかかり、分析の迅速性に欠けていました。
そんな中、登場したのがレーザーアブレーション法を使用したICP質量分析です。
レーザーアブレーション法とは
レーザーアブレーション法とは、「レーザーエネルギーによる固体試料構成元素の気化と爆発的なエアロゾル化」を行う前処理法です。
固体試料に高エネルギーのレーザーを照射すると、固体試料が一気に加熱され、試料の爆発的なエアロゾル化と固体構成元素の気化が発生します。
こうして発生したエアロゾルを分析することで、微量元素解析など高感度な分析が必要な固体試料についても対応することができるようになったのです。
レーザーアブレーション法におけるレーザーの種類
前述の通り、レーザーアブレーションはレーザーのエネルギーによって試料をエアロゾル化・気化する前処理の方法です。
そのため、レーザー照射を行った際の加熱による試料の変化を知ることはレーザーアブレーションを知るうえで欠かせない情報といえます。
レーザーには大きく分けてCWレーザー(連続発振レーザー)とパルスレーザーがありますが、レーザーアブレーションに使用されるのは主にパルスレーザーとなります。
その理由は、CWレーザーはエネルギーを連続的に照射物に付与するため、エネルギーの多くが熱拡散によって失われてしまうためです。
また、パルスレーザーの中でも比較的熱拡散によるエネルギー損失が大きいナノ秒レーザーとより短パルスのフェムト秒レーザーがあり、前述の熱拡散を抑えるにはより短時間の間にエネルギーを照射物に付与することができるフェムト秒レーザーを使用することが有効です。
ソリッドネブライザーとは
ここまでレーザーアブレーションとは何か、ご説明をしてきましたが、ここからはレーザーアブレーションと同じ原理を使った「ソリッドネブライザー」についてご説明をします。
ソリッドネブライザーは端的に言うと、「化学分析への応用を重視したレーザーアブレーション」です。
レーザーアブレーションは微細加工にも使われるなど、汎用性の高い技術ですが試料に対するエネルギーの付与が大きいため、熱的に試料を変質させてしまったり、信号が不安定になるなど分析を行う上ではいくつかの課題があり、分析感度を下げてしまうデメリットがありました。
そのためソリッドネブライザーでは、レーザー出力を抑えたままレーザーパルスの発振数を高めることで分析元素の信号を高めるという方法を使います。そのため、下記の表のように様々な面でメリットを享受することができます。
つまりソリッドネブライザーは固体試料の元素・同位体分析においてICP-MS法の分析性能を最大限に引き出すための分析手法なのです。
最後に
いかがだったでしょうか?
固体試料の分析についてお悩みの方はぜひソリッドネブライザーによる分析をお試しいただければと思います。
より詳細なソリッドネブライザーの特徴や、分析結果の具体例などをお探しの方は、こちらのリンクから資料をダウンロードしてみてください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。