アフィニティクロマトグラフィーは、ダウンストリームにおける精製プロセス、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)の精製にも使用される強力な手法です。目標分子を選択的に結合、分離することにより、AAV精製の効率と収量を大幅に改善できる可能性があります。ここでは、AAV精製におけるアフィニティクロマトグラフィーの5つの主な利点をご紹介し、ウイルスベクターの精製を強化するためのさまざまな手法と戦略をご提案します。
▼こんな方におすすめです!
・アフィニティクロマトグラフィー、AAVを含むウイルスベクターの精製に関心がある方
・精製プロセスの効率化に取り組んでいる方
・AAVを使用した遺伝子治療の開発に携わっている方
高い特異性と選択性
アフィニティクロマトグラフィーの優位性は、AAVカプシドにおける特定のタンパク質であるターゲット分子と、クロマトグラフィー樹脂上のリガンドとの間に生じる特異的な相互作用によってもたらされます。この相互作用により、AAV粒子と選択的に結合し、クルードなサンプルから分離でき、非常に純度の高い結果が得られます。この特徴によって、精製工程における負荷を最小限に抑えて、AAV粒子回収率の最大化に貢献します。
純度と収量の向上
アフィニティクロマトグラフィーは、複雑に構成されたさまざまな種類のクルードな溶液から、AAV粒子を特異的に分離することで、効率的な回収を実現できます。これにより一度の精製工程で、高い収量と純度を達成することが可能です。
当社のThermo Scientific™ POROS™クロマトグラフィー樹脂の場合、径を大きくした独自の多孔性構造がビーズ内の対流を可能とし、流速によらずに効率的に性能を発揮します。標準50 μmの粒子径により優れた分離能を示します。

図1. POROSクロマトグラフィー樹脂
幅広い適応性
アフィニティクロマトグラフィーは、さまざまなAAV精製のニーズに合わせて幅広い種類のリガンドを使用できます。例として、当社のThermo Scientific™ CaptureSelect™アフィニティリガンドは、ラクダ科動物由来のVHH抗体フラグメントに基づく、独自のアフィニティ精製ソリューションであり、堅牢なリガンド生成プラットフォームを活用することで、AAV固有の分子をターゲットに精製することができ、結果としてAAVに特異的なターゲティングまたは汎広範なAAVセロタイプに対する結合が可能です。

図2. Thermo Scientific™ CaptureSelect™テクノロジー
マイルドな精製条件
アフィニティクロマトグラフィーの利点の一つは、マイルドな精製条件下で実施できることです。これは、AAVのような不安定なウイルスベクターの精製において特に重要であり、過酷な精製条件はその構造的完全性と機能性を損なう可能性があります。アフィニティクロマトグラフィーは、品質と機能性を保持したまま、マイルドな条件下での精製を可能にします。
スケーラビリティと自動化
大規模なAAV生産への対応が容易な点は、アフィニティクロマトグラフィーの特徴の一つです。精製プロセスは自動化することができ、ハイスループットの精製を容易にします。これは精製に必要だった時間と労力を削減できることを意味しており、スケーラビリティと自動化は、商用生産規模のAAV生産への移行を促進するものです。
まとめ
いかがでしたか?
AAVベクターの精製においてアフィニティクロマトグラフィーの使用は多くの利点をもたらします。その高い特異性、高い純度と収量、適応性の高さ、マイルドな精製条件、およびスケーラビリティと自動化は、AAV精製に関わるダウンストリームプロセスの開発者/研究者にとって魅力的でしょう。さまざまな手法と戦略を探求してアフィニティクロマトグラフィーを最適化することにより、AAV精製の効率化と収量増が可能となり、結果的にウイルスベクターに基づく治療の進歩を後押しします。
AAVベクターによる精製の特徴と利点を簡単にご紹介しました。さらに詳しい情報はこちらをご覧ください。
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