適応免疫―レパトアの収斂とワクチン研究に対する影響

適応免疫系の感染症への素早い応答を促すことにより、ワクチンは世界的な公衆衛生において重要な役割を果たしています。ワクチン開発やその効能の改善のために、研究者はSARS-CoV-2のような病原体に対する適応免疫応答の進化を理解する必要があります。危機的な状況を乗り越えるための迅速なワクチン開発がサイエンスコミュニティーの主なトピックとなっています。レパトア解析研究がワクチンの効能改善に役立つかもしれません。
レパトアとワクチン開発の関係性
適応免疫は感染に対して免疫記憶を作り上げ、さらなる感染に対する応答を促進します。適応免疫の効力は免疫レパトアを構成するT細胞およびB細胞遺伝子の多様性によるものです。この多様性は遺伝子の再構成によりもたらされ、B細胞においては、抗原に対する抗体のアフィニティを高める可能性もある、体細胞超変異:somatic hypermutations (SHMs)も同様に寄与します。ワクチン開発は、免疫システムの迅速で効率的な病気への応答を引き起こすための、多様なレパトアによる適応免疫に基づいています。
しかしながら、近年の総説論文[1]によると、免疫レパトアが多様性を欠くような例もあるようです。異なる遺伝子配列をもつT細胞とB細胞の集団が、コドンの縮退により同一のアミノ酸配列となり、同様の抗原認識を生じうるようです。この収斂:convergenceと呼ばれる免疫レパトアの特徴の理解はワクチンの効能改善に役立つかもしれません。収斂の研究により、B細胞もT細胞も特定の抗原を認識しない、そのためにワクチンが効果を発揮しない、レパトアの多様性の“穴”を同定できるかもしれません。長期にわたる抗原による刺激がレパトアの収斂を生じる可能性があり、免疫原性測定の潜在的な有用性とワクチン戦略の最適化の可能性が期待されます。
Ion TrrentターゲットNGSを活用したレパトアの収斂測定
収斂の研究と免疫応答の深い理解のためには、免疫レパトアの遺伝子配列の多様性と一塩基変異を正確に定量、検出できるハイスループットシーケンシングソリューションが必要です。塩基置換のエラー率が低いIon Torrent™ targeted next-generation sequencing (NGS) technologyと targeted immune repertoire assaysを組み合わせることにより、他のシーケンスアプローチでは見えてこないかもしれない、感度の高い収斂の測定が可能になります。網羅的な解析、視覚化ツール一式を備えたシンプルなend-to-endワークフローはワクチン研究を容易にし、免疫応答の理解とワクチンの改善につながるかもしれません。世界的なSARS-CoV-2危機は、感染症との闘いにおけるワクチン開発の重要さをハイライトしました。やらなければいけないことが未だに多く残されていますが、収斂のようなチャレンジングなレパトアの特徴の定量のための正しいNGSソリューションの選択はワクチン研究において引き続き重要なカギとなるのではないでしょうか。
まとめ
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Reference:
[1] Fink K (2019) Can We Improve Vaccine Efficacy by Targeting T and B Cell Repertoire Convergence? Front. Immunol. 10:110. doi: 10.3389/fimmu.2019.00110
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